ヨーロッパ各国は、電気自動車普及に向け、ディーゼル車を本気で廃止しようと規制を強化する。通行料金の大幅な値上げや排出ガス試験の不正に対する巨額の罰金により、大気環境は改善され、二酸化炭素排出量の削減効果もある。
大気汚染対策として、ディーゼル車の都市部での通行を禁止するヨーロッパ各国の政策が急速に進んでいる。
ディーゼル車は日米ではまったく普及していないが、ガソリンの店頭価格が劇的に高いヨーロッパでは、燃費がよく、二酸化炭素排出量の少ないディーゼル車は各国の乗用車全体の4割前後を占める。しかしどんなに燃費がよくても、ディーゼル・エンジンはガソリン・エンジンよりも格段に多くのすすや酸化窒素を排出する。実際、ディーゼル車は、世界的に大気環境を悪化させる大きな要因であり、毎年300万人以上の命を奪っている。
ヨーロッパは事態を重く受け止めている。2015年にフォルクスワーゲンが販売していた「クリーンディーゼル」自動車の不正発覚以来、EUはディーゼル車に対する規制を強化した。EU議会が導入を決定した新方針を踏まえて3月4日に発表された最新の規制では、排出ガス試験で不正が発覚した場合、自動車メーカーには1台につき3万ドル以上の罰金が課せられることになった。
ロンドンのサディク・カーン市長も4日、大気汚染への影響が最も高いディーゼル車への課税額を引き上げると発表した。アース・テクニカが掲載した新規制の非常に詳しい説明をまとめると、2019年4月以降、平日にロンドン中心部に乗り入れる一部の車は30ドル相当の通行料が課されるほか、2018年1月以降、ディーゼル・エンジン搭載のタクシーは、ロンドン市内での営業が許可されなくなる。規制が最初に適用されるのはロンドン中心部だが、すぐにロンドン市全体に拡大されることになっている。
一方、イギリス政府が発表予定の新計画では、ロンドンを除く35市町でもディーゼル車の使用を制限する。こうした計画により、一部の地域ではディーゼル車での通行は完全に制限され、一部の都市の中心部ではディーゼル車利用に課税されることになる。
英国の政策は、昨年末にパリやマドリード、アテネ、メキシコシティーの市長が合同で発表した規制(2025年までにディーゼル車やディーゼル・トラックの市内乗り入れを禁止する)に沿うものだ。世界の主要都市の決断の主な動機は大気汚染だが、規制計画の発表時、気候変動にもプラスの影響があるとされた。
こうした積極的な政策措置は、ハイブリッド車やバッテリー駆動車両の普及率を向上させる。また、課税額の引き上げはディーゼル車の環境性能を高める効果がある。実際、電気自動車の使用を促進するには、規制に基づく方が、単に消費者の選択をあてにするよりも導入スピードは格段に速い。
EU議会の決定を受け、欧州委員会の産業・起業担当委員(EUの大臣に相当)は、ディーゼル車が「想像を超えるほど速いスピードで姿を消す」ことになると発言した。欧州委員の予想は間違いないだろう。
(関連記事:The Guardian, Ars Technica, Auto Express, “パリやメキシコシティーがディーゼル車の市内乗り入れを2025年までに規制へ,” “ガソリン車と電気自動車の主役交代は2020年代後半,” “Global Air Pollution Is Getting Worse, but Removing It Could Worsen Climate Change”)