4月21日、クラウドインテグレーターのテラスカイと上越市は、「上越サテライトオフィス」の完成披露会を開催した。城下町の町屋を改装した新オフィスは、東京から移住した5名した勤務するほか、地元での採用も加速していくという。
町屋の趣を残した最新オフィスを上越に
オープンしたばかりのテラスカイの上越サテライトオフィスは、上越市内の高田駅から10分程度歩いた場所にある。近くには上杉謙信の居城として知られる春日山城があり、高田自体も江戸時代に建てられた高田城。こうした城下町の町並みになじんだ古い町屋をリノベーションし、IT企業のオフィスとしてしつらえたのが上越サテライトオフィスだ。
建物は2階建てで、1階はゲストの利用を想定したおり、イベントスペース、キッチン、畳敷きの部屋が用意されている。2階は執務室のほかに、東京オフィスとのTV会議が可能な会議室がある。もちろん、無線LANや電源も完備。テラスカイの上越市出身者2名を含む5名が東京から移住し、おもに開発とSIの業務に携わるという。
ベースとなった町屋は、100年以上の歴史を持つ木造の家屋で、もともとは呉服屋、近年は倉庫として使われていた物件だという。豪雪地帯によく見られる雁木(がんぎ)や入り口前の石畳も残しつつ、配管や空調、ネットワークなど大きく手を入れ、快適な執務環境を実現した。
クラウドがあればどこでも仕事ができる
サテライトオフィスの向かいにある町屋記念館で行なわれた完成披露会に登壇したテラスカイ代表取締役社長の佐藤秀哉氏は、まずクラウドインテグレーターとしての実績を説明。Salesforce.comやAWSをベースに顧客に最適なシステム開発を手がけてきた同社のクラウド導入が、2017年3月時点で2500件を突破したことをアピールした。
そんなテラスカイが、なぜ上越市にサテライトオフィスを構えることになったのか。佐藤氏は、まずインターネットさえあれば十分な機能が果たせるクラウドという事業自体が、テレワークに向いていると説明。「どこにコンピューターがあるか、ユーザーが知らなくてもよい。メンテナンスのために、サーバーの場所に行かなくてもよい。だから、どこでも仕事ができる時代になってきた」と佐藤氏は語る。
たとえば、年収上位のうち15社を占める金融業の場合は、首都圏でしか仕事ができないが、ITであれば地方でも仕事ができる。実際、米国においては、インドやヨーロッパに開発をアウトソーシングしている企業も多い。日本でも働き方改革や地方創生が大きなトピックとなる昨今、上越市の出身でもある佐藤氏が主導して進めたのが、今回オープンしたテラスカイの上越サテライトオフィスになる。
地方で優秀なエンジニアを獲得していく
具体的なスキームとしては、テラスカイが代表機関となり、上越市や上越教育大学、NTTソフトウェア(現NTTテクノクロス)、NTTラーニングシステムズ、サーバーワークス、BeeX、日本ビジネスネットワークとともにコンソーシアムを組織。「城下町高田の快適な生活環境と事業環境をいかしたサテライトオフィス設置事業」として、総務省の「ふるさとテレワーク」の推進事業に応募し、昨年の7月に採択されることになる。これを受けて、昨年来から高田の町屋を改装し、上越サテライトオフィスの開設に至ったという。協力企業もテレワークの有効性をサテライトオフィスで試すほか、地元企業や大学との連携も行なっていくという。
披露会で挨拶に立った上越市の村山秀幸市長は、「高田の城下町の文化を活かした町の再生を進めるすべく、町中への居住を促進し、交流を拡大し、事業活動を活発にするという目的がある」と説明。今回のサテライトオフィス開設がこうした町の再生コンセプトに寄り添う施策になったことをアピールした。さらに上越市への移住者に向けては、「豊かな環境と利便性を持つ上越で、心ゆくまで仕事と生活を楽しんでもらいたい」と歓迎した。
今回の上越サテライトオフィスの開設に際しては、社内から上越市に移住するメンバーを募った。「子育てを田舎でやりたいとか、スキーやスノボが好きな人は、こちらに移住するとよいのではないかと思う」と佐藤氏は語る。また、今後は地元での雇用を促進していく。狙いはもちろん都内のエンジニア不足。「東京は人材の獲得競争が激しく、売り手市場になっている。地方で優秀な方を採用できれば、いいモデルになる」と佐藤氏は期待を示した。