Dropbox、Google Drive、OneDriveといったファイルストレージサービスは最近非常に人気があります。ストレージサービスを使うと、クラウドやさまざまなデバイスにあるファイルを自動的に同期して、簡単にデータを利用でき、データの紛失が起こりにくいというメリットがあります。
多くのサービスは一定量の無料ストレージを提供しますが、容量を増やしたりすべてのファイルを保存したい場合は、有料になります。料金は特に高いわけではありませんが、無料の代替ツールがあるならそのほうが都合が良いでしょう。
その1つがNextcloudで、Dropboxなどの代わりになるオープンソースのツールです。自分のサーバーにインストールして使います。
では、Nextcloudをすすめる理由を説明しましょう。
主要なツールの問題はなにか?
DropboxやOneDriveのように簡単に使えるサービスがあるのに、なぜわざわざ自分のサーバーにセットアップする必要があるNextcloudを使ったほうが良いのでしょうか。Dropboxなどは基本的にプラグアンドプレイであり、費用をかけて安全で信頼できるサービスを提供する大企業がサポート、保守しているツールです。
しかし、これらのツールには欠点があります。言うまでもなく、それは料金です。料金は定額制で、一人一人に合わせてサービスを提供しておらず、いつ料金が変更されるかも分かりません。
また、データを完全に信用できない企業に信頼して渡してしまうことになります。企業の選択によってはデータを利用されることがあります。たとえば、iCloudの契約条件では次にように強調されています。
アップルはコンテンツが適切かどうかを判断する権利を常に保持しており、事前の通知なしにアップルの裁量でコンテンツをいつでも選別し、移動、拒否、修正、消去できる。
もちろん、このような条件は廃止されるかもしれません(めったに起こりませんが、起こり得ることです)。また、買収される可能性もあります。Sunriseカレンダーのことを覚えていますか。Microsoftが買収をしたときにカレンダーアプリがどうなったかが典型例です。
管理権限を取り戻す
Nextcloudはデータを完璧に管理するクラウドソフトウェアの代替的なツールです。個人や団体など幅広いユーザー層を想定して作られています。種類はownCloudプロジェクトと同じようなプロジェクトで、まだ始まったばかりですが、チェック・比較してみる価値はあります。
データが管理できるのは非常に魅力的です。しかし、Nextcloudは機能やセキュリティなどでどのように差別化して競合他社に対抗しているのでしょうか。
セキュリティとカスタマイズ可能な2要素認証
Nextcloudはセキュリティのベストプラクティスを説明するためのドキュメントを公開しています。安全ではないまたは問題になりそうな機能の使用は厳しく禁じられており、安全性を十分に確保する、またはできるかぎり安全性を確保するため入力コードは2人以上のレビューアが確認します。
さらに、Nextcloudの認証システムは2要素になっています。アクティブなセッションでも、リストを使った管理設定でユーザーを削除するか、パスワードの変更で無効化できます。管理者はコマンドラインを使ってユーザーの2要素認証(以降、2FA)の有効・無効を切り替えられます。
Dropboxなどのそのほかのプロプラエタリサービスも同様に2FAを提供していますが、Nextcloudは団体の特定の個人に対する2FAの有効・無効を「強制的に変更」できます。また、設定を少し変更すれば、特定の2FAアプリで締め出されないようにするため、独自の2FAプログラムを作成できます。Nextcloudのセキュリティに不安を感じる人にとっては大きなメリットです。
暗号化
Nextcloudはサーバー側の暗号化も提供していて、新規ユーザーに対してより良いユーザーエクスペリエンスを提供するために難しい設定なしに使えます。Nextcloudサーバーはリモートデータを暗号化しますが、ローカルストレージ側は暗号化しないのがデフォルトです。暗号化するとファイルサイズが35%増加することは知っておく必要がありますが、セキュリティが心配なら、だからといってNextcloudを使わない理由にはならないでしょう。
注意:暗号化を有効にすると、サーバー側の暗号化を管理ダッシュボード内で無効にできません。暗号化キーを定期的に必ずバックアップしてください。キーが分からなくなると、データにはアクセスできなくなります。
フェデレーション共有
Nextcloudのそのほかの機能としては、フェデレーション共有があります。自分専用のクラウド領域を作成するためのリモートNextcloudサーバー、またはフェデレーション共有機能をサポートしているそのほかのサーバー(たとえば、ownCloudを備えたサーバー)とファイル共有する機能です。共同作業や利用ができるように招待されたDropboxまたはGoogle Driveのフォルダーと同様です。しかし、公開プロトコルを使用しているため、ownCloudなど多くのプログラムに対応しています。Mounted Sharesを使うと招待されたフォルダーを直接利用でき、ファイルの保存容量のためにサーバーの空き容量がなくなることはありません。
データの保存場所に関わらず、個々のユーザーへの許可を設定するフレキシブルな管理権を使ってファイル共有を分散できます。Federated Cloud IDを使ってユーザー名(たとえば、username@example.com/nextcloud)でNextcloud利用している共同作業者とファイルを共有できます。
サーバー情報アプリ
サーバー情報アプリを使うと、Nextcloud Serverのパフォーマンスをチェックできます。トラブルシューティングまたはサーバーの性能向上に役立ちます。アプリはNextcloudに付属しているので、手作業でインストールする必要はありません。アプリでは、以下のデータを得られます。
- CPU使用率やメモリ使用量
- 時間と共に変わるアクティブユーザー数
- さまざまなカテゴリの共有数
- ストレージの統計
- PHP版のようなサーバー設定、データベース型、サイズ、メモリーの最大容量など
自分のサーバーにNextcloudをインストール
Nextcloudを自分のサーバーにインストールするのは驚くほど簡単です。共有ホストやルートアクセスの可否は関係ありません。プロセスは詳しく説明しませんが、コマンドラインでのインストールが難しい場合、ユーザーに優しいドラッグ&ドロップオプションもあります。ドラッグ&ドロップオプションには意義があります。なぜなら、オープンソースによる代替ツールがしっかりしているなら、一般ユーザーにも使ってもらえたほうが好ましいからです。
自分専用のクラウドにインストールするには、簡潔なインストールの説明を参照してください。手順は非常に簡単なので、ほんの数分で作業は完了します。
サーバーにNextcloudをインストールしたあとに、デスクトップまたはモバイル用のクライアントをインストールします。クライアントを利用して、Nextcloudにアクセスします。あらゆるプラットホーム用に使えるクライアントもあり、NextcloudにアクセスするのにそのほかのWebDAVクライアント(たとえば、ownCloud)も利用できます。
Nextcloudはユーザーがそれぞれのニーズに合わせてクライアントをカスタマイズできます。Nextcloud Appsはブラウザーの拡張機能としても動作します。主要な機能(たとえば、Mail、Calender、Contactsなど)を実現する拡張機能もありますが、クライアントのカスタマイズとはまた別です。自分専用のアプリの開発にもトライできます。
Nextcloud Box
わずらわしいシステム管理なしにデータをもっと管理したいと考えているユーザーの期待に応えるため、NextcloudはCanonicalやWDLabsと提携し、一般ユーザ向けのプライベートクラウドでIoTソリューションのNextcloud boxを企画しました。Nextcloud BoxはRaspberry Pi 2を取り付けたUSB 3接続のWDLabs製1TBのハードドライブです。Snappy Ubuntu CoreがmicroSDカードにインストールされているデフォルトのOSです。サーバー側は、ApacheのWebサーバー、MySQL、最新のNextcloudで動作します。
Nextcloud Boxはホームネットワーク用の小規模なローカルサーバーとして機能します。デフォルトでは、家庭内LANなどに接続されたネットワークで動作します。暗号化(https)やホームネットワークに外部からアクセスするためのルーターポートの設定が必要です。
Nextcloud boxの最適なユースケースの一例が、家庭内のローカルネットワークでの共有です。家族の誰もがあらゆるデバイスから利用できます。また、小規模なスタートアップやチームが最初に導入するには手堅いですし、企業内部の物理的なスペースにネットワークで互いが共有できるファイルを保存できます。さらに大きなメリットとして、データが、たとえば、Amazonの場合、どこかの砂漠にある大規模なデータセンターなどに保存されるのに対し、Nextcloud boxでは保存先の物理的なスペースがどこにあるか実によく分かる点です。しかし、Nextcloud boxもあらゆる問題を解決できるソリューションではなく、むしろNetcloudの性能を印象づける参考デバイスのようなものです。
Nextcloud boxは80ドルです(Raspberry Pi 2は含まれていません)。NextcloudのWebサイトから注文できます。
今後期待されるNextcloudの機能
Nextcloud 11はさまざまな新機能を備え、2016年12月にリリースされる予定です。以前からあるプロダクトであるownCloudとは一線を画しています。以下のような機能があります。
- ユーザー用ソーシャルメディアボタン
- コメント欄でのユーザーメンション機能
- メール共有
- ファイル/フォルダーの移動
- 現在のフォルダーの共有
- プレビュー共有
GitHubでは、Nextcloudチームが開発中のすべての機能が参照できます。
オープンソースはクラウドの次のソリューションを提供するか?
オープンソースのファイル共有に切り替える選択肢は、自分または自社にとって正しい選択である場合もあればそうでない場合もあります。オープンソースのメリットとデメリットや商業的にふさわしい選択肢かどうかをよく考え、要点をおさえて、どれがもっとも利益に結びつくかの判断が大切です。オープンソースのファイル共有ツールは多くの個人や企業にとって実現性のある魅力的な選択肢になり得る、とだけは言っておきます。
Nextcloudは、いろいろな面からownCloudで実現したかった機能をもとに改良されています。own/Nextcloudは、いまでもよく比較されますが、Nextcloudがより多くの独自機能を発表していることを考えると、既存のスタンドアローンプロジェクトに取って代わるでしょう。発表される機能が最新であるだけではなく、ユーザーに優しく、直感的に動作することを願いたいものです。
(原文:Nextcloud: an Open-source Dropbox, Google Drive Alternative)
[翻訳:中村文也/編集:Livit]