月刊アスキー 2008年3月号掲載記事
あらゆる方式の液晶に必ず2枚必要な偏光フィルム
謎の「ミラバケッソ」という言葉をさまざまな人々が唱える、俳優の成海璃子さん出演の不思議なCMを目にされた方も多いだろう。これは、化学・合成繊維メーカーであるクラレのCMだ。ミラバケッソとは「ミラいにバケる新ソ材。」を略したもので、同社による造語だ。
1926年に岡山・倉敷で倉敷絹織(のち倉敷レイヨン)として創業したクラレは、関西での知名度は高いが、関東では馴染みが薄い。優秀な人材の確保を主目的として、若年層に「クラレという会社に気づいてもらう」(同社広報)施策のひとつがこのCMだという。
もっとも、クラレは未来だけでなく現在においても、人工皮革「クラリーノ」や「ビニロン」繊維など、すでに大化けした繊維や樹脂、化成品を数多く開発・製造している。
その中でも注目したいのは、「ポバール」という水溶性の樹脂。文具のりや接着剤のほか、インクジェット用紙のコーティングにも使われる。そして、このポバールはいま、携帯電話から大画面テレビに至るまで、あらゆる液晶パネルに欠かせない材料になっている。
液晶パネルは基本的に、液晶分子を2枚の「偏光フィルム」で挟んだかたちになっている。この偏光フィルムの材料として、ポバールを薄く伸ばした「ポバールフィルム」が適しているのだが、光学用ポバールフィルムを製造しているのは世界でもたった2社しかない。そのうちの1社がクラレで、しかも実に8割の世界シェアを握っている。
クラレのポバールフィルムは、その全量を岡山県倉敷市と愛媛県西条市の同社工場で製造する。シャープの液晶は“亀山産”だが、韓国・台湾メーカー製も含め、世にある液晶のほとんどは“倉敷産”と“西条産”の部材でできているのだ。
- 株式会社クラレ
- 本社:東京都千代田区大手町1-1-3
- 創業:1926年
- 代表者:代表取締役社長 和久井康明
- 資本金:約889億円
- 従業員数:6812名(2007年3月末時点)