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話題のブログg.o.a.tに新レイアウト 「言葉を大切にする書き手を増やしたい」

2016年10月18日 12時11分更新

文●野本纏花

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KDDIウェブコミュニケーションズが7月にベータ版をリリースしたブログプラットフォームg.o.a.t(ゴート)に、新しいレイアウト機能「Purple Haze」が追加された。Purple Hazeはブログの背景全面に画像を表示し、ダイナミックに切り替えられる、ブログサービスではめずらしい機能だ。

リリースから3カ月が経ったいま、なぜ新レイアウトを投入するのか? g.o.a.tの生みの親である代表取締役副社長の高畑哲平氏に狙いを聞いた。

Purple Hazeによるブログ。背景全面に画像が表示され、独自の世界観を表現できる

新レイアウト「Purple Haze」記憶とリンクするブログへ

新たに投入された「Purple Haze」は、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの曲名から付けられた。同時に、従来のg.o.a.tのレイアウトはエリック・クラプトンの「Layla」と名付けられている。高畑氏は、なぜレイアウト名に楽曲のタイトルを付けたのか。

「音楽って、記憶とリンクしている側面がありますよね。『あの曲を聴くと、あの頃のことを思い出すよね』と。g.o.a.tで綴るブログも、そんな音楽と近しい存在であってほしいという思いから、全世界で知られている曲のタイトルをレイアウト名にしました」

Purple Hazeは、“好きな画像を背景に敷き、その上に文字を載せられる”というレイアウトだ。Purple Hazeを選択して文章を書くと、左に「シーンを追加する」というボタンが追加されており、そこから次のシーンで使う画像を追加できるようになっている。画像と画像はクロスフェードでつながって表示されるため、映画のようなシーンの切り替えを想起させることができる。

画像に文字を載せたときに視認性が下がるようであれば、画像の明度を落としたり、ぼかしを入れて文字を浮かび上がらせたりことも可能だ。Purple Hazeのリリースにともない、「Palette」という42種類のカラー背景も追加されている。写真と文章が合わないときや、大きな場面展開をしたいときなど、アイデア次第でさまざまな活用方法が考えられるだろう。単なるブログではなく、小説サイトのような表現もできそうだ。

背景をぼかしたり明度を落としたりといった調整もできる。画像を重ねるとおもしろい表現ができそうだ

g.o.a.tが追求する世界観とは

リリース時のインタビューでも「とにかく“書くこと”に集中してほしい」と語っていた高畑氏。しかし、シンプルで洗練されたg.o.a.tのUIに魅せられたのは、実は文章よりも写真に重きをおくユーザーたちだったという。

「g.o.a.tをリリースしてみたところ、僕らが想定していたより多くの写真好きのユーザーが集まってくれました。もちろん、それもありがたいことではあるのですが、僕らがg.o.a.tで本当にやりたかったのは、文章にフォーカスしてもらうこと。そのためには、画像を後ろに敷くことで、文章をもっと前に出せるのではないかと考えたんです」

g.o.a.t開発の陣頭指揮を執るKDDIウェブコミュニケーションズ代表取締役副社長の高畑哲平氏。リリース以来、ユーザーからはさまざまな反響が寄せられているという

とりあえずリリースして、ユーザーの声を反映しながら、改修を繰り返していくというのは、Webサービスではよくある手法だが、g.o.a.tは違う。これまでにユーザーから多くの“要求”が届いているというが、「まずはg.o.a.tで理想の世界観を作り上げることが最優先だ」と話す高畑氏の思いは強い。

「問い合わせで届くのは、要望ではなく“要求”ですね(笑)それだけ愛情をもってg.o.a.tと接していただいているのだと思うのですが。正直、迎合するつもりは、まったくありません。普通のブログにある機能を求められることが、ほとんどだからです。コメントがほしいとか、いいね!をつけてほしいとか……。他のブログと同じ機能にするくらいなら、そっちでいいですよね」

こうした強気の戦略をとれるのは、g.o.a.tが広告収入に頼らず、無理にページビューを集める必要がないからだ。g.o.a.tは“書きたい人が書くためにお金を払う”サービスを目指している。

「広告を意図せずにクリックさせられたときの敗北感は非常に大きなストレスになる。お客さまが全然ハッピーじゃない世界というのは、普通に考えておかしいでしょう。書き手がg.o.a.tで書きたい衝動に駆られるサービスにするために、いまは『書きたい! 楽しい! なんだかワクワクする!』という、おもちゃに近い感覚を追求したい」

数字を意識してブログを書くのは本質的ではない

g.o.a.tには現状、ブログを集めたポータルサイトは存在しない。広告収入のために読み手を増やす必要がないとはいえ、書き手にとって読み手が増えることは、書くモチベーションを大きく左右するのではないか。

「まだタイミングを決めていませんが、読者を増やすしくみ作りには、いつか必ず着手します。ただ、ある程度プレイヤーが育ってからですね。ランキングのように数字を意識しすぎて、『こうやったら伸びるかな』といった邪な考えに縛られてほしくないんです」

現在は、マネックス証券チーフストラテジストの広木隆さんの「Dance with Market」、女性3人組ロックバンドTricotの中嶋イッキュウさんの「▽SUSHI is PIZZA▽」、アーティストのとんだ林 蘭さんの「BLOG」といった、特定の分野で多くのファンを持つパワーユーザーを中心に広がっている状況だという。

「ありがたいことに、書き出しの1行目から個性がにじみ出てしまうような人が多いですね。ジャンルは固定されず、成長曲線は急角度で伸びています」と高畑氏は語る。今月から海外向けマーケティング担当者も採用し、徐々に増えているという英語圏ユーザーの獲得にも本腰を入れていく。

今回の新レイアウトのプロモーションとして、Dragon Ashの新曲「光りの街」とコラボレーションビデオも制作した。「表現の違いがあるだけで、人がブログを書くのと、自分が曲を作るのは同じ」だと語るKjさんと、言葉を大切にするg.o.a.tのコンセプトをシンクロさせたビデオで、言葉にこだわる書き手のさらなる獲得を目指す。

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