“ポータルとチケット”から“会話とエージェント”への転換をリード
“Salesforce対ServiceNow” …今度はSalesforceから挑戦状? ITSM市場に本格参入
2025年10月23日 07時00分更新
UNESCOは24時間体制のITサービスを効率化
Agentforce IT Serviceのパイロットプログラムに参加したのが、189の加盟国を持つ国連教育科学文化機関(UNESCO)だ。
UNESCOはパリに本拠地を構え、世界60以上にオフィスを展開する。CITO(最高情報・技術責任者)であるオマール・ベイグ氏(Omar Baig)氏は、「そのため、(ITサービスチームは)24時間体制で活動しており、ダウンタイムなしで効果的に業務を遂行できるツールとプラットフォームを求めていた」と説明する。
そして、「Salesforceはミッションクリティカルなシステム」(ベイグ氏)として、効率化と新しい価値の創出を目的に、パイロットに参加。ITサービスデスクの利用から活用範囲を拡大し、手ごたえを得た。2026年には本番運用を予定しており、主要な運用データを移行しているところだ。「これにより、AIを適用することも容易になる」とベイグ氏。
特に期待を寄せるのが「サービスカタログ」だ。ITサービスを一元的に管理する機能であり、AIエージェントを通じてアクセスして、必要なサービスを提示してくれる。「サービスを提示することはもちろん、その上で価値を構築していきたい」と展望を語った。
(左)Salesforce ITサービス&HRサービス担当シニア・バイス・プレジデント 兼 ゼネラルマネージャー マッドゥ・スダカール(Muddu Sudhakar)氏 / (右)UNESCO CITO オマール・ベイグ氏(Omar Baig)氏
CRM分野へのアプローチを強めるServiceNowとの差別化は?
ITSMといえばServiceNowだ。そのServiceNowは2025年に入りCRM分野へのアプローチを強めており、Salesforceと激しい競争関係にある。
こうした中で、なぜSalesforceはITSM市場に切り込むのか。
チェタン氏は、「顧客からのニーズ」を理由に挙げ、「Selesforceは20年以上にわたってサービス分野に取り組んできた。Service Cloud(現Agentforce Service)は現在、Salesforceで最も売上のあるクラウド」と語る。Agentforce Serviceで培った実績とAI主導サービスを融合することが、「ITSMに投資する原動力」だとする。
「ServiceNowへの対抗か」という記者からの質問に対しては、「ServiceNowと対峙することはあるだろう」「市場には明確に支配的なプレイヤーがいる」と認めながらも、「(ServiceNowは)共存する領域もあれば、競争の領域もある」と続けた。
自信の根拠は、既存の「顧客ベース」である。「Salesforce全体では15万の顧客を抱えており、Service Cloud(Agentforce Service)は6万の顧客を、Slackのインストール数も100万を超えている。市場には満たされていない需要がある」とチェタン氏。それは、「パーソナライズされたプロアクティブな方法で従業員とエンゲージしたいというニーズ」だと付け加えた。
また、ITSMは成熟した市場ではあるが、「ポータルとチケットから、24時間365日対応できるエージェントとの会話へと、解決の体験が移行しつつある。市場に根本的な変化が起こっているとし」とし、ITSMのパラダイムの転換はSalesforceが仕掛けるという意気込みをみせた。
Agentforce IT Serviceは2025年10月より一般提供を開始する。スダカール氏によると、「初回リリースから25個以上のエージェント、100個以上のワークフロー、100個以上のコネクタを用意する」という。
その後もCMDBの拡張、エージェントやドメインパックの拡充、パートナーエコシステムの拡大などを進めていく計画だ。特にパートナーエコシステムでは、コネクタと統合のISVパートナー、実装・チャネルパートナーの2つのプログラムを展開していく。

