Nulab Conference 2025・講演「成果を生むチームのつくり方 ─ チームワークマネジメントと利益の相関」より

マネージャーは、現場を細かく見るべき? それともチーム全体を見るべき?

文● 貝塚/TECH.ASCII.jp

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個人に向き合うために必要な、俯瞰の視点

 「現場で目の前のことに集中していると、目の前の道が、とても険しく見えることがあります。でも少し引いて見れば、その先はなだらかだったり、下り坂があったりするんです。『いまはまだ1合目だよ!』など、俯瞰で見た位置を、コミュニケーションの中で常に伝えることが、社員のモチベーションにもつながっていくと思います」

 Nulab Conference 2025で、カオナビ 執行役員 COO 最上あす美氏とヌーラボ 取締役 CRO 小島英揮氏が、「成果を生むチームのつくり方 ─ チームワークマネジメントと利益の相関」と題したディスカッションを行なった。

 冒頭のセリフは、カオナビ 最上氏による、社員のマネジメントについてのコメントだ。

 社員一人ひとりのスキル、経験、意欲、目標をクラウド上で一元管理するタレントマネジメントシステム「カオナビ」。その価値は、社員の潜在力を引き出して可視化し、成長を後押しすることにある。カオナビはすでに多くの企業で導入され、個人の成果やモチベーション向上に貢献することだ。

 「大事なのは、ただスキルや目標を把握するだけではなく、その人が“どうなりたいか”、“何をしたいのか”を把握して、支援することです」(最上氏)

カオナビ 執行役員 COO インサイドセールス本部長 最上あす美氏

 最上氏は、日常のタレントマネジメントの実践例も紹介する。

 「『どうすればいいですか?』と聞かれたら、まずはその人がどうしたいのかを聞くようにしているんです。答えを渡すのではなく、『どう考えるか』を一緒に整理することが大切だと思っています。答えを渡すと、その場の解決策を得るだけで終わってしまいますが、『どう考えるか』をコミュニケーションの中で聞き出して伸ばせば、その先には成長があります」

 個人の成長を丁寧に支えながら、マネジメント層が日々のコミュニケーションで得た情報を整理し、次のステップを描く土台を作る──。カオナビに組み込まれた、タレントマネジメントの重要な考え方だ。

チームがワークするための、俯瞰の視点

 一方、組織全体の成果やチームのパフォーマンスを考えるとき、ヌーラボが示す「チームワークマネジメント」の視点も興味深い。

 チームワークマネジメントとは、「異なる職種や部門のメンバーで形成されたチームが、助け合いながら、共通の目的に向かって自律的に動けるチームを設計・運営するための概念」である。同社が展開するプロジェクト・タスク管理ツール「Backlog」も、この考え方をベースとして開発されている。

ヌーラボ 取締役 CRO 小島英揮氏

 「(ビジネスを)登山に例えてみましょう。山に登ろうと思えば、ルートを計画してチームを作り、歩き出して頂上を目指します。しかし天気が変わることもありますし、あるはずの道が見当たらないこともあります。そんなときに、異変をキャッチして、新しいルートを考える。ここでも、やはり全体を俯瞰して見ることが大事になりますね」

 興味深いのが、カオナビという「個人を起点として全体のマネジメントに役立てる発想のツール」と、Backlogという「チーム全体を俯瞰で管理し、個人のプロセスを最適化するためのツール」の責任者同士が、非常に近い視点を持っている点だ。

 個人に向き合うための“俯瞰”か、はじめからワークフローとチーム全体の“俯瞰”を目指すか。経路や手法は異なるが、「目的地にたどり着くための考え方」を追求すると、両者は、高次元で近い答えにたどり着くのかもしれない。いや、ミクロとマクロのどちらから出発するかの違いはあっても、成果を志してマネジメントを追求すると、同じ地点に到着するのだろう。

※本記事は、Nulab Conference 2025の講演内容を抜粋したものです。

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