「ローカル5G」って何? 工場や農場のIoTを支える専用5G網の仕組み
工場や物流拠点、農場では、カメラやセンサー、車両といったネットワークにつなぐ機器が増えています。扱うデータ量が増え、広い敷地を移動する機械までつなぐようになると、Wi-Fiでは通信エリアや安定性が課題になることも少なくありません。そこで選択肢となるのが「ローカル5G」です。今回は、その仕組みや特徴を整理し、実際の現場でどのように活用されているのかを見ていきます。
ローカル5Gは、携帯電話会社が全国向けに提供する5Gとは別に、利用するエリアを決めて専用の5Gネットワークを構築する仕組みです。工場や農場、港湾といったさまざまな現場で、IoTの通信基盤として活用されています。
名前に「5G」と付いていますが、ローカル5Gという別の通信規格があるわけではありません。スマートフォンの5Gと同じ第5世代移動通信システムの技術を使い、利用する現場に基地局などの設備を設置して独自の通信網を作ります。携帯電話会社の5Gでは、利用者が基地局の場所や通信エリアを自由に決めることはできませんが、ローカル5Gなら、たとえば高画質カメラの映像を送るために上り通信を重視するなど、用途に合わせた設計が可能です。
ただし、5Gに使う電波はWi-Fiのように誰でも自由に利用できるものではありません。ほかの無線通信との混信を防ぐため、利用する周波数や基地局の運用にはルールがあり、無線局免許も必要です。日本では2019年に、携帯電話会社以外でも5G用の電波を利用できるよう、ローカル5G向けの周波数と免許の仕組みが整えられました。
「それならWi-Fiでいいのでは」と思うかもしれません。Wi-Fiは手軽に導入できますが、免許不要の周波数帯を共用するため、周囲の電波状況によって通信品質が変わることがあります。ローカル5Gは、無線局免許が必要な周波数帯を使うため、免許不要のWi-Fiよりも周囲の電波による影響を受けにくいのが特徴です。そのため、広い敷地を移動する車両や機械をつないだり、複数の高画質カメラから映像を送ったりするなど、安定した通信が求められる場面に向いています。ただし、基地局の整備や無線局免許の申請、電波設計などが必要になるため、Wi-Fiほど手軽に導入できるわけではありません。
接続する機器を管理しやすいことも、ローカル5Gの特徴です。スマートフォンと同じようにSIMを使って端末を認証できるため、登録したカメラや車両、機械だけをネットワークにつなぐといった運用ができます。多数のIoT機器を扱う工場や物流拠点では、どの機器を接続させるかを管理しやすくなる点もメリットです。
ローカル5GはIoTでどう使われる?
工場では、検査用カメラの映像をローカル5Gでコンピューターへ送り、AIで製品の傷や不良を調べるといった使い方が考えられます。生産ラインの配置を変更する際も、LANケーブルを引き直すことなくカメラや機器を移動しやすいのがメリットです。
たとえば、大阪港の夢洲コンテナターミナルでは、NTTビジネスソリューションズ(現NTT西日本)のローカル5Gを導入し、2024年9月から実運用しています。以前はコンテナの損傷が見つかると、担当者が管理棟から約1km離れたゲートまで移動して確認していましたが、現在は現場の端末で撮影した画像をローカル5Gでサーバーへ送り、離れた場所にいる関係者と共有しています。
農業でも、無人で動く農機の監視や制御にローカル5Gを活用する実証が行われています。北海道岩見沢市では、農機に搭載したカメラの映像を農場内のローカル5Gで送信し、約10km離れた遠隔監視センターから無人トラクターを監視・制御しました。ローカル5Gを使うのは農場内の通信で、農場と遠隔監視センターの間は別の通信回線で結んでいます。
ローカル5Gと携帯電話回線の両方に対応する機器もあります。SORACOM認定デバイスの富士ソフト「+F FS050W」はローカル5Gに対応し、複数のSIMを切り替えて利用できます。たとえば工場の構内ではローカル5G、外へ持ち出したときには携帯電話会社の回線を使うといった構成が可能です。
このようにローカル5Gは、高画質映像を送ったり、広い敷地を移動する機械をつないだりするなど、安定した無線通信が求められる現場で活用できます。利用するエリアや用途に合わせて通信環境を設計できることが、Wi-Fiや携帯電話会社の5Gとの大きな違いです。
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