記録から洞察のソリューションへ、「Life Sciences Cloud for Customer Engagement」
セールスフォース、製薬/医療機器業界向け営業支援機能をAIエージェントで強化
2025年10月03日 07時00分更新
セールスフォース・ジャパンは2025年9月30日、ライフサイエンス業界向けクラウドサービスの最新機能となる「Life Sciences Cloud for Customer Engagement」を発表した。ライフサイエンス業界(製薬業界や医療機器業界)の営業活動、顧客管理(CRM)を支援する機能であり、AIを活用することで、単なる記録だけではなく洞察や提案が得られるソリューションと位置付けている。
業界特化型クラウド「Salesforce Industry Cloud」の特徴
Salesforceは、2014年の「Financial Services Cloud」を皮切りに、Industry Cloudとして業界別クラウドを提供している(日本では現在12の業界向けに提供)。Industry Cloudでは、Salesforceのプラットフォームや共通サービス群をベースとしながら、各業界のニーズに特化したデータモデル、ビジネスプロセスをあらかじめ搭載することで、価値実現を早め、TCO(総所有コスト)を削減する。
さらに今年(2025年)には、業界別AIエージェントソリューション「Agentforce for Industries」も追加した。これは、特定業界の専門知識を持ったAIエージェントが、Industry Cloudが業界特有機能の自動化を支援するもので、12業界合計で200以上の標準アクションが定義済みだ。
ライフサイエンス業界の顧客エンゲージメントを強化する新発表
Life Sciences Cloudは、2024年にIndustry Cloudのラインアップへ追加されたクラウドサービスだ。ライフサイエンス業界向けのCRMとして、患者や医療従事者との関係管理を支援し、エンゲージメントの強化と新たなインサイトの発掘を図る。Agentforce for Industriesのレイヤーも追加済みで、製薬会社のMR(医薬情報担当者)や医療機器メーカーのSR(営業担当者)が、AIと対話しながら業務を遂行できる仕組みだ。
これまでLife Sciences Cloudでは、患者を対象とした「Patient Engagement」、臨床試験参加者を対象とした「Clinical Engagement」を提供してきたが、新たに、医師と接点を持つ製薬関係者向けの「Medical Engagement」、営業担当向けの「Sales Engagement」が加わる(日本では11月下旬の提供開始予定)。これらは「Life Sciences Cloud for Customer Engagement」と位置付けられている。
セールスフォース・ジャパンでライフサイエンス業界担当のシニアマネジャーを務める早田和哲氏は、これまでのLife Sciences Cloudを「活動履歴を残すためのCRM、SFAツール」と位置付ける一方で、新たにLife Sciences Cloud for Customer Engagementで実現する世界を「MRやSRが、CRMの画面上でAIと対話をしながらインサイトを得られる」と表現する。
たとえば、MRが医師との面談準備業務を行う際には、AIエージェントが他部署も含む医師への活動履歴やエンゲージメント状況を要約/分析する「スマートサマリー」、その医師に対するキーメッセージや提供コンテンツを推奨する「インテリジェントコンテンツ」などの機能を備える。もちろん、そのほかの業務フェーズでも豊富な支援エージェントが用意されている。
デモビデオより。医師との面談後、活動内容を音声で入力すると、その非構造化データから必要項目のデータを自動抽出し、構造化されたレポートに変換してくれる。また業界特化のLLMにより、コンプライアンス違反の可能性を検出して警告してくれる
Life Sciences Cloudは、基盤レイヤー、データの可視化と分析のレイヤー、AIレイヤーと3層のアーキテクチャを持つ。これにより、顧客は自社のペースに合わせて、基盤レイヤーから始めることもできれば、3層を一気に導入することもできるという。
海外ではすでに、Pfizer、Fidiaといった早期導入企業の事例があるとのこと。
業界パートナーとの取り組みも進めており、日本でも治療管理や市場などのデータを提供するデータパートナーなどをの提携を進めていく予定としている。

