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日本ではNECグループのZoom Phone採用を発表、年次カンファレンス「Zoomtopia 2025」

「Zoom AI Companion 3.0」が登場 エージェンティックAIへの進化を掲げる

文●大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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「Zoomtopia 2025」基調講演で登壇する、Zoom Communications 創業者兼CEOのエリック・ユアン(Eric Yuan)氏

 米国Zoom Communications(Zoom)の年次カンファレンス「Zoomtopia 2025」が、2025年9月18日、オンラインで開催された。基調講演では、同社 CEOのエリック・ユアン氏が登壇し、「人々を進歩に結びつける」という目標に向けて、よりパーソナライズされた体験を提供していくZoomの未来像を語った。

 また、この日は生成AIプラットフォーム「Zoom AI Companion 3.0」を中心として、多数の新発表が行われた。AIエージェント関連の新機能のほか、AI Companionを「Slack」や「Microsoft Teams」と連携させるなど、エコシステムを拡大する発表もある。

 また、同日には日本版オンラインイベント「Zoomtopia Japan 2025」も開催された。ここでは、NECにおけるクラウドPBX「Zoom Phone」の導入事例が発表された。NECグループ全社、国内従業員約11万人が対象となり、通話コストを約7割削減したほか、今後の“生成AI時代”に適応したコミュニケーション基盤としても活用していくという。

Zoomtopia 2025の新発表一覧。イベントでは、左上の「AI Companion 3.0」を中心とした新機能紹介が行われた

ZoomはAIで新しい“つながり”を築く ― NECの「Zoom Phone」11万人導入事例も

 日本版のZoomtopia Japanではまず、日本法人で会長兼社長を務める下垣典弘氏があいさつに立った。

ZVC JAPAN 代表取締役会長兼社長の下垣典弘氏

 近年のZoomは「人と人のつながりをAIプラットフォームで支える」というメッセージを掲げている。旗艦サービスであるビデオ会議にとどまらず、企業や社会のコミュニケーションとコラボレーション全体を支える「統合プラットフォームベンダー」への進化を目指すというメッセージだ。

 その流れに沿って、今年のZoomtopia Japanでは「すべての人々のために、AIとともに新しい働き方、つながり、文化を築く」という開催テーマを掲げた。下垣氏は、その意図を次のように説明する。

 「AIを活用した、新しい働き方やコミュニケーションの可能性。場所、時間、立場を超えた人間らしいつながり。そして、未来の文化を築いていくためのヒント。今日のセッションを通じて、そうした新しい視点を皆様と共有できればと考えている」(下垣氏)

 同日発表された、NECグループ全社におけるZoom Phone導入事例も、このイベントテーマに対応したものだった(関連記事:NEC、グループ11万人の電話をまるっと「Zoom Phone」に 電話関連コストを“7割削減”)。PBXのクラウド移行によるコスト削減にとどまらず、生成AI時代を見据えたコミュニケーション基盤の進化、データの価値拡大までを狙った取り組みだからだ。

 ビデオ出演したNEC CIOの小玉浩氏は、Zoom Phoneを「単なる電話の代替ではなく、クラウド化によっていろいろなものがつながり、データを価値として使えるようにすることで、コミュニケーションスタイルを変えていく」手段として導入したことを説明する。

日本電気(NEC) 執行役 Corporate EVP兼CIOの小玉浩氏

 NECでは従来、ビデオ会議サービス「Zoom Meetings」を導入している。現在は1日あたり2000~2500件の会議で「Zoom AI Companion」を利用し、顧客との対話の記録や、アクションアイテムの自動生成などに役立てているという。今回のZoom Phone導入は、こうしたAI Companion活用を電話音声にも拡大して、テキストデータ化による情報共有やデータ分析を行い、業務効率化や事業成長につなげるものだ。

 なお、NECにおける導入前の比較検討では、「音質」と「シンプルな操作性(UI)」、そして「AI活用に追加コストがかからない」という3つのポイントで、Zoom Phoneが高い評価を受けたという。また導入後は、通話コストが約7割も削減されるという大きなコスト効果も出ている。

ユーザーの“デジタルツイン”構築を通じて、AI戦略をさらに深化させていく

 グローバル版Zoomtopiaの基調講演は、CEOのユアン氏と“ユアン氏のAIアバター”による掛け合いという、ユニークな形でスタートした。

 このAIアバターは、Zoom AI Companionが備える「カスタムアバター」作成機能で作られたものだ(関連記事:Zoomが生成AIで“超進化”していた! 仕事のスピードと質が劇的に高まる予感)。画面に映るユアン氏のAIアバターは、まるでユアン氏自身が話しているかのように、なめらかにスピーチを行った。

基調講演は、ユアン氏と“ユアン氏のAIアバター”による掛け合いでスタートした

 グローバル版Zoomtopiaのテーマは「Zoom for the People」、意訳すれば“みんなのためのZoom”だ。ユアン氏のAIアバターは、Zoomの目的は「人々を進歩に結びつけること」だと語る。「進歩」の定義は人それぞれだが、単なる仕事の効率化だけではなく、従業員エクスペリエンスやカスタマージャーニーと高度な自動化を融合させて、「より幸せに働ける」仕事のあり方を実現することだと説明する。

 ユアン氏は、その目的を達成するために、Zoomでは3つの柱を大切にしていると語った。「直感的でシームレスで、安全なエクスペリエンスを提供すること」「時間を大切にし、無駄な時間を節約すること」「顧客やパートナーの価値観を共有すること」の3つだ。

ユアン氏

 この日のZoomtopiaでは、AI Companion 3.0を中心に多数の生成AI/AIエージェント関連機能が発表された。ユアン氏は、「今日のZoomtopiaでは、生活や働き方を再発明するZoomの未来をご紹介したい。ZoomがAIの力で実現する未来は、先ほどのAIアバターよりもずっと進化した、皆さんの働き方や進化に必要なものを理解した“デジタルツイン”だ」と述べる。

 ユーザー個々人の“デジタルツイン”を作るという目標は、Zoomが生成AI/AIエージェント戦略をさらに深めていく方向性を指し示している。

 Zoomでは、ビデオ会議だけでなく、電話、メール、チャット、カレンダー、ノート/ドキュメントなど、幅広い業務ツールを統合した「Zoom Workplace」プラットフォームの戦略を進めてきた。それは、ユーザー個々人によって異なる、働き方や知識、会話のコンテキスト、タスクや作業履歴といったものをAIが理解し、解像度の高いパーソナライズを行うことで、より効率的な自動化支援、さらにより良いユーザー体験が実現するからだ。

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