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柳谷智宣の「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」 第46回

以前の指示をすぐ忘れるChatGPT あらかじめ必要なデータを登録しておく「プロジェクト」機能活用で手間を省こう

2026年02月24日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第46回はChatGPTのプロジェクト機能を使って、毎回繰り返す手間を削減方法を解説する。

案件ごとのキャビネットを用意するイメージのプロジェクト機能

 「特定の業務に関する資料を毎回アップロードするのが面倒」や「以前の指示内容を忘れてしまっており、再度プロンプトを入力し直す手間が発生する」といった悩みを抱えている人は多いだろう。

 ChatGPTを業務で使っていると、毎回同じようなプロンプトを入力することがある。チャット欄は基本的に「使い捨て」の場であり、新しいチャットを立ち上げるたびにAIは「記憶喪失」の状態からスタートする。毎回ゼロからコンテキストを説明し、同じ資料を読み込ませる作業は、生産性を落とすボトルネックとなってしまう。そんな時に便利なのが、「プロジェクト」機能。一言で言えば「特定のやりとりを行える独立したChatGPT環境」だ。

 プロジェクト機能は、案件ごとに専用の「キャビネット」を用意するイメージに近い。そのキャビネットの中には、必要な資料があらかじめ整理されており、AIは常にその資料を参照しながら対話を行うことができる。

 早速利用してみよう。ちなみに、リリース当初は有料プラン向けの機能だったが、現在は無料プランでも利用できるようになっている。

 まずは、左側のメニューから「プロジェクトを新規作成」を開き、プロジェクト名を付けて、「プロジェクトを作成する」をクリックする。もし、プロジェクトのやりとりを他のチャットから独立させたい場合は、設定アイコンから切り替えられる。この設定は作成時にしか行えないので注意すること。

 プライベートでも使っているChatGPTで、万が一にもプロジェクトの入出力に他のやり取りの影響が出ては困る、という人は「プロジェクトのみ」にしておくと安心だ。通常は「デフォルト」のままでいいだろう。

新規プロジェクトを作成する

設定アイコンでメモリ参照のオンオフを切り替えられる

あらかじめファイルを追加して実用度を高める

 作成したプロジェクトを開いたら、まずは「ファイルを追加する」をクリックすると、肝となる「プロジェクト設定」が開く。ここでは、「指示」と参照する「ファイル」を登録する。

 今回は、社内の問い合わせ窓口を作ってみる。就業規則や在宅勤務運用内規などの書類をアップロードし、社員からの一時問い合わせ先として利用するものだ。総務部門の手間は大きく削減できるうえ、社員もAIなら気軽に相談できるのでWin-Winだ。

 しかし、カチカチの業務規則からは、人間のようなフレキシブルな回答が得られず、グレーゾーンの判断ができないことが多い。そんな時は、過去のトラブル対応ログや組織内の暗黙知をテキスト化したものも一緒に登録しておくと、ぐっと実用度が高まる。

○トラブル対応ログの例

事案ID 2024-001
発生日:2024/01/18 / 発覚日:2024/01/19
関係者:制作部(ディレクター)/情シス/管理部

【概要】
納品直前の案件で、ディレクターが自宅の私物PCからクラウドストレージにアクセスし、デザイン素材一式(顧客ロゴ含む)を一時的にダウンロードして作業した。社用端末は社内に置いたままで、VPN経由の接続ができない状態だった。本人は『フォントの差し替えだけで済む』と判断したが、私物環境には家族共用アカウントが残っており、同期設定次第では第三者端末へ広がる余地があった。翌日、顧客から『素材が外部に出ていないか』との確認が入り、社内で発覚。

【論点】
在宅勤務内規では私物端末利用を禁止しているが、納期逼迫・緊急性があった。顧客素材はNDA対象で、社外持ち出しの許容範囲が曖昧になりがち。『一時的』でもダウンロードした時点で統制外となるため、再発時の説明責任が問われる。同時に、現場は“止めると納期が落ちる”ため、代替手段がないと同様の判断が再発する。

【判断】
アウト(規程違反)。ただし本人の故意性は低く、悪用の痕跡なし。

【根拠】
就業規則(服務規律:会社の信用を損なう行為の禁止)/情報セキュリティ運用方針(端末・媒体管理)/在宅勤務運用内規(会社指定端末・VPN必須、私物端末禁止)。

【対応】
当該私物PCについて、本人同意のもとで簡易調査(残存ファイル、同期設定、共有リンク履歴)を実施。当該素材が外部共有されていないこと、クラウド側のアクセスが本人IPのみであることを確認。顧客には事実関係と再発防止策(社用端末の持ち帰りルール、緊急時連絡フロー)を説明し、謝罪。本人には注意指導(文書)を行い、在宅勤務の運用理解テストを受験させた。

【再発防止】
緊急時の『社用端末持ち帰り』を標準化し、置き忘れ防止チェックリストを導入。VPN障害時の代替として、VDI(仮想デスクトップ)を試験導入し、私物端末でもデータを残さず作業できる仕組みを整備。また、納期直前に“社内に端末がない”事態を防ぐため、制作部内で交代持ち帰りの当番制を開始。

【学び】
『急ぎだから』が例外理由になりやすいが、例外が常態化すると監査で崩れる。判断は『端末統制』と『データの残存』を軸に行い、やむを得ない場合は“残さない”代替策を先に用意しておく。

○暗黙知の例

ルールID COM-01
適用範囲:全社(社内チャット・メール・会議)

【背景】
口頭やチャットの言い回しで摩擦が増え、炎上案件で人格批判に発展した事例があった。議論の場と連絡の場が混ざると感情が乗りやすい。

【原則】
議論はチケット(課題管理)に集約し、チャットは『連絡・確認・要点共有』に限定する。相手を評価する言葉ではなく、事実・影響・次の行動で話す。

【例外】
緊急(障害対応)でチケットが間に合わない場合はチャットで開始し、収束後24時間以内にチケットへ要点を転記する。承認者:当番PMまたは当番エンジニア。

【NG例】
深夜に長文で批判する/全員が見える場で個人を詰める/『使えない』『常識がない』など人格評価を含める/スクショを貼って晒す。

【セーフに寄せる】
言いにくい指摘は1on1か小さなグループで実施し、議事録は事実のみ。『お願い』ではなく『目的→制約→提案』の順で伝える。

【関連】
過去トラブル:2025-021(チャット炎上)/ハラスメント方針/就業規則(職場秩序)

 「指示」欄には情報を元に、ChatGPTがどのような対応をすればいいか入力する。例えば今回であれば、資料を元に、アウト・セーフを判定し、根拠や前例、取るべき対応などを説明するようにした。ここを作り込むと、その後の運用が楽になるのでこだわることをおすすめする。

○指示
あなたは社内規程・内規・暗黙ルール・過去トラブル対応ログを参照して判断する社内アドバイザーです。
次の文書を優先的に参照して、結論と根拠を示してください:就業規則/在宅勤務運用内規/暗黙ルール集/過去トラブル対応ログ。
もし文書同士に矛盾や抜けがある場合は、それも明示してください(「矛盾ポイント」「どちらを優先するのが現実的か」)。

出力順で:
1) 判定(セーフ/グレー/アウト)+一言理由、もしくは結論+簡潔な理由
2) 根拠(参照した文書名+該当ルール名や条文の要点を箇条書きで3点まで)
3) 前例(過去トラブル対応ログの該当があれば:事案ID+要約+今回との違い)
4) 取るべき対応(今すぐ/今日中/今週中)
5) セーフに寄せる代替案(2案)
6) 再発防止(運用・テンプレ・チェックリストの提案)

不足情報がある場合は、追加質問は最大3つまでにしてください。

「プロジェクト設定」を開く

指示を入力する

資料ファイルをドラッグ&ドロップで登録する

プロジェクト作成後は質問を投げるだけでOK

 設定が終わったら、プロジェクトに質問してみよう。まずは、就業中に1時間外出した件が大丈夫かどうか心配になった人が相談してみた、と想定。ChatGPTは、勝手に判断せず、登録された資料を検索し始める。

 在宅勤務運用内規からは30分以上の離席は休憩とする、暗黙ルールからは事後すぐに申告する、過去トラブル対応ログからは、同様の事例で「未記録はアウト」という情報が抽出された。

 総合判定はアウトよりのグレーで、今すぐとるべき対応や再発防止策など、多角的に回答してくれている。人間でもここまで丁寧に対応してくれる人は少ないのではないだろうか。

○プロンプト
在宅勤務中に子どもの迎えで1時間外出しました。チームにはチャットで「少し離席します」とだけ投稿し、勤怠には中抜け記録を入れていません。その後は帰宅して通常どおり業務を続け、成果物も出しています。OKですか?

 次は、深夜に障害対応をした翌朝の寝坊遅刻について聞いてみる。在宅勤務運用内規では事前許可が必須となっているが、過去ログ/暗黙ルールでは、緊急時は事後に実態を確定し、後から承認・休息調整する運用をしていることが判明。上司にどのように報告すればいいか、をまとめてくれた。

 OK/NGだけでなく、どんな理由でどうすればいいかまで教えてくれるのはとても助かるだろう。情報も持たず、感情的にぶつかるよりもずっと建設的だ。

○プロンプト
深夜に障害対応をして、翌朝に寝坊して遅刻しました。緊急対応なので事前の残業申請はできておらず、対応ログはチャットに残っています。遅刻は遅刻として処理すべきですか?救済や調整の余地があるなら、条件と手続きを示してください。

 もちろん総務部以外にも、営業部であれば価格表や値引き条件、言ってはいけない確約、過去の炎上交渉、想定問答テンプレを入れておき、商談前に顧客条件を貼るだけで「提案の刺さり所」と「リスク回避の言い回し」を短時間で整えられるようになる。制作部であれば、仕様変更の合意手順、受注前着手の禁止ライン、レビュー必須条件、誤送付や公開リンク事故の再発防止策を案件テンプレとして持たせ、進行中のチケットやログを追記していくことで、属人化しがちな判断と品質管理をプロジェクト内に定着させるような活用もありだろう。

 一度プロジェクトを作成してしまえば、あとは質問を投げるだけなのでとても便利。無料プランでも試せるのでぜひ活用してほしい。

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