世界中のファッションアイテムを購入できるソーシャルショッピングサイト「BUYMA(バイマ)」を運営する(株)エニグモは、日本人の出品者(パーソナルショッパー)が世界各国から直販する越境CtoCとも言えるサービスを展開し、急成長を遂げている。「世界が変わる流れをつくる」という経営理念のもと、既存の流通概念を打ち破り、ソーシャルを活用した世界でも類を見ないサービスを確立したエニグモ。海外商品の通販サイトではトップの売上を誇るそのサービスの全容と現状の課題、今後本格化するグローバル展開の可能性について迫った。
パーソナルショッパーのネットワークを確立
バイマは、世界124カ国に住む約7万人の日本人が出品者となり、海外の最新ファッションアイテムを販売するソーシャルショッピングサイトだ。出品者が海外の商品を直販するため、日本未入荷の商品や海外限定商品が購入できる。2005年にサービスを開始し、現在は会員数が270万人(2015年12月末時点)を超え、1日のあたりの出品数は1万点に上る。パソコンからでもスマートフォンからでも購入でき、現在の利用比率はパソコン3割・スマホ7割となっている。
海外商品を購入できる通販サイトやオークションサイトは複数あるが、日本語対応のサイトは少ない。これらのサイトで海外商品を購入する場合、取引の相手は海外の企業や個人となり、安全面で不安を感じてしまう。経済産業省が13年に発表した電子商取引の統計によれば、越境ECの利用者の3割が何らかのトラブルに遭遇している。バイマでは、支払いをバイマ側が仲介し、商品が届いてから決済手続きに入るため、破損や未配達などのトラブルに遭うリスクがない。また、提携する鑑定会社による本物保証、サイズ違いなどの場合でもBUYMAポイントで補償する返品補償など、安心安全の取り組みを行っている。
バイマの仕組みは、まずPSが個人のセンスで選んだファッションアイテムの写真を撮影し、バイマに出品する→購入者が商品を注文→PSが店舗で商品を買付し、購入者に発送(配送料は3000~4000円程度でPSが負担)→商品が購入者に届く→購入者が商品を確認し、決済確定→バイマからPSに料金を支払う、という流れになる。バイマは決済手数料として購入者から取引金額の5%、出品者のPSから成約手数料5~7%を得る。PSは仕入れ価格に成約手数料・配送料・利益を上乗せした価格で出品することになるが、それでも日本の店舗などで購入するより安くなるため、購入者・出品者・バイマの3者ともにメリットが大きいサービスとなる。
こうしたレベルの高いサービスを提供できる理由の1つが、バイマが優秀な「パーソナルショッパー」のネットワークを構築していることだ。同社はバイマに出品する海外の出品者をパーソナルショッパー(PS)と呼び、PSは単に商品を売るだけでなく、顧客に応じてWEB上で接客する役割を担う。商品力と接客力が高いPSが増えれば、品揃えやサービスの質が高まり、顧客満足度も向上する。PSのネットワークは、同社の最大の強みであり、バイマ成長の原動力とも言えるだろう。センスと接客力を兼ねそろえたPSにはリピーターが付き、ショップ店員のように顧客のニーズに合った商品を取り揃える。月間の売上が数千万円に上るPSもいるという。
課題は認知度不足、15年は積極的に広告展開
同社はバイマのサービス開始以降、売れない時期や経営が厳しい状況に陥ったことがあるが、ターゲットを女性にして商材をファッションに絞ったことや、BUYMA事業に経営資源を集中することなどで乗り切り、09年に初めて単月黒字化を達成。以降、業績を拡大し、12年7月に東証マザーズに株式上場を果たした。直近は4期連続で増収増益。15年1月期決算は、総取扱高が206億円、売上高は22億8500万円、営業利益は11億9600万円だった。中期決算では、19年1月期に総取扱高が720億円、売上高は82億円、営業利益50億円を目標に設定している。
業績の好調の同社だが、課題もある。その一つが他のサイトに比べて認知度が低いこと。同社取締役の金田洋一氏は「15年初旬に社内で実施したECサイトの認知度に関するアンケート調査では、楽天の認知度が99%、ZOZOTOWNが90%だったのに対し、バイマは25%。認知度で約4倍の差をつけられていた」と語る。この結果を受け、同社は今年(2016年1月期)を積極投資の年に位置づけ、合計12億円の広告宣伝を実施している。ネット広告など既存の広告約2億円に加え、約10億円かけてスポットでテレビCMを展開している。CMでは梨花さん、小嶋陽菜さん、又吉直樹さんら、個性的な有名人を起用し、バイマの魅力的な商品を伝えるものと、BUYMAで実際に取り引きされた商品の流れを、世界地図上に線を引いて、世界中の商品を購入できることを視覚的に表現した2タイプがある。現在、CMと連動したキャンペーンも実施している。
(山本剛資)