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会社も自己消滅型? スナップチャット上場資料の笑えない真実

2017年02月06日 08時59分更新

文●Jamie Condliffe

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グーグルにサーバー使用料として年間4億ドルを支払う契約があり、投資家に与えられるのは利益よりもビジョン。それでもスナップは、自己消滅型メッセージや一人称動画、拡張現実(AR)によって、単なる赤字会社ではなく、ビジョナリーカンパニーとして上場するつもりだ。

ソーシャル・メッセージングのスナップチャット(Snapchat)を運営するスナップが、新規株式公開(IPO)に必要な資料を米証券取引委員会(SEC)に提出した。

2016年にMIT Technology Review選んだ「35歳未満の35人のイノベーター」のひとり、エバン・シュピーゲル(Evan Spiegel)が共同設立したスナップは、最大250億ドルの評価額で30億ドルを調達すると考えられている。株式公開は3月の予定で、すべてが計画通りに進めば、2014年9月のアリババ(Alibaba)以来、最大のテック系IPOになる。

スナップの主力製品スナップチャットは、「今」にこだわっている。瞬間を捉え、共有し、消えるのを見るのだ。もともとスナップチャットは、写真を送るための1対1の通信ツールとして設計された。後に動画も使えるようになり、ユーザーは、多くの人と投稿内容を共有できるようになった。ブランド企業はユーザー相手に消える記事を投稿できるようになり、写真や動画はスナップの「レンズ機能」(写真や動画のフィルターで、人工的だったり下らなかったりするのがほとんど)で加工できる。

今のところ、遊び心のある、刹那的な手法は功を奏している。アプリには1億5800万人以上のユーザーがいるのだ。

しかし、スナップのIPOに関する資料によれば、2016年の売上高が4億450万ドルあるにもかかわらず、5億1460万ドルもの損失がある。スナップは、投稿記事に広告を掲載したり、ブランド企業にレンズのスポンサーになってもらったりすることで利益を出し始めてはいるが、支出も莫大だ。最も注目すべきは、スナップが自社のサーバー設備を運営しておらず、グーグルのクラウド・プラットフォーム・サービスを使っていることだ。1月に結ばれた契約で、スナップは今後5年間、指定されたクラウドサービスの無制限アクセスに毎年4億ドルを支払う義務(一部翌年に繰り越し可)がある。

さらにスナップは、当面の利益を投資家に提示していない。代わりにスナップは、ほとんど無形の価値を提示している。ビジョンだ。スナップは、自社をソーシャルメディア企業やメッセージング・サービスとは思っていないのだ。むしろ、重要な目標を掲げたカメラ会社と思われたいのだ。スナップによると、同社の目標は「人々が『自らを表現』し、瞬間に生き、世界を学び、一緒に楽しめるように『カメラを作り変えること』」だという。

スナップが新しいテクノロジーやアイデアを盛り上げているのも確かだ。自己消滅型メッセージはスナップの本業だが、刹那的コンテンツを獲得し配信する新手法はまだまだあると考えている。一人称動画を共有できる独自のスマートグラスを販売したり、拡張現実(AR)をアプリに組み込んだり、その体験を定着させるために(=より多くの広告を売るために)、奇抜だが素晴らしい新手法を開発しているのは、そのためだ。

利益が出ていないにしても、スナップは確かにアイデアに溢れている。唯一の疑問は、「株式市場は、ビジョンを支援するのか?」つまり「株式市場は、スナップに投稿される写真や動画と同様、スナップの成功もすぐに消えてしまわないか?」を心配しているのだ。答えは年内には判明する。

(関連記事:“スナップチャットの新製品で ライフログブーム再来……?,” “35 Innovators Under 35: Evan Spiegel”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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