セールスフォース「Agentforce World Tour Tokyo」基調講演レポート
AIエージェントが中小企業の「財務部長」に SMBCグループが描く金融ビジネスの未来像
2025年11月26日 08時00分更新
Agentic Enterpriseを実現する「Agentforce 360」
来日したSalesforceの共同創業者 兼 Slack 最高技術責任者であるパーカー・ハリス(Parker Harris)氏は、「Agentic Enterpriseの世界で人とAIがタッグを組むことで、顧客ロイヤリティが高まり、信頼関係が深まり、従業員の成果が向上し、業務はより効率化され、意思決定もスマートになる」と語る。
2024年10月、セールスフォースはAIエージェントの基盤として「Agentforce」を提供開始した。その後、同年12月には推論エンジンをアップデートした「Agentforce 2」、2025年3月にはワークフローを組み込んだ「Agentforce 2dx」、2025年6月には相互運用性とガバナンスを強化した「Agentforce 3」を発表している。
そして、2025年10月の米国Dreamforceで発表されたのが、製品ポートフォリオを大幅に再構築した「Agentforce 360」である。AIエージェントを支える基盤として「Agentforce 360 Platform」があり、データ基盤であるData Cloudは「Data 360」として機能強化、そして、アプリ群の「Customer 360アプリ」で、顧客や従業員、業務とAIエージェントを密につなげる。
基盤となるAgentforce 360 Platformは、「Agentforce Voice」で音声応対に対応。自然言語でAIエージェントを構築できる「Agentforce Builder」も刷新して、さらに、自然言語のプロンプトと、プログラムのような決定論的な制御を融合する「Agent Script」を追加した。同機能は、プロンプトをIF文による条件分岐に変換するなど、エージェントを予測可能な形でコントロールできるようにする。
また、バイブコーディングでアプリケーションを開発するための「Agentforce Vibes」も加わった。他のAIコーディングツールとの違いは、企業データやメタデータ、ビジネスロジックからコンテキストを理解して、アイディアを動くコードへと変えてくれるところだという。
「Data 360」へと生まれ変わったデータ基盤は、非構造化データのコンテキストをエージェントに理解させる「Intelligent Context」に対応。「Unstructured Data Governance」は、構造化データと非構造化データを含むすべてのデータに対して、プライバシーやポリシーを自動適用する。
業務アプリも“エージェントレディ”に ITSMへの参入も
そして、Data 360とつながる業務アプリが「Customer 360アプリ」だ。これまでの“Cloud”から新たに“Agentforce”を冠して、AIエージェントと協働するアプリであることを強調している。
カスタマーサポート向けの「Agentforce Service(旧Service Cloud)」では、あらゆるチャネルに対し、24時間365日で応対するエージェントを提供。コマース向けの「Agentforce Commerce(旧Commerce Cloud)」では、ECサイトなどに顧客に寄り添うAIコンシェルジュを実装できる。
世界100カ国でビジネスを展開するジュエリーブランドのPandoraは、既にAgentforceで、問い合わせ対応の60%を自動化しているという。
営業向けの「Agentforce Sales(旧Sales Cloud)」は、見込み客の発掘や商談管理、見積作成などを自動化する。フィールドサービス向けの「Agentforce Field Service(旧Field Service)」は、設置や点検、保守といった現場業務を、エージェントとの連携を前提としたオペレーションに変換できる。
食品・飲料メーカーのPepsiCoは、営業のリソース不足で売上の半分を占める中小企業まで手が回らない状況を、Agentforce Salesで改善。個人商店から大手チェーンまで、すべての顧客に手厚いサポートを展開し、売上げ機会を逃さない体制を構築している。
加えて、「Agentforce IT Service」では、ITサービスマネージメント(ITSM)領域に本格参入している(参考記事:“Salesforce対ServiceNow” …今度はSalesforceから挑戦状? ITSM市場に本格参入)。従来のようにチケットを作成して待つ必要はなく、困ったときにエージェントが即座に対応するプロアクティブなITサービスを実現。SlackやTeamsを含むあらゆる場所で、24時間365日の従業員サポートを提供できる。
なお、AIエージェント時代にあわせてプランの整備も進めている。アクションあたりで課金されるプランから、1ユーザーあたり月額無制限のプランまでを用意。加えて、AgentforceもData 360も無制限で利用可能な包括契約「The Agentic Enterprise Licensing Agreement(AELA)」も提供予定だ。








