第593回 SORACOM公式ブログ

ソラコム公式ブログ

「SGP.32」で変わるIoT回線管理―運用負荷を減らし、“回線を選べる”世界をどう実現するのか

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 本記事はソラコムが提供する「SORACOM公式ブログ」に掲載された「「SGP.32」で変わるIoT回線管理―運用負荷を減らし、“回線を選べる”世界をどう実現するのか」を再編集したものです。

2025年7月に開催された株式会社ソラコムの年次カンファレンス、SORACOM Discovery 2025で、セッション「SGP.32のニーズと可能性:運用負荷を減らし、新しいeSIM管理を実現する仕組み」を実施しました。本サマリーでは、セッションで語られた主要なポイントに焦点を当ててご紹介します。

グローバル展開で顕在化するIoT回線管理の課題

IoTデバイスやサービスを複数の国・地域へ展開していくと、通信回線に関する課題は一気に複雑になります。ある国ではローミング回線で問題なくサービス提供できていても、別の国では法律上の規制により長期間のローミング(パーマネントローミング)が認められず、現地キャリア回線を利用しなければならないケースもあります。

こうした規制の課題に加え、自動車向けのように音声通信や大容量通信が必要になる用途もあり、単一キャリアの回線だけでは要件を満たせない場面が増えています。また、サービス運用を続ける中で、新機能の追加や法規制の変更などにより通信要件が変化することも珍しくありません。

さらに、通信障害が発生した場合でも、可能な限りサービスを止めずに継続したいというニーズは年々高まっています。こうした背景から「複数のキャリア回線を柔軟に組み合わせ、状況に応じて切り替えられる仕組み」が不可欠になっているとソラコムでは考えています。

その解決策の一つとして位置づけているのが「SGP.32」です。

SORACOM Connectivity Hypervisorが目指す世界

SGP.32への取り組みとあわせて、私たちは「SORACOM Connectivity Hypervisor」という新しい機能を発表しました。これは、SGP.32対応SIMと、SIMプロファイルの追加・切り替えをオーケストレーションするプラットフォーム機能を組み合わせ、IoT回線をより柔軟に管理するための仕組みです。

あえて「ハイパーバイザー」という名称を用いたのは、サーバ仮想化の世界で起きた変化をIoT通信でも実現したいという思いがあるからです。物理サーバーの上にハイパーバイザー層があることで、仮想マシンを自由に追加・削除できるようになったように、通信においても、特定の回線やキャリアに縛られない柔軟性を提供したいと考えています。

SORACOMのプラットフォームが通信における“ハイパーバイザー”の役割を担うことで、用途や地域に応じて最適な回線を選び、組み立てられる世界を目指しています。

SGP.32を理解するうえで欠かせないのが、いくつかの基本用語です。

プロファイルとは、モバイルネットワークへ接続するために必要な契約情報のことを指します。このプロファイルを複数格納できるSIMがeUICCです。

そして、eUICC上のプロファイルを遠隔から追加・切り替え・削除する仕組みをRSP(Remote SIM Provisioning)と呼びます。SGP.32は、このRSPをIoT用途に最適化した技術仕様です。

SGP.32とは何か―従来規格との違い

SGP.32はモバイル通信業界の標準化団体「GSMA」によって策定された、IoT向けRSPの技術標準です。これまでにもSGP.02やSGP.22といった規格が存在し、すでに商用利用されてきましたが、IoT用途という観点ではそれぞれに課題がありました。

SGP.02はリモートプロビジョニングの元祖としてM2M向けとして広く使われてきた規格で、ネットワーク側からプロファイルを適用するPush方式を採用しています。一方で、キャリア間インテグレーションの複雑さや、ユーザー自身が自由なタイミングでプロファイルを管理できない点が課題でした。

SGP.22はコンシューマーデバイス向けに普及している規格で、QRコード読み取りなどによるPull方式を採用しています。ソラコムでは「eSIM Profile Order」として提供しています。アーキテクチャはシンプルで、スマートフォンのような人が操作するIoTデバイスに適しています。一方、無人運用を想定しているIoTデバイスでは、一台一台プロファイル導入作業が発生する課題があります。

SGP.32はこれらを基に、無人運用向けIoTに適した形「Push方式・シンプルアーキテクチャ」へと最適化した規格です。

IoT運用を支える信頼性機能:RollbackとFallback

SGP.32は 人手を介さないことを目指しているため、運用リスクや回線管理の信頼性を高めるための仕組みが標準として組み込まれています。

  • Rollbackは、プロファイル切り替えに失敗した場合に、自動的に元のプロファイルへ戻す仕組みです。
  • Fallbackは、あらかじめバックアップ用プロファイルを用意しておき、通信障害が発生した際に自動で切り替える仕組みです。

これらの仕組みにより、IoTサービスを止めないための設計を、規格レベルで実現できます。

サブスクリプションコンテナとの関係と利用シーン

SORACOMでは、2020年から独自機能として「サブスクリプションコンテナ」を提供してきました。これは、SORACOMのプロファイル内で複数の通信プランを組み合わせ、カバレッジ拡張や料金最適化を行う仕組みです。

SGP.32は、このサブスクリプションコンテナを置き換えるものではありません。SORACOMのプロファイルに加えて、他キャリアのプロファイルも扱えるようにすることで、これまで提供できていなかった領域を補完・拡張するものです。切り替え先が他キャリアであっても、SORACOMがインテグレーションすることで、引き続きユーザーコンソールから管理できます。

利用例としては、自動車向け回線管理が挙げられます。出荷時はSORACOM回線を利用し、法規制変更時には現地キャリアへ切り替え、さらに中古市場へ移行する際には不要なプロファイルを削除するといった、ライフサイクル全体を通じた管理が可能になります。また、異なるキャリアを用いた冗長構成により、障害時にも通信を継続できます。

まとめ

SGP.32により、SORACOMだけでなくさまざまなキャリアの回線を組み合わせたIoT通信管理が現実のものになります。私たちは、Connectivity Hypervisorの提供を通じて、お客様自身が用途や状況に応じて回線を選び、柔軟に運用できる、より開かれたIoTエコシステムを実現していきます。

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