
本記事はソラコムが提供する「SORACOM公式ブログ」に掲載された「AI時代の「つなぐ」を再定義 ― SORACOM Discovery 2026 CTOキーノートレポート」を再編集したものです。
こんにちは、ソラコムのテクノロジー・エバンジェリスト 松下(ニックネーム: max)です。
2026年7月7日に開催したSORACOM Discovery 2026。そのCTOキーノートでは、「AI時代の『つなぐ』を再定義――真のIoTとリアルワールドAI」をテーマに、ソラコムの技術と新発表を紹介しました。本記事では、当日の講演の流れに沿って内容を振り返ります。
講演の冒頭では、建設現場のロボット、農場を管理するドローン、店舗運営の自動最適化などのユースケースが示されました。IoT を用いた社会変革は遠い未来ではなく、すでにお客様やパートナーが取り組んでいる領域であることを、改めて紹介しました。
センサーやカメラといったデバイスがつながり、現場のデータをAIが理解して判断し、その結果を現実世界のアクションへ戻す。生成AIの進化によって、その循環を実現するための要素が揃いつつあります。そこでソラコムは、自らを「リアルワールドAIプラットフォーム」と位置づけ、Connectivity、Data Platform、Managed AI Agent、SIMという4つの観点から、その裏側を解説しました。

CTOキーノートのスライドは Speaker Deck に掲載しています。合わせてご覧ください
進化を続けるConnectivityの裏側
最初に、最高技術責任者 CTOの安川健太(ニックネーム: kenta)が、SORACOMの通信基盤を紹介しました。AI時代において、通信は「AIの神経網」として、重要性がますます高まっています。

SORACOMでは、セルラーコアネットワークをクラウド前提で再設計しています。セルラー標準のインターフェースを担う「Polaris」、APIなどを提供するマイクロサービス群「Dipper」、運用監視システム「Hubble」といったシステムを組み合わせ、認証、セッション管理、課金、監視を支えています。
接続数に応じた水平スケール、自動復旧、無停止でのノード交換を実現しています。なお、ソラコムグループ全体の契約回線数は、2026年1月に900万を突破しました。
近年の大きな刷新が、コアコンポーネントのRustによるリニューアルです。Linuxカーネルへの依存を減らしつつ、AWS Gravitonにも対応しました。CPU効率は3倍、メモリ使用量は25%削減。ノード数を50~70%減らし、インスタンスの小型化も組み合わせた大規模クラスターの一例では、電力消費を約90%削減できると試算しています。また、特殊要件を持つ一部のVPGを除き、全ノードの移行も完了しています。
こうした基盤の進化と安定化の上で、さらなるサービス開発も進んでいます。その一つが新発表となった「SORACOM Air RTC Gateway」です。VoLTE対応モジュールの標準機能を利用し、専用の通話アプリを実装せずにVoIPプロバイダーやIP PBXへ接続できます。SIM認証と暗号化された通信路を利用でき、設備間の通話、遠隔ケア、コネクテッドカーなど、IoT機器から音声でやり取りしたい用途に適しています。

会場では、VoLTE接続したスマートフォンから内線番号へ発信し、SORACOM Agent(後述)と音声でAIと会話するライブデモも行われました。データ通信に加えて「声」もIoTシステムへ組み込み、AIの業務連携をさらに加速できることを、実際の動作で示した形です。

また、冒頭で解説したクラウドネイティブなモバイルコア技術を、通信事業者へ提供する新たな事業展開も発表しました。ソラコムグループの株式会社ミソラコネクトでは、加入者管理機能をマネージドサービスへ移行する先行導入を進めています。
現場の「今」をAIが扱えるData Platformへ
通信の先にあるのはデータの活用です。続いて登壇したCTO of Japanの松井基勝(ニックネーム: moto)は、IoTで扱うデータを大きく2つに整理しました。SIMがいつ接続・切断したか、どの程度通信したかを示す「プラットフォームデータ」と、センサー値やアプリケーションログなどの「ユーザーデータ」です。どちらも、デバイスやシステムの状態を把握するために欠かせません。

これらを分析する基盤が、2025年に正式提供を開始した「SORACOM Query」です。データパイプラインやストレージ、分析環境を個別に構築することなく、すでに蓄積されたデータを利用できます。データはほぼリアルタイムで更新され、ユーザーコンソールだけでなく、API、CLI、そしてMCP経由でAIからもアクセスできます。
ここでは SORACOM Query の内部構造の解説も行いました。生データをAmazon DynamoDBで保持し、変更イベントをSnowflakeへニアリアルタイムに連携します。多様な形式やデータ量、同時実行、テナントごとのアクセス分離に、両者の特性を組み合わせて対応しています。
今回、現在利用できる使用状況ダッシュボードに加え、保存したクエリやチャートを組み合わせるレポート機能、SORACOM Harvest FilesにアップロードしたCSVファイルをQueryのテーブルとして扱うユーザーテーブルが、今後のロードマップとして紹介されました。
この基盤は、社内のサービス開発やトラブルシューティングにも活用されています。AIを介することで、エンジニアだけでなく、営業やビジネス開発のメンバーにもデータ活用が広がったといいます。重要なのは可視化して終わることではありません。現実世界で今起きていることをAIが理解し、判断や自動化、次のアクションへつなげられる状態にすることです。
IoTの相談から運用まで伴走するSORACOM Agent
データ活用の仕組みまで揃う SORACOM ですが「どのように現場のIoT化・DXを始め、さらに続けていくのか」という大きな課題があります。
シニアソフトウェアエンジニアの河野瑛(ニックネーム: akira)からは、「SORACOM Agent」が紹介されました。IoTの導入相談からデバイス選定、設計、実装、監視、障害調査、レポート作成まで、IoTプロジェクトのライフサイクルを支援するマネージドAIエージェントです。現在はTechnology Previewとして提供されています。

一般的な生成AIとの違いは、公式ドキュメント、公開事例、IoTレシピ、認定デバイスなどを利用し、検証済みの組み合わせや、調達・接続・運用まで考慮した構成を提案する点です。
自然言語で指示するだけで、SORACOM APIを通じて各サービスを利用できる点も特徴です。講演では、IoTゲートウェイへ閉域網経由でリモートアクセスし、ログを確認して障害を調査する例が示されました。
中長期のプロジェクトを支える「Project Memory」は、目的、設計資料、運用手順、障害履歴、API仕様などを整理し、対話や自律実行を通じて更新します。SORACOM FluxからAgentを呼び出し、定期レポート、異常値の調査、ソラカメの映像確認などを運用フローへ組み込むこともできます。すなわち、使えば使うほど「あなたの現場を知っているエージェント」になることを強調しました。
AIエージェントには適切なシステム操作や設定用の権限が必要ですが、セキュリティ環境づくりには知識が求められます。SORACOM Agent の実行権限には、システム変更を伴う操作でユーザー承認を求めるHuman in the Loopと、自律実行時の最小権限を組み合わせます。実行環境を隔離し、原則としてインターネットアクセスを防ぐなど、セキュリティを前提に設計されています。

あわせて、公式ドキュメントをAIエージェントから検索・参照できる「SORACOM Knowledge MCPサーバー」も発表されました。セッション当日の2026年7月7日に提供を開始し、7月10日に詳細が公開されています。
さらに、業務支援AIボット「Wisora」とSORACOM Agentの連携も紹介されました。Wisoraが利用者との対話やアクセス制御を担い、SORACOM Agentが現場データを取得します。「今日、オフィスは混んでいるか」という質問に対し、ソラカメの映像を確認して回答する例を通じて、社内文書などの静的な知識と、現場のリアルタイムデータを組み合わせる姿が示されました。
AI時代の信頼の起点としてSIMを再発見する
Chief Engineering Officerの片山暁雄(ニックネーム: yaman)は、SIMをAI時代の「Root of Trust」、すなわち信頼の起点として捉え直しました。

AIがデバイスやロボットを介して現実世界へ働きかけるほど、接続しているデバイスは正しいのか、通信相手や取得したデータを信頼できるのかが重要になります。SIMは認証鍵と固有IDを安全に保持し、高い耐タンパー性を備えます。このSIM認証を起点に、通信やアプリケーションへのアクセスをクラウド側で制御できます。
講演では、製造・出荷時、ネットワーク経由、データやAI、物理的な侵害、通信・クラウド基盤という5つの攻撃場面を整理しました。製造時にはSORACOM Kryptonによるゼロタッチ設定、外部からのアクセスには必要な時だけSORACOM Napterを使う方法が紹介されました。
新発表のVPGトラフィックフィルタリングでは、IPアドレスだけでなくFQDN、ポート、プロトコルを条件として通信先を制限できます。許可したクラウドやAPIにだけ接続させることで、デバイスから外部へ向かう不要な通信のリスクを抑えます。

侵害が疑われる場合は、SORACOM Queryで通信状況を確認し、SORACOM Peekでパケットを取得し、必要に応じて通信を遮断する。その調査や対応をSORACOM Agentと進める構成も示されました。個別機能を組み合わせ、検知から調査、制御までを一連の流れとして扱う考え方です。
「つなぐ」の先にあるリアルワールドAI
今回のキーノートで語られた「つなぐ」は、モノをネットワークへ接続することだけではありません。
Connectivityによってデバイスを安全かつ安定してつなぎ、Data Platformによって現場の「今」をAIが利用できる形にする。Managed AI Agentがデータを理解し、人と協働しながら判断やアクションへつなげる。そしてSIMを信頼の起点として、その一連の流れを守る。この循環が、ソラコムの目指すリアルワールドAIプラットフォームです。
SORACOMは、技術を安全に社会へ適用するための敷居を下げ、お客様やパートナーの皆さまとともに、「世界中のヒトとモノが共鳴する社会――A World That Works Together」の実現を目指していきます。

発表内容を詳しく知りたい方へ
今回紹介したサービスや新機能の詳細は、以下の関連情報からご確認いただけます。
SORACOM AgentやSORACOM Air RTC Gatewayをはじめ、IoTとAIを組み合わせたシステムの構築・運用をご検討の方は、ソラコムへお問い合わせください。構想段階の課題や、具体的な活用方法についてもご相談いただけます。
― ソラコム松下(max)
関連情報
- CTO キーノート スライド (Speaker Deck)
- SORACOM Air RTC Gateway
- 通信事業者向けモバイルコア技術の提供
- SORACOM Agent
- SORACOM Knowledge MCPサーバー
- VPGトラフィックフィルタリング
- SORACOM Query
投稿 AI時代の「つなぐ」を再定義 ― SORACOM Discovery 2026 CTOキーノートレポート は SORACOM公式ブログ に最初に表示されました。
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