10年目を迎えたソラコム 今の玉川社長の頭に中にあるモノとは?

AIは、これから現実のモノと結びついていく──IoTの次は「リアルワールドAIプラットフォーム」

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ソラコム

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AIで価値を出せないのは社内データと連携していないから

大谷:次に今回のメイントピックになるAIの話です。AIに関しては、以前から意識していたのでしょうか?

玉川:もともとソラコムのビジョンである「世界中のモノとモノをつなげ、共鳴する世界へ」のうちの「共鳴する世界へ」の部分は、デバイスをつなげ、データがリアルタイムに入ってくれば、なんかしらの形で処理できるだろうと思っていました。

AIにつながるきっかけは、8年前くらいの機械学習の登場ですね。当時「S+ Camera(サープラスカメラ)」というAIカメラを出したのですが、当時はエッジでの処理を意識していました。それが大きく変わったのは、やはり2022年のChatGPTの登場。クラウド側のAIがどんどん進化していきました。当社も「SORACOM Harvest Data Intelligence」というサービスでいち早くAIを取り込んだのですが、「十分に業務でも使える」という手応えがあり、進化のスピードに驚いたんです。

クラウド型カメラサービスの「ソラカメ」を始めたのもちょうどそのタイミングです。生成AIのマルチモーダル化が進み、カメラ映像も生成AIで処理できるということに気がつき、さらなるAIの活用を模索しました。

先日発表したチャットボットサービスの「Wisora」も、もともとはサポートのメンバーがChatGPTで問い合わせ業務を自動化するために作ったもの。すでにサポート窓口では、生成AIと人間の回答を選べるのですが、レスポンスの速さから、生成AIによる回答を選ぶお客さまも増えてきました。こうやってAIを使ってきたら、どんどんノウハウが溜まってきたんです。

大谷:生成AIを利用するユーザー自身も増えてきたんですね。

玉川:こうした経験をするうちに、「IoTでデータを溜めているのに、本格的に価値を取り出せていない会社が多いのは、社内データと連携していないからでは?」という仮説が出てきました。社内には、従業員や顧客、売上、在庫、サプライチェーンなどさまざまなデータがあるけど、それとIoTデータを組み合わせると価値が出てくるはず。でも、多くの事業者はこれができてないことに気がついたんです。

ソラコムは、これを実現するプレイヤーとしてちょうどいいポジションにいると考えたわけです。SORACOMにはIoTシステムに必要なパーツは揃っています。だから、社内データとIoTデータをAIに送り込めるようになれば、めちゃくちゃ面白いのではと感じました。

大谷:リアルワールドのIoTデータと社内データと連携しつつ、AIで処理するという流れですね。

玉川:ただ、その言葉がうまく表現できなかった。もともとIoTって、全部を包括しているはずなんです。だから、僕らの中ではAI含めてIoTだと思っていた。でも、外に発信するときに、その真価を理解してもらえないだろうという懸念がありました。

こういった経緯からもっと新しい言い方を考えた結果、生まれたのが「リアルワールドAIプラットフォーム」でした。ChatGPTとも何度も壁打ちして、リアルワールドが一番しっくりするかなと思い、チームのコンセンサスをとって生まれた言葉です。

現時点では「IoT+α」 ミッシングピースはいっぱいある

大谷:なるほど。きっかけはAIの進化なんだけど、既存のIoTはデバイスとクラウドとのデータの掛け合わせで、社内データという観点がなかった。生成AIの登場でユーザーがAIを使うのに抵抗感がなくなったという市場の変化もありますね。こうした市場の変化と概念のギャップから、リアルワールドAIプラットフォームに行き着いた感じですかね。

玉川:その意味では、ソフトウェアがオンデマンドでできてしまう「Claude Code」が出てきたのも大きかったですね。あの日は、正直興奮して寝られなかった(笑)。安川とは「なんだか世界がすごいことになってしまった」と話していて、まだまだやることがいっぱいあるぞと。

実際、リアルワールドAIプラットフォームという世界観を掲げてみると、僕らのパーツはまだ「IoT+α」なので、ミッシングピースもまだいっぱいあります。リアルワールドAIプラットフォームに向けて、この先10年チャレンジできる土壌が見えてきました。AIチャットボットサービスのWisoraも、今は社内のデジタル情報を入れて、回答を生成しますが、ここも将来的にIoTデータがつながってくるのは必然だと思ってます。

大谷:今年初めてSORACOM Discoveryの新発表を聞いた人がいたら、「なんでIoTの会社がWisoraみたいなAIチャットボットサービスを?」と思うけど、あらゆるデータを集めるという観点で言うと、整合性がとれているんですよね。

玉川:AWSでもドッグフーディングして新サービスを立ち上げるというのは普通にやってきましたが、Wisoraも3年くらいの試行の結果で生まれたサービス。IoTの文脈からは「離れ小島」のように見えるけど、リアルワールドAIプラットフォームとしてはつながっているんです。

大谷:リアルワールドAIプラットフォームって、いわゆるデジタルツインではないのか?という気もするのですが、どうなんでしょうか?

玉川:デジタルツインって、現実世界の写像をデジタルの世界で構築し、シミュレーションしていくという考えだと思いますが、リアルワールドAIプラットフォームは、IoTのようなフィジカルの世界とデジタルの世界をAIにつなぐことによって、リアルタイムで相互に真価を発揮するという世界観です。デジタルツインの文脈では、AIを前提としていない気がします。

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