ESET/サイバーセキュリティ情報局
ゼロデイ攻撃が高速化、AI時代に企業はどう備える? Nデイ攻撃まで見据えた現実的な対策とは
本記事はキヤノンマーケティングジャパンが提供する「サイバーセキュリティ情報局」に掲載された「AI活用と攻撃者の組織化で高度化するゼロデイ攻撃・Nデイ攻撃への現実的な備えとは」を再編集したものです。
攻撃者の組織化やAI活用により、ゼロデイ攻撃の脅威は深刻さを増している。近年は、未知の脆弱性を突くゼロデイ攻撃に加え、既知の脆弱性を悪用するNデイ攻撃への対応も課題となってきた。こうした脅威に備えるには、未知の脅威を検知・解析する仕組みと、既知の脆弱性を迅速に修正する運用の両方が求められる。しかし、限られた人員の中でこれらを継続的に実施するのは容易ではない。本記事では、ゼロデイ攻撃とNデイ攻撃の実態を整理した上で、中堅・中小企業が現実的に取り組める対策のポイントを解説し、エンドポイントセキュリティソリューションが担う役割を紹介する。
高まるゼロデイ攻撃のリスク
2026年3月、Google社はChrome向けの緊急セキュリティアップデートを2件、相次いで公開した。
2件のリリースは48時間以内に行われており、実環境での悪用が確認された脆弱性への対応だった。該当の脆弱性が悪用されると、細工されたWebページを介して、ユーザーのブラウザーで悪意のあるコードが実行される恐れがある。
Google社はいずれの脆弱性についても「実環境で悪用が確認されている」と説明しており、NVD(国家脆弱性データベース)に、画面描画エンジン「Skia」に関する脆弱性であるCVE-2026-3909、JavaScriptエンジン「V8」に関する脆弱性であるCVE-2026-3910の情報が登録された。
また、CISA(米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)のKnown Exploited Vulnerabilities Catalog(CVE-2026-3909、CVE-2026-3910)にも該当の脆弱性が追加されている。深刻度はどちらも「高」と評価されており、優先的な対応が求められる。
修正パッチが提供される前に悪用される、未知の脆弱性を突く攻撃をゼロデイ攻撃と呼ぶ。企業システムに限らず、Chromeに代表されるような日常的に利用されるソフトウェアも標的となり得る点が、その特徴の1つだ。近年、ゼロデイ攻撃に加え、既知の脆弱性を悪用するNデイ攻撃も含めて、脅威への備えがより重要になっている。
1)攻撃者の組織化と商業化
サイバー攻撃は分業化が進み、初期侵入、認証情報の売買、恐喝・交渉といった役割ごとに専門化している。その結果、攻撃の準備や実行が効率化され、ゼロデイ脆弱性の悪用に関与する攻撃者層も広がっている。
Google社の調査では、ゼロデイ脆弱性を悪用する主体が、政府の資金・指示を受け、政治・経済・軍事目的でサイバー攻撃を行う国家支援型攻撃者に加え、商用スパイウェアベンダー(CSV:Commercial Surveillance Vendor)にも広がっていることが指摘されている。
同調査では、2025年に悪用が確認されたゼロデイ脆弱性について、攻撃主体が特定できたケースに限ると、CSVまたはその顧客による悪用が3割を超え、国家支援型攻撃者による事例を上回った。
2)AI技術の悪用による攻撃準備の高速化
攻撃者がAIを利用し、偵察、脆弱性探索、攻撃プログラム作成を効率化する動きが広がっている。NCSC(英国サイバーセキュリティ当局)は、脆弱性の公開から悪用までの期間がすでに数日単位に短縮されており、AIによってさらに短くなる可能性があると警告している。
Anthropic社は、最新のAIモデル「Claude Mythos Preview」がソフトウェアのこれまで知られていなかった脆弱性を発見し、悪用の可能性まで示した事例を公表している。こうしたAI技術は、防御側にとって迅速な脆弱性発見に役立つ一方、攻撃者に悪用されれば、ゼロデイ脆弱性の探索や攻撃準備を効率化し、攻撃成立までの時間をさらに短縮しかねない。
ゼロデイ攻撃・Nデイ攻撃の特徴と影響範囲
修正パッチが提供される前の段階を「ゼロデイ」と呼ぶのに対し、修正パッチが公開された後の段階は「Nデイ」とされる。以下では、それぞれの特徴について解説する。
1)ゼロデイ攻撃
ゼロデイ攻撃は、ベンダーが脆弱性を把握していない、あるいは修正プログラムが提供される前の未知の脆弱性を突く攻撃である。防御側が対策を講じる前に攻撃が成立するので、完全に防ぐのは難しい。そのため、被害を拡大させないよう、迅速な検知と初動対応が極めて重要となる。
2)Nデイ攻撃
Nデイ攻撃は、修正パッチや回避策が公開された後も、パッチ未適用のまま残っている脆弱性を狙う攻撃である。攻撃者は公表された脆弱性情報をもとに攻撃を準備できるため、パッチ適用の遅れは攻撃者に攻撃の余地を与えることになる。
脆弱性管理が不十分な場合、未対策期間が長期化することで、被害につながるリスクも高まる。既知の脆弱性を放置せず、修正パッチを迅速に適用することでNデイ攻撃のリスクを低減できる。
3)サプライチェーン経由で被害が広がるリスク
サプライチェーン攻撃では、脆弱性の悪用だけでなく、認証情報の窃取、委託先への侵入、ソフトウェア更新プロセスの悪用など、複数の経路を起点に被害が広がる場合がある。実際に、ファイル転送ソフト「MOVEit Transfer」の未知のSQLインジェクション脆弱性が悪用され、多数の利用組織にデータ窃取リスクが広がった事例もある。こうした事例からも、既知の脆弱性対策だけでは、サプライチェーン全体で起こり得るリスクをカバーするには不十分だということがわかる。
企業には、未知の脅威に備える仕組みと、既知の脆弱性を迅速に修正する運用体制の両方が求められる。サプライチェーン攻撃では、攻撃者が取引先や委託先を足がかりに侵入することがある。特に、体制や予算の制約から対策が十分に行き届きにくい中堅・中小企業が経路となる場合もあるため、大企業だけでなく、その関係先も標的となり得る。自社防衛だけでなく、取引先からの信頼を維持する観点からも、対策状況を説明できる体制の整備が重要だ。
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ゼロデイ攻撃・Nデイ攻撃に備えるための基本対策
ゼロデイ攻撃・Nデイ攻撃への備えとして、以下の基本的な対策を継続的に実施する必要がある。
1)既知の脆弱性を放置しない的確なパッチ管理
端末・OS・アプリケーションの脆弱性を把握し、パッチ適用状況を継続的に可視化・管理するプロセスは、まず優先すべき基本対策である。管理対象が増加し、一律の対応が難しくなった場合は、脆弱性の深刻度や悪用状況を踏まえ、優先順位を付けて対応する必要がある。
NISTが運営するNVDや日本のJVNといった脆弱性情報に関する公開データベースを参照し、実際に悪用されている脆弱性から重点的に対処することで効率よく対策を行うことができる。
2)単一の対策に依存しない多層防御
ゼロデイ攻撃に備えるには、既知のシグネチャだけに頼らず、未知の脅威を検知・解析する仕組みが欠かせない。振る舞い分析やクラウド上の脅威情報を活用し、未知のファイルや不審なファイルを隔離環境で解析することで、実環境に影響を与えずに未知の脅威を検知し、その危険性を評価できる。
また、侵入経路が多様化している現状では、エンドポイント、ネットワーク、クラウドアプリケーションなどを横断し、侵入前の防御、検知、封じ込め・対応を組み合わせた多層防御が求められる。
3)迅速な検知・対応体制の整備
未知の攻撃を完全に防ぐことは困難であり、侵入を前提とした早期検知と迅速な初動対応が欠かせない。不審な挙動の早期検知、影響範囲の迅速な把握、必要に応じた端末の隔離・復旧を行える体制を整えることで、被害拡大を最小限に抑えられる。
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ゼロデイ攻撃・Nデイ攻撃対策で顕在化する課題
リソースが限られる中堅・中小企業では、基本的な対策であっても継続的に適用・維持するのが難しい場合も多い。セキュリティ専任者が少ない中、手作業で管理を続けるには限界がある。端末やアプリケーションの状態を把握しきれず、パッチ適用に抜けや漏れが生じやすい。
さらに、モバイル端末やBYODの利用が拡大したことで管理対象が増加し、運用が複雑化することで、脆弱性情報を追い続ける負担も増している。
また、リモートワークとクラウドサービスの普及により、社内ネットワークの内側だけを守る境界型防御では十分とは言えなくなっている。社外の端末やクラウドサービスも含め、一元的に管理する仕組みが必要である。防御・検知・対応という観点ではエンドポイント防御の重要性が高まっており、社内外の端末を統合的に管理できるクラウド型の端末管理基盤の整備が求められている。
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ESET PROTECT Completeで実現する多層的な備え
ゼロデイ攻撃やNデイ攻撃に備えるには、多層防御に加え、脆弱性管理やパッチ適用を継続的に行う仕組みが欠かせない。しかし、限られた人員で、これらを手作業により維持し続けるのは難しい。
こうした課題に対応するソリューションの1つが「ESET PROTECT Complete」だ。脆弱性・パッチ管理、クラウドサンドボックス、クラウド型管理ツールなど、多層防御を支える機能を包括的に備えたエンドポイントセキュリティソリューションである。
以下、ゼロデイ攻撃・Nデイ攻撃への対策に関連する主要機能を紹介する。
1)脆弱性・パッチ管理でNデイ攻撃のリスクを低減
従来の手作業による脆弱性管理では、管理対象端末の把握にパッチ適用状況の確認に多くの工数が必要となる。端末数が増えるほど管理負荷は高まり、適用漏れや対応遅延も発生しやすい。
ESET PROTECT Completeは、エンドポイントの脆弱性を自動診断し、必要に応じて修正パッチを自動適用するか、利用者にパッチの適用を促すことができる。これにより、Nデイ攻撃につながる未対策期間を短縮し、同時に管理者の負担軽減を図れる。
2)クラウドサンドボックスでゼロデイ攻撃への備えを強化
未知の脆弱性を突くゼロデイ攻撃では、既知のシグネチャでは検知できない未知のマルウェアが用いられる場合が多い。ESET PROTECT Completeのクラウドサンドボックス機能は、社内端末で検知された不審なファイルをクラウド上の隔離環境に自動送信し、振る舞い分析、機械学習モデルによるサンプル比較、最新スキャンエンジンによる異常分析を実施する。
解析結果を管理コンソールで確認し、不審なファイルは管理対象端末からブロックできる。こうした自動解析とブロック機能を活用すれば、未知の脅威への対応を効率化できるため、運用負荷の軽減にもつながる。
3)クラウド型管理ツールで社内外の端末を一元管理
ESET PROTECT Completeは、Webブラウザーから管理ツールにアクセスし、エンドポイントの状態を可視化できることも特長だ。複数拠点に分散する情報資産やリモート端末も一元的に管理しやすい。
また、サーバー構築や保守が不要なため、導入・運用の負担を抑えながら比較的迅速に利用を開始できる。結果として、セキュリティ運用全体の効率化、低コスト化を実現できる。
4)監視体制の高度化にはESET PROTECT MDRも選択肢に
リソースが限られる中堅・中小企業では、セキュリティ製品を導入しても十分に運用ができないケースがある。外部に委託することで、より高度な監視・運用を実現したい場合は、上位ソリューションであるESET PROTECT MDRが有効だ。
同サービスは、24時間365日の監視体制、専門家による分析・運用、インシデント対応支援を提供し、企業のセキュリティ運用を包括的にサポートする。
ゼロデイ攻撃への備えは、脆弱性管理と多層防御から始まる
AI技術の悪用や攻撃者の組織化により、未知の脆弱性を突くゼロデイ攻撃は、今後さらに高速化・巧妙化するだろう。ゼロデイ攻撃を完全に防ぐのは難しいが、未知の脅威に備えた多層防御や、侵入を前提とした迅速な検知・対応により、被害リスクを低減できる。一方、Nデイ攻撃は既知の脆弱性を狙うため、脆弱性管理とパッチ適用の徹底が重要となる。しかし、端末やアプリケーションの増加、クラウドサービスやリモートワークの普及を背景に、これらを手作業で継続するには限界がある。
ESET PROTECT Completeは、脆弱性・パッチ管理、クラウドサンドボックス、クラウド型管理ツールなどの機能を統合した包括的なエンドポイントセキュリティソリューションであり、エンドポイント防御の強化と運用負荷の軽減に役立つ。限られた人員でゼロデイ攻撃やNデイ攻撃に備えるには、対策の自動化と一元管理を可能にするESET PROTECT Completeのようなソリューションを利用することが効果的だ。
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