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林信行が語るWWDC

iPhone 4は、新しい「森」を生み出す最初の木

2010年06月08日 13時17分更新

文● 林信行

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iPhone 4を掲げるアップルCEO、スティーブ・ジョブス氏

 米アップルが毎年好例の開発者向け会議「WWDC 2010」で、新型スマートフォン「iPhone 4」を発表した(関連記事)。これは携帯電話だけでなく、デジタルカメラやゲームなど、さまざまな分野に影響を及ぼしうる大きな革命の始まりを告げている。


iPhone 4とは何か?

 「初代iPhoneの登場以来、最大の飛躍」──アップルがそう言って発表したiPhone 4は、まさに新たな革命のスタートを感じさせる製品だ。

 テクノロジー業界には「イノベーションのジレンマ」という言葉がある。今、スマートフォンに押され気味の「iモード」のように、優れた技術を持っていても、いつまでもそれにこだわりつづけると、より安価で質の高い新技術に簡単に抜き去られてしまう。

 アップルが、ほかのテクノロジー企業と違うのは、数年に一度、自社の技術を根本から見直し、再スタートする勇気を持ち合わせていることだ。今回のiPhone 4は、まさにそれをやってのけた。

 基本機能や画面デザインを見ている分には、そうは思わないかも知れない。だが、ここで一度、頭を真っ白にして、これまでのiPhoneとiPhone 4を比較してみよう。

 これまでのiPhoneは、初心者にもやさしいシングルタスクの操作を用意したデバイス、という印象があるはずだ。ハードウェア的には、丸みを帯びた親しみやすい筐体に、解像度の低さを感じさせない液晶画面、低解像度ながらアプリを使って味のある写真が撮れるカメラなどが特徴だった。

 これに対して、iPhone 4は、マルチタスク機能で複数のアプリを自在に切り替えることが可能になった。筐体は薄さを強調したシャープなラインで構成されたデザインで、液晶画面もカメラも解像度が高まっている。さらにテレビ電話にも対応した。

左よりiPhone 3GS、iPhone 4ホワイト、同ブラック。液晶は3.5インチで同じサイズだ

4/3GSで同じウェブページを表示。iPhone 4が326ppi、3GSが163ppiと解像度が異なるため、4のほうが文字がくっきりと見える

角が四角いので縦に自立するようになった

手にもって使用しているところ

側面の写真。端子をよく見ると、ホワイトモデルでは内側が白、ブラックモデルでは内側が黒ということが分かる

側面にはゴムと成型プラスチックを組み合わせた「Bumpers for iPhone 4」というアクセサリーをはめられる。ホワイト、ブラック、ブルー、グリーン、オレンジ、ピンクの6色を用意

 時代や状況が変われば、同種のプロダクトでも求められるものは変わってくる。ニクロム線の時代と今では小型ヒーターの作りも違えば、デザインも別物だ。

 同様にiモードの時代と今では電話に求められる機能や形も変わってくるだろう。いや、そんな昔と比較をするまでもなく、まだまだ一部のマニア向けの製品だった2007年時点と、世の中がスマートフォン主体に大きく変わり始めた2010年というわずか3年近くの間にも、スマートフォンを取り囲むコンテクストや、製品に求められる要件、デザインが変わってきている。

 アップルは、一度、勇気を持って、これまでのiPhoneを忘れて、時代に即したスマートフォンをゼロから考え直した。もちろん、これまで通りで残している部分はあるが、それが従来のiPhoneからの乗り換えを簡単にしている。

 これがiPhone 4の本質ではないだろうか。

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