IoTの開発でクリアしなければならない課題をハードウェアからソリューションまで支え、クライアントが望む仕様をより早く実現する。VIA Technologies Japanは、CPUやマザーボードの開発を行ってきた知見を活かしたAIoTや車載向けデバイス、そしてそこから得られる情報を活用するソリューションまでを総合的に提供している企業だ。今回はVIA Technologies Japanの小間拓実氏にお話を伺い、その製品や魅力や、クライアントへの取り組み方に迫ってみる。
CPUやマザーボードの設計からソリューション開発まで担う総合力
VIA Technologies JapanはAIや防犯・防災関連などのソリューションを展開してきたメーカーで、VIA Technologies, Inc.は、x86系CPUやチップセット、マザーボードを設計・開発してきた台湾のハードウェアメーカー。このPC・半導体事業で培った基盤技術をベースに、近年はIoTおよびAIエッジ領域に注力している。また、以前からx86系のグラフィックドライバー開発をしてきた経験を活かし、AI向けの独自ソリューション、例えば作業現場の安全監視カメラの開発を行っている。
「弊社は単なるボードベンダーではなく、半導体設計からAIソリューションまでOne Stop Shopサービスを提供できる点が私たちの最大の差別化要因です」と小間氏は語る。また、AndroidおよびLinux環境での開発経験も豊富で、GPIOポートなどのインターフェースを細かく制御するための独自特許技術も保有している。
最近ではOSやカーネルまわりだけでなくクラウド環境と連携して使うケースが増えており、AWS SDKを用いたクラウド連携によって、ソラコムのようにSIM側でAPIなどの環境を整備している企業との連携も進んでいる。「ベンダーやユーザーから“何ができるのか”を具体的に求められるケースが多くなっています。メーカー各社もアプリケーションやソリューション開発にリソースを割かざるを得ないため、ハードウェアだけでなく、ミドルウェアやソリューション層まで含めて支援し、コスト削減や開発効率化に貢献。その結果として、標準カタログ品の販売に加えて、小回りの利くODM案件の比率が非常に高くなっています」(小間氏)。
VIA Technologies Japanの事業領域はAIoT関連と車載向け事業の2つ。車載向けでは、通信対応のドライブレコーダーや、AIを活用したアフターマーケット向けのソリューションを展開している。AIoT領域ではクラウド上でAIを動かすだけでなく、現場でもAIを動かし、メタデータや傾向分析などをローカルで処理する分散化を進め、クライアントからのセキュリティやリアルタイム性の観点からのニーズに対応している。
SoCにはAI処理用のAPUが標準で組み込まれているMediaTek製SoCを採用し、低消費電力かつAI処理を効率化。ソラコムの通信認定を取得しているシングルボードコンピュータやボックス型デバイスなどをラインナップする。「MediaTek SoCの開発環境とNVIDIAの開発環境を統合する取り組みも進んでおり、将来的にはAI開発資産が両プラットフォーム間で共通化できる予定です」(小間氏)。さらに、研究者や学術機関から支持を得ているAIフレームワーク「PyTorch」にも対応しており、NVIDIA Jetson Orin NX(AMOS-9100)やMediaTek Genio 700(VAB-5000)上でPyTorchベースのAIモデルをONNX形式に変換して実行可能。開発フェーズでは柔軟性を、実運用フェーズでは最適化と高速化を両立できる。
長期保証によるバックアップでクライアントを支えるVIA Technologies Japanの製品
VIA Technologies Japanの製品群は、標準ボード製品とODM/セミカスタム製品の2種類を提供している。すべてのモジュールでソラコムの認証を取得済みで、SIM通信に完全対応。代表的なシリーズとして「Genio 700」SoCを搭載したシングルボードコンピュータ「VAB-5000」が現在の主流製品で、10cm×7.5cmという非常にコンパクトで、豊富なインターフェースを備えている。小間氏は「調達や供給性に課題があるRaspberry PiなどのIoTボードと比べ、MediaTekとの協業で10年保証の供給体制を確保しています。また、最低5年は供給を保証しており、長期運用に対応できます」とアピールする。
次世代機では「OSMモジュール(45×45mm)」を採用。「日本のお客様からもできるだけ小さく作りたいという要望が多く、相性のよい仕様です」(小間氏)という次世代機は小型ながら高性能なAI処理を実現し、AIの指標のベンチマークでも現行比で2倍超の性能向上を見込んでいるという。
また、開発ツールとして、Pythonから直接AIアクセラレータ(MDLA)を制御できる独自ツール「VIA Neuron Runtime Helper」も開発済みで、AIアプリケーションの高速開発を実現している。これは他社にはない圧倒的な利便性として評価されている。
車載向け製品ではドライブレコーダー型のデバイスも提供しており、動態管理+映像まで含めたソリューションが用意されている。最大の特徴はブラックボックスとなっていないこと。市販の廉価なドラレコ等は、中身が非公開で自社シナリオに最適化しづらい場合があるが、SDKや設定情報、実装手順まで提供しているため、BtoBの要件に合わせて自由に作り込める点がユニークだ。
「ボード単体からスタートすると何を作るかの議論から始まり時間がかかりますが、このドラレコ型ならやりたいことが明確になりやすい。当社の既存プラットフォームと組み合わせれば“95%完成”の状態まで短期間で持っていけます。さらにIoT動態監視機能+AI処理を統合した次世代モデルの企画を進めているところです。現行モデルはAIを直接いじることができませんが、次期モデルではより柔軟に対応できるよう検討しています」(小間氏)
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