10年目を迎えたソラコム 今の玉川社長の頭に中にあるモノとは?

AIは、これから現実のモノと結びついていく──IoTの次は「リアルワールドAIプラットフォーム」

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ソラコム

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アフターAIの会社になろう 生成AIに前向きに取り組むために

大谷:リアルワールドAIプラットフォームに向けて、ソラコム自身がどう変わっていくのかも教えてください。

玉川:自分たち自身も進化していく必要があり、最近社内では「アフターAIの会社になろう」と言っています。

ソラコムは10年前に創業したのですが、当時から新しい働き方をしている会社だなと思っています。ミッション、ビジョン、リーダーシップステートメントも創業時からありましたし、メールを使わずすべてSlackでやりとりしていましたし、名前を呼ぶときも全員ニックネームです。当初からフルリモートワークも可能にして、一番生産性の高い場所で働いてくださいと言っていました。だから、コロナ禍があっても乗り切れたんです。

でも、今立ち上げるスタートアップって、AIがあるのが当たり前の世界にいます。そうすると、最先端の働き方も出てくるはず。10年目の僕らも、AI前提で新しいスタートアップに生まれ変われるのかが大きなテーマだと思っています。

大谷:先ほどClaude Codeの話出ましたが、今後は生成AIによるコーディングはエンジニアの仕事の仕方も大きく変えそうです。

玉川:たとえばコーディングなしに、魔法のようなスピードでソフトウェアを作れるようになると、エンジニアの仕事も変わっていく。要件定義は必要だけど、コーディングがなくなり、レビューやテストは必要だけど、自動化も可能になります。生成AIが常に伴走していることになるし、今まで当たり前だったロールも、チーム構成も変わります。いま数ヶ月かけて、アフターAIの組織に移行しているところ。次の十年のための礎を作っています。

大谷:ソラコムの社員も生成AIには前向きなんでしょうか? 

玉川:当社はエンジニア比率も高いし、かなりテクノロジーに理解がある会社だと思います。ただ、そんなメンバーですら、最近のAIの進化には引くぐらい(笑)。社内でも「自分はどうなるんだー」みたいな雰囲気もありました。

そんな感じだったので、安川の発案で先日社内でハッカソンをやったんです。縛りは「コード書くの禁止。生成AIしか使ってはダメ」というもの。エンジニアの中には当然コード書きたいメンバーもいたのですが、実際に使ってもらって、生成AIの可能性は感じてもらったので、とてもよい転機になりました。8割以上が生成AIを前向きに捉えた土壌の上で、「運用どうする」とか、「クオリティをどう担保する」といった前向きな議論も始まり、とてもいい状態になったと思います。

なにしろ、われわれ自身がAIを使いこなせないと、いいものは作れないし、お客さまにも信頼されない。3年前くらいから全社でAIを使ってきた会社ではあるけど、生成AIの進化が速いので、組織の移行も速めています。

大谷:採用戦略はどうなんでしょうか? ソラコムって10年間成長してきたスタートアップにしては、社員が少ないのも特徴です。

玉川:投資家から「採用どうですか?」と言われることは多いのですが、「社員数=売上」ではないとお伝えしています。少数精鋭でお客さまが必要なプラットフォームを構築していけば、きちんとスケールすると説明してきましたし、実際にそうなっています。AIエージェントができることも増えてきたので、人間とAIで分け隔てなく業務を推進していくことになります。

その意味では、現在は採用を絞っています。人が入ると、人が仕事をやってしまう。だから、ある意味「進化圧」をかけて、AIをどんどん使っていくようにしています。新規事業も少ない人数でやってみる。そうすると、AIを使わざるを得ない。ソラコム社内での大きな実験として、こうした取り組みを進めています。

大谷:もともと新しいテクノロジーに前向きで、人数規模的にもやりやすいのかなと思います。

リアルワールドAIプラットフォームの旗印を掲げ、M&Aも進める

大谷:丸紅さんと設立したドコモのフルMVNOのミソラコネクトについても聞かせてください。ちょっと意外な組み合わせだったので(関連記事:NTTドコモ回線のフルMVNO「ミソラコネクト」誕生。ソラコム技術でマルチキャリアを目指す)。

玉川:基本的にソラコムはグロース市場にいるので、年間30~40%の成長を目指したいという方向性があります。こうした方向性の中で、自分たち自身でオーガニックに伸ばす部分もあれば、M&Aや出資などインオーガニックな成長も必要です。

実際、今回の丸紅さんとの合弁事業もその一環です。こうしたM&A戦略はいくつか方向性があって、今回のミソラコネクトの事業はインフラ領域のカバレッジを拡大するものです。

大谷:M&Aは今後も続けていくのですか?

玉川:プラットフォーム領域においても、SORACOM FluxやWisoraは自社開発していますが、今回発表したリアルワールドAIプラットフォームに近づくための重要なサービスを提供している会社があり、いっしょに展開した方がよいのであれば、仲間に加わってほしいと思っています。

特定の用途に特化したバーティカル領域においては、車両管理のサービスを手がけるCariotにグループに入っていただきました。ソラカメのような映像プラットフォームでも、ご縁があれば連携を模索していきたいです。

大谷:今後、AI領域を広げていくと思うので、そういった分野でも連携ありそうですね。

玉川:そうですね。リアルワールドAIプラットフォームを提示したことで、自分たちが作るべきものも明確になってきているし、出資や協業の領域も定まった感じです。

今までも「グローバルプラットフォーマーになる」とか、「スイングバイIPOをやりとげる」といった旗を数年間隔で掲げ続けて、なんとかやりきってきました。今回の「リアルワールドAIプラットフォーム」も同じ。やっぱり旗を掲げるって大事だなと思いますね。

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