ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、リチャード・ブランソンの3人は、先週相次いで各自の宇宙企業について発表した。各社の事業内容は異なるが、共通点がひとつある。成功すればばく大な富を生み出せるのだ。
地上で産業界を騒がせるのに飽きた最高経営責任者(CEO)は、決まったように次の目線を宇宙に向ける。
究極の億万長者が個人的に宇宙企業に夢中になるのは、別に目新しい話ではない。ジェフ・ベゾスもイーロン・マスクもリチャード・ブランソンも、各自でブルー・オリジン、スペースX、バージン・ギャラクティックという宇宙企業を所有している。しかし今週、3人は個別に発表し、宇宙行きの計画を手がかりにした新事業の立ち上げを宣言した。
ジェフ・ベゾスはワシントンポスト紙(社主はベゾス自身)の取材を受け、月に物資を輸送する計画を準備中だと認めた。輸送事業はアマゾンの巨大マーケティング計画ではなく、地球から1番近い月に物資を輸送して「将来的な人間の居住地」を作るブルー・オリジンの計画だ。
計画がうまくいけば、月の南極に近い地点に物資を輸送できる宇宙船の開発につながるだろう。輸送地点として月の南極が選ばれてたのは、水源に近く、太陽光発電に使われる日光がたっぷりと得られるため、月の環境を地球化しやすい場所だからなのは明らかだ。
一方リチャード・ブランソンの発表では、自身が所有するバージン・ギャラクティックとは別の子会社としてバージン・オービットを立ち上げ、小さな人工衛星を宇宙に打ち上げる計画を明らかにした。この構想はバージン・ギャラクティックが研究を積み重ねてきたランチャーワン・プログラム(ボーイング747-400型航空機で高高度まで小型ロケットを牽引する)に基づいており、中空で小型ロケットを打ち上げる。
バージン・オービットによれば、重さ200kgまでの人工衛星なら地球を周回する太陽同期軌道まで、重さ400kg以上の衛星でも高度2000kmまでの低地球軌道であれば打ち上げられるという。バージン・ギャラクティックは、2017年末までに打ち上げを初披露する考えだ。
ベゾスやブランソンの発表に先立って、先週初めにはイーロン・マスクが自身が所有するロケット打ち上げ企業スペースXが宇宙旅行者による初の月・周遊旅行を2018年末までに実施する計画だと発言した。裕福な2人の旅行客はスペースXの宇宙船内で1週間過ごすために「多額の手付金」を支払い済みで、地球出発後月を目指し、月軌道の周回後に地球へ戻る旅程だ。
CEOの3人が新たな目線で事業に取り組むのは当然だ。民間企業による宇宙船開発事業は新規参入がしやすくなっており、今後も多くの企業が参入するだろう。月への物資輸送、人工衛星の打ち上げ、有人宇宙飛行はそれぞれ異なる事業のようでありながら、3社にはひとつの共通点がある。どの事業も、いずれは他社から支払いを受け、当然のように繰り返し利用されるサービスになり得る。宇宙関連の基幹サービスの主要な担い手として早期に成功できれば、続々と現れる競争相手を一蹴できるチャンスも増す。
3人とも地上の事業で成功しており、宇宙でも同様にうまくやるだろう。
(関連記事:Washington Post, Verge, “実は開戦間際? 「月面戦争」の始まり方,” “スペースXの月旅行は火星植民事業の資金源,” “宇宙飛行より地球で農業 地上で稼ぐ宇宙ベンチャー”)