フォーティネット、サイバーセキュリティトレーニングで退役軍人の社会復帰を支援

文●フォーティネットジャパン 編集●ASCII

提供: フォーティネットジャパン

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本記事はフォーティネットジャパンが提供する「FORTINETブログ」に掲載された「軍務からサイバーセキュリティへの道のり」を再編集したものです。

 グローバルな接続性が拡大するのに伴い、熟練のサイバーセキュリティ専門家の需要も拡大しています。一方で、リーダーたちは常に、有能な人材を確保し定着させるという課題に直面しています。「フォーティネットサイバーセキュリティスキルギャップレポート 2025年版」によると、組織の67%で、サイバーセキュリティ専門家の不足が続いた結果、セキュリティ侵害のリスクが増加していることを示しています。

 心強いことに、新たな人材を確保するためクリエイティブな取り組みを行っている組織が増えています。同レポートによると、ITの意思決定者の約4分の3は、主に女性を対象としたプログラムを実施しており、57%は、マイノリティを対象としたプログラムを実施していると報告しています。一方で、退役軍人は、軍務を通じて獲得した安全保障、規律、リーダーシップの貴重な経験をもたらすにもかかわらず、退役軍人向けの取り組みを行っていたのはわずか45%でした。

 軍務から民間生活に移ることは大きな変化であり、新しいスキルを習得し、新しいコミュニティを形成し、新たな機会を模索することが求められます。ブリティッシュコロンビア工科大学(BCIT)のマイクロ資格「Industrial Control Systems Cybersecurity(産業用制御システムのサイバーセキュリティ)」の集中プログラムでは、退役軍人をサポートし、このようなギャップを埋める手助けをしています。1週間の集中プログラムは、フォーティネットがプログラムのスポンサーとして支援し、BCIT、Cyber Catalyst、およびTech Vets Canadaと連携して提供されており、参加者は、重要インフラストラクチャの保護における実践的な経験を積むことができます。

 フォーティネットは貢献の一環として2つのワークショップを提供しており、これらは日常生活における実践的なスキルが身につけられるよう設計されています。退役軍人は、ネットワークのセグメンテーション、アクセス制御、および脅威検知に特化したラボを通して、自身の軍務での訓練が、カナダにおけるデジタル最前線を守る使命に直接貢献できることを知ります。

退役軍人に提供される実践的な学習機会の詳細については、こちらのショートビデオをご視聴ください。

 このイニシアチブは、技術的なトレーニングだけでなく、サイバーセキュリティのレジリエンスと退役軍人の社会復帰の両方に対する国家的な取り組みです。BCITのRoger Gale氏は次のように述べています。「退役軍人は独自の強みを備えており、リーダーシップ、規律、チームワークなどに加え、ハイレベルなセキュリティ・クリアランス(機密情報取扱い許可)を持っています。このような属性は、特に信用や信頼性、対応力が必須となる重要インフラストラクチャ分野では、サイバーセキュリティの役割において非常に優れた人材です」

 また、Cyber CatalystのPat Shaw氏は次のように述べています。「Cyber CatalystとTech Vets Canadaは、サイバー脅威との戦いにおいて、カナダの退役軍人へのトレーニングと能力向上を継続的に支援し続けるフォーティネットの取り組みに非常に感謝しています。退役軍人は、経験や規律、任務優先の思考に基づいた類いまれな戦略的なマインドセットを、ネットワークおよびOTセキュリティにもたらします」

 本ブログでは、このブートキャンプを修了した退役軍人のBianca Caouette氏とDaniel Hruska氏の2名にインタビューし、学習の動機、およびこの経験を通してサイバーセキュリティ分野でどのような未来を形作るかについて、直接話を伺いました。

軍を離れた背景

 Daniel Hruska氏によると、軍を離れる上で最も困難だった事は、新たなキャリアへの適応だけでなく、派遣任務中に築いた仲間との絆に別れを告げることでした。

 また、次のように説明します。「最大の課題は、軍で築いた第2の家族のような親しい友人関係から離れることでした。キャリア的には、最初は枠組みがないことに衝撃を受けました。軍では分単位で時間が守られていましたから、大学や民間の仕事は終わりが見えないと感じました」

 Bianca Caouette氏はまだ移行期間中であり、海軍予備員として従事しながら、民間生活への準備を進めています。彼女にとって、最も大きなハードルは自信を持つことでした。

 彼女は次のように述べています。「テクノロジーの世界は、私が軍で受けた訓練とは全く異なります。私のコンフォートゾーンを超えていますが、この挑戦こそが私が初めてサイバーセキュリティに惹かれた理由です」

なぜサイバーセキュリティなのか?

 退役軍人である2人にとって、サイバーセキュリティは別の立場で服務を継続する手段であり、キャリアパス以上のものが得られました。

 元機械化歩兵の兵士で、軽装甲車両LAV VIの車長であるDaniel Hruska氏が初めて興味を持ったのは、ラトビアでの派遣任務中でした。

「私は、戦場で身につけた偵察やインテリジェンス、攻防戦略などの多くの概念が、サイバーセキュリティに直接応用されていると気づきました。民間人として、引き続き防衛活動に貢献する手段を与えてくれました」

 Bianca Caouette氏にとって、これは将来のキャリアと、新米の親としてのライフスタイルを両立させる決断でした。
彼女は次のように述べています。「リモートワークができ、挑戦をしながら長期的に成長できるキャリアを希望していました」

転換可能なスキル

 退役軍人は、独自の強みである細部への注意、適応力、忍耐力、および明確なコミュニケーションなどをサイバーセキュリティ分野にもたらします。こうした資質が成功の助けになった、とDaniel Hruska氏とBianca Caouette氏は、次のように述べています。

Bianca Caouette氏:「忍耐力は、私が軍で得た最も価値のあるスキルです。どんな困難な状況下でも、絶対に諦めないことを教えてくれます」
Daniel Hruska氏:「精神的な忍耐力も同様に重要です。軍で得たストレス管理スキルは、非常に貴重だと実感しました。サイバーセキュリティは要求の高い分野なので、プレッシャー下で冷静さを保つ能力が違いを生みます」

 一方で、すべてのスキルを簡単に職務経歴として応用できるわけではありません。2人は次のように語ります。「プロとして、謙虚かつ冷静であることが当たり前だった環境で長年過ごしたため、面接での「自己アピール」や民間に適した履歴書を作成する方法を学ぶことは困難でした」

ブートキャンプの経験

 Daniel Hruska氏とBianca Caouette氏は、BCITのブートキャンプが転機だったと述べています。このブートキャンプは、ハンズオン学習、ピアサポート、およびメンタリングが組み合わされており、軍と民間生活とのギャップを埋めるサポートとなりました。

 Bianca Caouette氏はこの経験について次のように語ります。「多くの扉が開かれました。ハンズオンラボを実施することで、多くのことが繋がりました。ネットワーキングや業界の専門家との出会いを通じて、たとえ底辺からのスタートでも、サイバーセキュリティ分野における自分の居場所が見つかるという自信が得られました」

 Daniel Hruska氏にとって、この経験は授業以上のものでした。「ブートキャンプでは、退役軍人のネットワークやメンターとの出会いがあり、実践的な指導や励ましを受けました。このような繋がり、また、特にCyber Catalystからのサポートは、Institute for Citizen‑Centred Service(ICCS)でのインターンシップの獲得に役立ちました。これは、軍を離れてから最も記憶に残った有意義な経験のひとつでした」

他の人へのアドバイス

 2人の退役軍人は、計画性、忍耐力、およびコミュニティの重要性を強調しています。

 Daniel Hruska氏は次のように呼びかけています。「たとえ曖昧であっても民間への移行計画を持つことです。民間生活は軍務と同様に、常に変化しています。民間生活を再発見しながら、自らの進路を調整する必要があります。服務を共にした友人とのつながりを維持してください。これらの関係は重要です」

 Bianca Caouette氏は他の人に対して、変化における葛藤を受け入れることを推奨しています。「自分のコンフォートゾーンから抜け出すのは非常に困難です。一方で、最後までやり遂げたことでの対価は相応であり、特に自分自身が望むライフスタイルにつながる場合はなおさらです」

今後に向けて

 Daniel Hruska氏とBianca Caouette氏は2人とも、サイバーセキュリティは単なるキャリアではなく、進化する脅威から重要システム、ビジネス、およびコミュニティを守る服務の延長として考えています。彼らは、フォーティネット、BCIT、およびCyber Catalystなどのパートナーからのサポートを通して、軍から民間生活に移り、それが、サイバーセキュリティという将来的に最も重要でやりがいのある業界のひとつとして進む出発点になることを実証しました。

 Daniel Hruska氏は次のように述べています。「これは大きな道のりの第一歩に過ぎません。今後も前進し続けることを楽しみにしています」

多様なサイバー人材の育成に向けた継続的な取り組み

 BCITはフォーティネットアカデミックパートナーとして、退役軍人および学生をサポートし、トレーニング、ハンズオンラボ、および認定の機会へ無償で招待しています。同様に、Tech Vets CanadaとCyber Catalystの両者も、フォーティネット退役軍人プログラムに含まれており、サイバーセキュリティ分野で新たなキャリアを目指す退役軍人を継続的にサポートしています。

 フォーティネットはデジタルの未来を守るために、サイバーセキュリティ教育へのアクセスを拡大する取り組みを支援し、スキルと忍耐力が高い多様な人材の育成に寄与できることを誇りに思っています。

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