お金の知識ゼロの50代が今からはじめる新NISA&iDeCo③
しっかり対策を練って安心運用。失敗しない新NISA&iDeCo活用術
資産運用や投資、お金関連の情報をYouTubeなどで発信しているガーコさんに、50代から始める新NISA&iDeCoについて教えてもらってきた3回シリーズ。50代こそ「今から投資を始める意味がある世代」ではありますが、50代だからこそ焦りや油断から思わぬ事態を招いてしまうことも。また、まだ間に合うとすると一方で、20代や30代ほどの時間がないのも事実です。そこで最終回では、確実に資産を増やしていくために身に付けていきたい「投資で失敗しないための知恵」をお伝えしていきます。
50代がやりがちな“投資の落とし穴”。焦りと油断が招く典型パターン
新NISAもしくはiDeCoで投資するとなると、「50代からでも間に合う」と聞くと、多くの人は安心する一方で、逆に「時間がないから急がなきゃ!」と焦りが出てしまうこともあります。実はこの“焦り”こそが、投資の落とし穴につながるのです。
落とし穴① 高リスク商品に集中してしまう
「短期間で増やさなきゃ!」と考えて、値動きの激しい商品に資産の全額を投資してしまうパターンです。確かにうまくいけば一気に利益が出ますが、逆に大きな損失を抱えたら老後資金計画そのものが崩れてしまいます。50代は「一発勝負」より「堅実な運用」を優先すべき年代です。
落とし穴② 下落で慌てて売ってしまう
株価や基準価額が下がると、つい「もうダメだ」と思って、焦って売ったり、積立を停止したりしてしまう。実はこれが最もよくある失敗です。しかし相場には必ず波があります。下落はむしろ“安く買えるチャンス”でもあるのに、そこで手放すと損だけが確定してしまいます。
iDeCoの場合は60歳まで原則引き出しはできませんが、毎月の掛金拠出を停止することは可能です。掛金拠出が停止された場合は、「運用指図者」となり、それまで積み立てた資産の運用は継続します。
落とし穴③ 投資額の見誤り
NISAもiDeCoも投資できる金額の上限はありますが、「退職金を丸ごと投資」「生活費を削ってまで投資」、これも危険です。投資は余剰資金で行うのが鉄則。無理をすると、ちょっとした値動きでも生活不安につながり、結局長続きしません。
落とし穴④ 短期でやめてしまう
「始めたけど増えないからやめた」という声も多く聞きます。投資は“短距離走”ではなく“マラソン”。複利の力は時間をかけてこそ大きくなります。途中でやめてしまっては、成果を得る前にレースを降りてしまうようなものです。
まずは50代がやりがちな投資の落とし穴を見てきました。では逆に、どうすれば安心して運用を続けられるのでしょうか。答えはシンプルです。投資の世界で昔から言われている「分散・長期・余剰資金」という3本柱を守ること。この基本を押さえるだけで、多くの失敗は避けられます。
鉄則① 分散投資でリスクを抑える
1つの商品や国に偏るのではなく、地域・商品・時間で分散することが重要です。
・地域の分散:日本株だけではなく、米国や世界株式も取り入れる
・商品の分散:株式に加えて日本や外国の債券なども検討する
・時間の分散:積立投資で購入タイミングを分ける
ここでいう債券とは日本やアメリカなどの国が、投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券です。一般的に株式とは逆の値動きをすることがあるため、株式の暴落時に資産の減少をマイルドにする効果があります。これらを組み合わせることで、大きな下落が来ても一撃で資産が半分になるようなリスクを避けられます。
鉄則② 長期で持ち続ける
新NISAは投資できる年齢に上限はなく、iDeCoは2027年1月から70歳まで投資可能期間が延長される予定です。50代から始めても、65歳まで15年。そこから85歳まではさらに20年と、実は35年もの投資期間があります。
新規の積立は60歳や65歳で辞めたとしても、残りの期間は必要な金額だけ取り崩し、残りは運用にまわす。すなわち、自分年金の運用をすることで資産寿命は大きく伸びませるのです
短期で利益を狙う必要はありません。むしろ長期で持ち続けることこそが最大の武器です。
「短期の上げ下げは気にしない。長期で右肩上がりの流れを信じる」──この意識を持つだけで、投資の景色はガラリと変わります。
鉄則③ 余剰資金で投資する
投資の絶対原則は「余剰資金で行う」こと。生活費や急な出費に備える現金を残したうえで、それ以上に余った資金を投資に回しましょう。そうすることで、短期的な値動きに左右されず、仮に下落しても「これは余剰資金。今すぐ生活で必要になる資金ではない。だからじっくり相場の回復を待てる」と、心の余裕が持てるメリットがあります。
まとめ
・分散する
・長期で持ち続ける
・余剰資金で投資する
・売らない
この4つの鉄則を胸に刻めば、50代からでも安心して投資を続けることができます。
下落に強くなるメンタル管理術。ニュースや値動きに振り回されない心の持ち方
投資を続けるうえで最大の敵は、実は「相場」ではなく「自分の心」です。特に50代から始めた方は「せっかく老後のために積み立ててるのに減ってる!」と焦りやすく、ちょっとした下落で不安になってしまうことも…。
人気のeMAXIS Slim米国株式(S&P500)やeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)などは、2024年1年間で見れば39%もの上昇を記録しましたが、2025年の1月から4月上旬にかけて20%以上下しています。
このように人気の商品も大きく上昇したり、下落したりすることがあります。特に株式メインのインデックス投信に投資する人はメンタル管理がとても大切。そこで、その不安に振り回されないためのメンタル管理術を紹介しましょう。
①値動きを毎日見ない
証券口座のアプリを開けば、リアルタイムで資産残高が上下します。でも、それを毎日チェックしていては心が持ちません。「過去の歴史を振り返れば、長期で見れば右肩上がり」と知っていても、毎日の値動きに感情を支配されてしまうのです。おすすめは「月1回チェック」くらい。まるで健康診断のように、定期的に確認するくらいで十分でしょう。
②ニュースは“つまみ食い”でOK
経済ニュースを見れば「円安で株価下落」「世界経済の減速懸念」など、不安をあおる見出しが並びます。ですが、ニュースの本質は「短期の出来事」。投資家に必要なのは長期の視点です。ニュースは「へえ、そうなんだ」と軽く受け流すくらいで十分。必要以上に深読みしなくても、投資の基本方針は揺るぎません。
③下落は“セール”だと考える
もし株価が20%下がったら、あなたはどう感じますか?「損した!」と嘆くのは自然ですが、見方を変えれば「同じ商品を2割引で買えるチャンス」です。
④投資は“心の筋トレ”
投資の値動きに慣れるのは筋トレに似ています。最初はつらくても、続けるうちに耐性がつき、ちょっとの下落では動じなくなるはず。「下落に耐える力=投資家の筋肉」。50代からでも鍛えればしっかりついてきます。
運用途中の見直しポイント。資産配分を整えて投資の土台を守っていく
新NISAでもiDeCOでも投資は基本的に「ほったらかし」が成功の秘訣です。しかし、50代から始める場合はライフイベントや収入の変化が大きいため、ときどき小さな調整を行うことが安心につながります。ここでは、運用途中でチェックしておきたい見直しのポイントを整理します。
積立額を見直すタイミング
・収入や支出が変わったとき:住宅ローン完済、子どもの独立、退職前の収入減など
・家計に余裕ができたとき:教育費が終わって支出が減るなど
無理をして続けるのではなく、「増やせるときは増やし、厳しいときは減らす」という柔軟さが大切です。途中でやめるよりも、少額でも継続することが最も効果的です。
商品を見直すタイミング
インデックス投資信託を選んでいれば、基本的に頻繁に見直す必要はありません。ただし、次のような場合には検討の余地があります。
・ある程度資産が積み上がり資産の変動をマイルドにしたい
→現在のポートフォリオ(金融商品の組み合わせのこと)が株式メインの資産配分なら債券メインに変更する
・65歳以降は取崩しをする予定で取崩期間中に大きな値下がりが来たら怖くて売ってしまう可能性がある
→現在のポートフォリオが株式メインの資産配分なら債券メインに変更する
それ以外のケースでは「触らない」ほうが投資を続けやすく、結果的に成功につながります。
そして、資産運用を長く続けるうえで見落とされがちなのが「リバランス」です。リバランスとは、当初決めた資産配分が崩れたときに元のバランスへ戻す作業のこと。これを行うことで、リスクの取りすぎや資産の偏りを防ぐことができます。
たとえば投資を開始する際、「株式70%・債券30%」のポートフォリオで始めたとします。しかし、時が経つにつれて、株式が大きく値上がりしたとします。そうすると、配分が「株式80%・債券20%」になってしまうことがあります。
この状態を放置すれば、当初想定していた以上のリスクを背負うことになり、下落相場でのダメージも大きくなります。リバランスは、こうした資産配分の歪みを正すために不可欠です。
新NISAでもiDeCoでもリバランスを行うことはできますが、新NISAの場合は、年間投資上限が360万円と決められており、それ以上は投資できないため、リバランスはやややりづらい、という特徴は理解しておく必要があります。
リバランスのタイミングは年1回程度で十分です。証券会社によっては、一定の基準からずれた場合に知らせてくれるサービスもあります。目安は「当初の配分から5%以上ずれたら調整」と覚えておくとわかりやすいでしょう。
リバランスの方法
・株式比率が高くなりすぎているとき:株式の一部を売って債券や現金に回す
・債券や現金の比率が高すぎるとき:その分を株式に振り替える
・新たに資金を投入するときに、比率が少ない資産クラスに回す
このように売買で調整する方法と、新規資金の投入で調整する方法があります。特に50代からは「新規資金で比率を整える」ほうが心理的な負担が少なく、現実的。リバランスは、新NISAでもiDeCoでも行えますが、上記の通り、新NISAは年間投資可能枠が上限360万円と決まっていることには注意が必要です。
資産は「使ってこそ価値」。投資のモチベーションを「不安」から「夢」へ
資産運用というと「老後資金を減らさない」「安心のために備える」といった守りのイメージが強いかもしれません。しかし本来、お金は貯めるためのものではなく、使うためのもの。特に50代からの資産運用は、人生を豊かにする「攻めの視点」も持つことが大切です。
現在、平均寿命は80代後半に達していますが、健康に動ける期間である「健康寿命」はそれより短いと言われています。つまり「元気で自由にお金を使える時期」には限りがあるのです。投資のリターンは老後資金を守るためだけでなく、60代・70代の「まだ体が動くうちにやりたいこと」を実現するために使ってこそ価値を発揮します。
そこで、資産運用を始めたタイミングで「老後やりたいことリスト」を作るのはとても有効です。
・毎年一度は夫婦で旅行に行く
・美容や健康など自分自身にお金を使いたい
・孫ができたら教育資金を一部サポートする
こうした具体的なリストがあると、投資は「不安に備えるためのもの」から「夢を叶えるための手段」に変わります。
そして、投資は長期で続けるからこそ意味があります。その継続を支えるのは「なぜ投資するのか」という目的意識です。老後の生活費を補うだけでなく、自分や家族が笑顔になれることに資産を活かす。そう考えると、下落相場も「夢を支える過程の一部」として前向きに受け止められるようになります。
50代で働いている場合は会社内での立ち位置も安定し、収入も高い時期なので、余剰資金を作りやすくなる時期です。同時に「あと何年元気に動けるか」を強く意識する年代でもあります。だからこそ、投資で得た資産を「将来の笑顔」に結びつける計画を立てておくことが、投資を無理なく続ける最大のモチベーションになります。
安心して続ける仕組みを手に入れよう。投資は知識と習慣と心のバランスで成功する
ここまで、50代から新NISAとiDeCoを活用するうえで「失敗しないための知恵」を見てきました。多くの人がつまずくのは投資そのものではなく、途中で不安になったり、仕組みを理解しないまま始めてしまうことです。逆に言えば、基本を押さえておけば50代からでも安心して投資を続けられます。
本連載を通してお伝えしたかったのは、「投資は怖いものではなく、知識と仕組みがあれば安心して続けられる」ということです。そして、50代からでも決して遅くないということ。むしろ、会社内での立ち位置や収入が安定し、余剰資金を生みやすい50代は、老後に向けた投資を始める絶好のタイミングです。
とはいえ、資産運用は一度学んで終わりではありません。制度は改正され、金融商品も変わっていきます。そこで、最新の情報や実践的なヒントを継続的にお届けする場をご用意しています。
本連載で学んだことを実際の生活に活かしながら、ぜひ私の発信もチェックしていただき、継続的に知識をアップデートしてください。今日の一歩が、未来の安心につながります。これからも一緒に学び、安心できる資産運用を続けていきましょう。
Profile:ガーコ
資産運用や投資、お金関連の情報を発信する、マネー系インフルエンサー。 新卒でIT企業に就職し、マーケティング、経営企画、新規事業開発に従事。働きながら夜間大学院に通い、経営学修士号(MBA)を獲得。その後、金融機関に転職。ファイナンシャルプランニング技能士資格保有。ITストラテジスト、プロジェクトマネージャーなど複数の難関国家資格を保有。自ら「プロフェッショナル窓際族」を実践し、社内で一定の評価を獲得しつつも、ほぼ毎日定時帰りを実現。会社員のかたわら、YouTubeなどのSNSを通じ、副業を開始。一見難しそうなお金の制度や知識をわかりやすく丁寧に解説し、人気を集める。SNSの総フォロワー数は40万人超え(2025年6月現在)。2025年7月に初の著書となる「知識ゼロから3 ステップで未来が変わる! ふつうの会社員のためのお金の増やし方【最適解】」(扶桑社)を発行。
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