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グリー、不動産ビジネス参入の狙いは 「SUUMO」「HOME's」への対抗策は 「ietomo」小林由弥マネージャーに聞く

2014年12月10日 14時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/大江戸スタートアップ

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 モバイルプラットホームのグリーが10日、売買物件を扱う不動産ポータル「いえとも」(ietomo)を開始した。物件情報の掲載は基本無料、取引が成約したとき不動産会社(売主)がグリーに広告料金を支払う「成功報酬型」モデルを採用し、「HOME'S」「SUUMO」など先行大手の向こうを張った。

 インターネット事業者にとって不動産は旅行などと並ぶ巨大市場だ。11月の発表によればリクルートホールディングスの「SUUMO」事業は、直近四半期の実績だけで売上400億円を超えている。グリーの直近四半期の売上高254億円を1.5倍以上も上回る(2015年6月期第1四半期)。

 「ゲームの会社」というイメージからは開きを感じる事業だが、開発を担当した同社投資・インキュベーション事業本部の小林由弥マネージャーは、グリーの強みを生かせる事業だと話す。


「成功報酬型」で先行大手を追い落とす

 もともと自分自身が4年前から不動産投資をしていたという小林マネージャー。首都圏の物件を中心に、ポータルサイトや不動産屋の店頭で売買物件を探している際に「違和感」をおぼえたという。

 「ネットにも物件は載っているが、実際の店に行くとそれ以外の物件もある。なぜそんな状態になってるんだろうと疑問に思った」

 フリーペーパーと同様の広告モデルだった業界事情が背景にある。

 SUUMOは不動産会社から情報掲載の広告料金をもらう「掲載課金型」、HOME'Sは問い合わせがあったときに広告料金をもらう「反響課金型」と掲載課金型のハイブリッドモデル。いずれも成約したかにかかわらず広告料金がかかるため、不動産会社は問い合わせ・成約の可能性がある物件に絞っていた。

 「2年、3年かけて売れればいいという物件はある。たとえば山の上にある物件だったり、やたら縦に長い物件だったり。しかし本来、物件の利用価値はエンドユーザーが決めるもの。それを見られる環境が(インターネットに)ないのが問題だった」

 掲載のハードルを下げ、登録物件数で大手を上回る。「成功報酬型」で成長した会社といえば求人ポータルのリブセンスだ。ietomoでは取引の成約時、買主に「お祝い金」をキャッシュバックできる仕組みも設けており、発想はリブセンスと共通している。


ソーシャルゲーム運営の経験を活かしてスピード経営

 モデルは成功報酬型、グリーならではの強みはどこか。

 グリーは2014年6月末時点で国内5300万人以上の会員基盤を持つ。だが、今回のポータルに会員を流しこもうとは考えず、ソーシャルゲームで培ったサービス開発・運営ノウハウが武器になると話す。

 「今回のポータルは実質2ヵ月で構築した。このスピード感で不動産ポータルを作れるのはグリーならでは」と小林マネージャー。サービス構築のみならず、KPIの見方などソーシャルゲームで培った経験を他の事業領域にも応用できるのではないかという。

 「グリーで新規事業をやるときは『3ヵ月で立ち上げろ』と言われる。『こういうサービスがあったらいいよね』と考えてから1年かかってしまっては、ニーズにキャッチアップできない」


グリー社内で生まれた「ベンチャー第二世代」

 同じ事業モデルで現れるだろう競合には、業者とのグリップを強めて逃げきる構えだ。そのため物件情報は、競合他社や専門会社から買うのではなくスタッフの足で集めた「自社コンテンツ」にこだわった。

 現在は首都圏を中心に、スタッフが不動産会社を回っている状態だ。数十社と契約を終えており、リリース後速やかに約3万件の物件情報を掲載するが「早々に5万件を超えそう」(小林マネージャー)な勢いだ。

 売買物件ポータルはキャッシュインまでが長く、初期投資も必要になる。リソースが潤沢にあり、ある程度の余裕がある企業でないと参入は難しい。「ベンチャーマインドを持っていて体力のある会社でないとできない」と小林マネージャーはグリーの肝力を誇る。

 不動産ビジネスは基本的に仕入れの仕組みと体力がすべて。今年8月にソニー子会社「ソニー不動産」が開始するなど、市場は新旧まじえ大乱闘の様相を呈している。設立10周年のグリー社内で立ち上がった「第二のベンチャー」は、競合ひしめく不動産ビジネスを収益の柱にできるのか。


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