お金ズボラさんのための〝老後トク〟するお金の話③

必ず知っておきたい!老後のお金に差が付く年金の増やし方

文●杉山幸恵

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 「どうせ決まった額しかもらえないんでしょ?」「払っていない期間があったから少ないけどしょうがない」と、自身の年金受給額について諦めていないだろうか。実はミドルエイジからでも、自分の行動ひとつで将来もらえる年金額を〝上乗せ〟することができるのだ。しかし、これらの制度の多くは自分から情報をつかんで、行動に移さない限り、国も自治体も教えてはくれない。そこで最終回となる今回は、ファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さんに、お金ズボラさんこそ知っておきたい、今から〝年金を増やす〟方法を伝授してもらう。

追納は年齢的にほぼ不可能。国民年金の空白部分は任意加入でカバーする

 「年金を増やすために、まずやるべきことは〝ねんきん定期便で自分の年金記録を確認すること〟」と、塚越さん。特に女性は学生時代のほか、結婚・出産を機に第3号(扶養内)と第2号(厚生年金)を行き来していたり、手続きの漏れがあったりして、年金記録に空白が生じやすい傾向にあるという。

 「国民年金がどれくらい欠けているのかを確認してください。実は、国民年金が満額になっている人はそれほど多くありません。ずっと会社員や公務員として勤めてきた方は別ですが、特に女性は働き方が変わりやすく、国民年金に穴が空いているケースが少なくないんです。

 しかしながら、昔の未納分を今から全部埋められるかというと、そう簡単ではありません。学生時代の納付特例や猶予分を後から払える〝追納〟には期限があり、基本的には10年。未納分は2年です。ミドルエイジになると、すでに期限切れで追納できないケースがほとんどのはず。

 そこで空白を後からカバーできるのが〝任意加入〟という、受給額を満額に近づけることができる制度です。これは、60歳以降に国民年金が足りていない人が、あらためて加入して保険料を払う仕組み。足りない月数分だけを、60歳から上乗せして払っていくイメージですね。一括ではなく、月々の支払いも可能で、満額(480か月)に達した時点で終了となります。

 ただし、任意加入ができるのは、60歳以降に〝年金制度に加入していない人〟だけ。60歳以降も働き続け、厚生年金に加入している人は対象外です。つまり60歳でリタイアしている人や、もともと第3号被保険者だった人、自営業や個人事業主などの第1号が対象になります」

 60歳以降も働きながら厚生年金に加入している人は、任意加入はできないが、その分、厚生年金を払い続けることで年金自体は増えていく。厳密には国民年金を埋めているわけではないが、結果として将来の年金額は増える、という考え方だ。

 「また会社はリタイアしたけれど、パートなどで働いていて厚生年金に入っていない場合は、任意加入が可能です。任意加入できる期間は、国民年金が満額(480か月)になるまで、かつ65歳まで。自身で年金の受給額を増やす確実な方法なので、まずは自身の欠けている部分を確かめてみてください」

 この任意加入をするに当たって、気を付けなければならないのが確定申告だ。それまで会社員だった場合、うっかりと申請を忘れてしまう人も多いとか。

 「任意加入をして国民年金の保険料を払ったら、必ず確定申告をして、社会保険料控除を使ってください。これをしないと、本当にもったいないんです。払うはずの税金がきちんと減るので、手取りが変わってきます。

 特に、結婚している女性の場合で、夫の所得が高いケースでは、夫が保険料を払えば、その分、夫の節税になります。ここも意外と忘れられがちなポイント。年金額を将来増やす話ではありませんが、〝今の手取りを増やす〟という意味では、確実に損をしないための方法です。知らないまま何もしないで終わってしまうと、年間20万円近く払っている分が、そのまま節税に使われない。これはかなり大きいですよね」

今からでも遅くない、厚生年金に加入するのが年金を増やすベストな手段

 厚生年金のある第2号被保険者と比べて、受給額の少ない第1号や第3号被保険者の場合、ミドルエイジから、さらには60歳以降からでも、厚生年金に入るのが年金を増やす方法として実は一番手っ取り早い選択だという。

 「最近は、週20時間程度の勤務でも厚生年金に加入できる職場が増えてきていて、いわば〝パートに毛が生えたくらい〟の働き方でも対象になります。子育てがひと段落している世代であれば、週20時間くらいなら働ける、という人も多いはずです。

 『50歳を過ぎて今さら…』と思う必要はまったくありません。厚生年金に入ることで、老後の年金が増えるだけでなく、現役時代の社会保障も手厚くなります。無理のない働き方で、社会保障と年金の両方を底上げできる。そう考えると、60歳以降に厚生年金に入るという選択は、十分に現実的で、前向きな一手だと言えます。

 フリーランスなどで長年、国民年金だけだった人でも、50代になってから週20時間ほど働いて厚生年金に入るだけで、将来の年金にはしっかり差が出てきます。厚生年金は、たとえ給与がそれほど高くなくても加入でき、国民年金を全額自己負担で払うより、結果的にお得になるケースも少なくありません。

 今の時代、70歳くらいまで働くというのも、現実的な選択肢になってきています。ただ、〝60歳までの働き方がそのまま延長される〟と思うと、気が重くなる人もいるかもしれません。でも、これからは働き方自体がもっと柔軟になっていく。無理をせず、ゆるやかに、細く長く働くほうが、実は一番ゆとりのある老後につながるのではないかと思います。

 そのための土台を作れるのが、40・50代のミドルエイジ。細く長く働くために何ができるのかを考え、動き出せるのが、まさにこの世代なのではないでしょうか」

付加年金や個人年金基金など、フリーランス向けの年金に上乗せする制度も

 第1号被保険者の場合、ほかにも年金を増やしたり、老後に備えたりするための制度がいくつかある。

 「まずは付加年金という制度です。ひと月400円の保険料を国民年金保険料に上乗せして納付すると、老後の基礎年金に月200円×納付月数分の終身年金が上乗せされるという仕組み。単純計算すると、だいたい2年で元が取れるので、効率だけを見ると悪くはありません。第1号被保険者に加えて任意加入被保険者も納付できます。

 知っておくべきは、付加年金がインフレに対応していないということ。公的年金そのものは、物価や賃金の上昇にある程度連動しますが、付加年金の〝400円払って200円増える〟という関係はずっと固定です。40年前の200円と、40年後の200円では価値が違いますよね。そういう意味では、物価に連動しないところが付加年金の弱さでもあります。

 それと、もう一つ大事な注意点があります。付加年金に加入すると、iDeCoの掛金上限がその分減るんです。iDeCoは月68,000円まで掛けられますが、〝付加年金込みで68,000円〟扱いになります。掛金は1,000円単位なので、付加年金に400円払うと、iDeCoは実質67,000円までしかできなくなる。このあたりは、知らずに始めると『あれ?』となりやすいポイントですね」

 ほかにも生涯受け取る終身年金を増やすための〝国民年金基金〟、個人事業主や小さい会社の経営者の退職金としても使える〝小規模企業共済〟を検討してみるのもいいだろう。いずれの制度も掛金が全額所得控除になるので、節税しながら、老後に向けた資金準備ができる仕組みだ。

「国民年金基金は、いわば〝年金の上乗せ制度〟です。加入した年齢によって、毎月の掛金と将来どれくらい増えるかが最初から固定されます。ですので、ミドルエイジから加入しても、正直そこまで大きくは増えにくい。背景には、今の時代が低金利という事情もあって、国民年金基金で大きくお金を増やすのは難しいという現実があります。

 ただし、国民年金基金の大きな強みは〝終身受け取り〟を選べることです。公的年金と同じで、一生涯受け取れる。増え方は控えめでも、長生きすればするほど受け取りが続くので、長生きリスクに備えやすい制度だと言えます。

 注意点として、国民年金基金もiDeCoの掛金枠を使ってしまいます。自分で運用できるという点では、iDeCoのほうが自由度は高いので、人によってはこちらを活用するほうがいいかもしれません。また国民年金基金と付加年金の併用もできないのでご注意を」

民間の保険商品はメリットとデメリットを理解したうえで検討を

 公的な上乗せ以外に民間の個人年金保険などを検討している人もいるはず。しかしながら、「今の低金利の時代に新しく加入する一般的な円建て個人年金は、正直なところ〝ほとんど増えない〟というのが現実」と塚越さん。インフレに弱いため、物価が上がれば実質的な価値は目減りしてしまうとのことなのだ。

 「個人年金保険のよさは、〝将来受け取れる金額があらかじめ分かる〟〝元本割れしない商品が多い〟〝強制的に積み立てられる〟ということ。ですから、定期預金に少し保険機能がついたものと考えるくらいがいいでしょう。

 注意したいのは、過去の〝お宝保険〟と同じ感覚で今から入らないこと。ミドルエイジには、若いころに高金利時代の個人年金に加入していて、満期時に倍近くになるような人もいますが、今の個人年金は別物です。

 すでに加入している〝お宝保険〟は、基本的には解約せず大切に持っておくのがベター。商品によっては、60歳受け取りを65歳まで据え置くことで、さらに有利になるケースもあるので、〝いつから受け取れるのか〟は早めに確認しておくと老後設計がしやすくなります」

 投資型の変額保険・変額個人年金もあるが、今はNISAやiDeCoなど、低コストでシンプルに運用できる制度が整っている時代。そのため、「あえて保険で投資をする必要があるのか?」と、よく考える必要がある。

 「認知症などに備えて指定代理請求人を設定できるといった、保険ならではのメリットもあります。こうした理由から、あえて保険で資産形成をする人もいます。

 結論としては、〝保険で増やすのはダメ〟いう単純な話ではなく、それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、複数の選択肢から目的に合ったものを選ぶことが大切、ということですね」

 最後に「公的年金はすごく〝働き方〟と結びついている制度なんですよね。だからこそ、年金は単体で考えるというよりも、働き方とセットで考えることがとても大切」と塚越さん。どうしても将来の不安と結びつきがちな老後のお金の話。でも、公的保障や年金などの制度をしっかり把握して、対策を練っていくことで、その不安が一つずつ解消されていくのではないだろうか。

保険や金融商品を取り扱わない独立系ファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さん。年間200件の共働きの家計相談を行う傍ら、運用経験の全くない女性向けの「確定拠出年金・NISA」のほか、「公的年金・働き方」に関するセミナーなどを多数開催

2025年6月に発行された最新著書「ファイナンシャルプランナーのお金の知識『暮らしでトクする部分だけ』まとめました」(KADOKAWA)。FP1級の知識から〝暮らしのトク〟に直結する部分だけ抜き出して、誰にでもわかるよう優しくまとめた一冊だ

Profile:塚越菜々子

つかごしななこ/1984年、神奈川県生まれ。保険や金融商品を取り扱わない独立系ファイナンシャルプランナー。株式会社KANATTA代表。税理士事務所に15年間勤務し、500件を超える企業や個人の財務経理に携わる。2017年に独立後、「お金の悩みから解放され、自分の人生を思い通りに生きるサポートを」をモットーに、これまでに2800人以上の家計改善や資産運用を支援。「専門的なお金の知識をわかりやすく」をテーマにSNS発信にも力を入れ、「FPナナコ」名義で活動。YouTube登録者数は11万人を超える。多数のメディア出演があるほか、『書けば貯まる! 共働きにピッタリな一生モノの家計管理』(翔泳社)、『お金の不安をこの先ずーっとなくすために今できる46のこと』(扶桑社)、『「扶養の壁」に悩む人が働き損にならないための38のヒント』(東京ニュース通信社)などの著書も。

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