「Nulab Conference 2025」にて日本クラウドの盟友たちがかく語りき
境界を越えた“新陳代謝”が生き残りの鍵に サイボウズ青野氏、さくら田中氏らが考える「未来のチーム・組織」
ヌーラボは、2025年10月17日、「チームワークマネジメント」をテーマとしたカンファレンスイベント「Nulab Conference 2025」を開催した。
基調講演では、さくらインターネットの田中邦裕氏、サイボウズの青野慶久氏、そして、ヌーラボの橋本正徳氏が登壇。日本のクラウド・ソフトウェア業界をけん引する盟友たちが、これからの「チームワークと組織」について語り合った。なお、モデレーターはNewbeeの蜂須賀大貴氏が務めている。
“よいチーム”の定義とパフォーマンスを上げる“石垣”の組み換え
Newbee 蜂須賀大貴氏(以下、蜂須賀氏):さっそく最初のテーマです。働き方改革や人材の多様化が進む中、“よいチーム”とは何かを議論させてください。
サイボウズ 青野慶久氏(以下、青野氏):まず、チームとは何かから話すと、例えば、10人が集まっただけではチームとは呼べないです。「みんなでアイデアを出そう」と、共通の目的や目標ができた瞬間にチームになります。なので、「チームでゴールに向かっているか」が僕のよいチームの定義ですね。
ヌーラボ 橋本正徳氏(以下、橋本氏):僕は、ジトッとゴールに向かうのではなく、「明るく・楽しく・元気に」ゴールに向かうという色をつけたいです。
蜂須賀氏:明るいチームには、一人ひとりの明るさに加えて、チーム内の関係性が重要に思えます。
さくらインターネット 田中邦裕氏(以下、田中氏):チームの関係性でいうと、「人に依存してはいけない」と思っています。要は、明るいチームをつくるために明るいメンバーを集めるのは違う。人の個性はチームによって出方が変わり、チームによってパフォーマンスが発揮できないこともよくあります。チームは、個人とはまったく別の性能を引き出す手段のひとつですね。
青野氏:僕はよく、チームを“石垣”に例えるのですが、上手くいっていたはずのチームがつまずいた時には、石垣を組み変えなければいけない。サイボウズは1500名規模の会社になりつつありますが、規模が大きくなるにつれ、色々な石の人が集まり、色々な石垣のパターンが組めるようになるのを実感しています。
蜂須賀氏:人が増えると「コミュニケーションが大変」「成果がでない」という声も聞きますが、一方で可能性は広がるという話ですね。
青野氏:そのために、どこにどんな石があるか、オープンに互いの個性を把握する必要がありますね。
会社の存続のために必要な“境界を越えた新陳代謝”
蜂須賀氏:こうしてよいチームができて、人が加わったり、抜けていったりする中で、「チームを見直すべき理由」はあるでしょうか。
田中氏:そもそも常に見直さなければいけないです。人間の体も、ものすごい勢いで新陳代謝を繰り返して、一年経てばほとんどの細胞がいなくなります。つまり、維持をするためには、入れ替えなければならない。
でも不思議なことに、維持するために「変えない」という選択をすることが多いです。業務に慣れた人に任せ続けるのは確かに効率的ですが、常に見直さないとパフォーマンスが低下してしまいます。
加えて、青野さんのいう石垣のように、会社が大きくなればなるほど、人が異動しやすくなるはずです。日本は長く働いてもらえることが強みですが、異動が少ないのが弱み。そう考えると、常に“境界”を越えてチームを入れ替えていくことがポイントになるかと思います。
橋本氏:それは、個人のキャリアパスにもプラスに働きますね。例えば、エンジニアからカスタマーサポート、企画へと渡り歩くと「レア人材」になれます。チームもこうした人材が加わることでプラスに働く。ただ、ヌーラボのように規模が小さいと、異動の柔軟性は確保しづらいですね。
青野氏:サイボウズは、異動も自由に希望でき、受け入れ先が問題なければ即成立するという環境です。ただ、このやり方でも、意外と異動が少ない。ポジティブに次のキャリアを考えられる人はごく一部だけで、何かしら背中を押さなければならないです。
蜂須賀氏:今はまだ成果を残せていないので、結果が出たら移りたいという声はよく聞きます。
田中氏:同じ部門で、同じことをやっていると「成果の質」が変わっていきます。経験にも抗原があって、慣れてくると抗体ができてしまう。どんどん離れづらくなり、周りからもできると認知されてしまうと、将来のキャリアパスが描けなくなります。
蜂須賀氏:頼られることと属人化することは、表裏一体ですね。




