家庭でも企業でも、ロボットの普及には「上手にモノをつかむ」機能の実現が欠かせない。ドイツのロボット企業フェストは、柔らかいモノを優しく、重いモノはしっかり、持つと形が変わるモノは丁寧に扱えるタコ足アームを開発した。
不気味な映像を見せてしまって申し訳ない。滑らかなモノを優しくつかんだり、つかんだモノを人間に手渡したりできるロボット触手だ。
「オクトパス・グリッパー(タコ状のつかみ具)」を開発したのはドイツのロボット企業フェスト(Festo)で、自然をモデルにした自律機械の製造を得意とする企業だ。柔らかな触手は、おおまかにいえば、ふたつの要素がある。まず、触手はシリコン製で、空気圧で駆動する。空気が注入されると内側に曲がり、モノに巻き付く。触手には2列の吸盤がついている。風変りな形状だが、モノの形に応じて変形し、バキューム効果でモノに吸い付き、モノを確実につかむ。
映像のように、設計通りに動作しており、ボールや金属製の円筒、びん、丸めた雑誌まで、滑らかで曲がったモノをつかめるのが特徴だ。形状が定まらず、滑りやすいモノをつかむのは、大半のロボットにとって信じられないほど難しいタスクであり、触手ロボットの実現は注目に値する。ロボットの「モノをつかむ」機能が進歩すれば、ロボットは工場や家庭でもっと活躍できるだろう。
ただし、体をくねらせるロボットは、すでにロボット業界にズルズルと入り込んでいる。英国のOCロボティクスは、廃炉中原発の機材裁断用にレーザー装備のヘビ型ロボット・アームを開発した。大手石油企業スタトイルは、海底探査用のヘビ型ロボットを開発した。東京工業大学の研究者が開発した全長20mの膨張型アームはヘリウム風船製で、見た目は怖くない。
オクトパス・グリッパーは、こうしたロボットの中でも、器用な部類だろう。モノのつかみ方こそ気味が悪いが、機械の性能は申し分ない。フエストによれば「ロボット・アームは弾性があり、変形するため、ユーザーがグリッパーに直接触れても全く危険はありません」というから安心。人間の仕事までつかみ取る可能性もあるだろうが、それはまた別の問題だ。
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