ライブでオケをバックに演奏をするミュージシャンは、大抵「キッキッキ」とか「カッコッコッコ」のようなクリック音を聴いてテンポを取っています。でも、ミュージシャンにクリックが好きか嫌いかを尋ねたら、あんまりいい顔をしない人のほうが多い。それどころか「そんなもん聴いてグルーヴできるか!」と、取り付く島もない方まで。
しかしいまやコンピューターと音楽は切り離せません。ゆえに同期する手段は必要であり、なんとかしてクリックに付き合いたいと願う人や、その方法を考えてる人もいるわけです。
「Soundbrenner Pulse(サウンドブレナー・パルス)」は、振動で音楽のテンポを伝える世界初のメトロノーム……。いや、それでは表現が生ぬるい。これはクリックの替わりに振動で人と音楽をハードシンクさせる機械、マン・マシン・シンクロナイザーなのであります。
スマートウォッチのように見える本体には、強力なバイブレーターを内蔵。スマートフォンやパソコンとワイヤレスで接続して、シーケンサーやアプリのテンポを振動に変換し、テンポを刻みます。Soundbrenner Pulse同士も最大5台までシンクロできるので、バンドで共有することもできる。
嫌われ者のクリックをどうにかしようというのが、この製品の狙い。果たして狙いは成功しているのでしょうか?
テンポが振動になると嫌いな音を聴かなくて済む!
クリックが嫌われる理由は簡単です。それはクリックを聴くこと自体がストレスだからに相違ありません。
まずクリックは客に聴かせるわけにはいかないので、ヘッドフォンやイヤーモニターで聴きます。が、そもそもヘッドフォンやイヤーモニターがイヤ、という方が結構いらっしゃる。レコーディングならまだしも、ライブでそんな余計なものはうざいと。
そしていざ音が出ると、クリックはうるさい。客に聴かせられない音ということは、音楽とは関係ない雑音とも言えるわけで。しかもバンドの音がデカければ、クリックの音量も相応に大きくなる。これは精神的にも肉体的にも苦痛で、演奏もどんどん楽しくなくなっていく。
音量の問題は遮音のいいイヤーモニターを使えばほぼ解決するのですが、これにはバンドや自分の音、クリック音を適切なバランスで返してくれるPA屋さんの技術も必要。自前のモニター用ミキサーを用意する方もいらっしゃいますが、卓からラインを分けてもらう必要があったりして、ライブハウスレベルの会場では嫌がられる。アマチュアはどうすればいいの。
じゃあ、そのクリックを振動にして身体に直接伝えればいいじゃない。クリックが嫌われる理由を突き詰めていくと、それが空気を媒介にして伝わる音だからじゃない。よし、振動で解決!
という仮説に基づく製品がSoundbrenner Pulseなわけです。でもバイブレーターなんかでホントにテンポが取れるのか? ということで、試してみました。