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セールスフォースで実現する「エージェンティックマーケティング」の世界

顧客対応のAIエージェント化を進める富士通 新生「Marketing Cloud Next」を導入した理由は?

2025年09月19日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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Marketing Cloud NextとAgentforceが実現する「エージェンティックマーケティング」

 続いて、セールスフォース・ジャパンの島田氏は、Marketing Cloud Nextによって推進する「エージェンティックマーケティング」について解説した。

 現在セールスフォースは、AIエージェント基盤であるAgentforceを、同社の業務アプリケーションにネイティブ統合する取り組みを進めている。Marketing Cloud Nextも、Agentforceを含むAI機能を統合した次世代マーケティング基盤だ。これまで同社は、企業買収によってマーケティング基盤であるMarketing Cloudを強化してきたが、Marketing Cloud NextとしてData Cloud上にゼロから再設計。Agentforceや他の業務アプリケーションとネイティブにつながるマーケティング基盤を構築した。

Marketing Cloud Nextのスタック

 島田氏は同基盤の提供により、「“エージェンティックマーケティング”、つまりAIエージェントがいるマーケティングの世界をようやく実現できる」と語る。島田氏は、「従業員」と「顧客」それぞれの視点から、エージェンティックマーケティングの世界における変化を説明した。

 まずは従業員視点での変化だ。Marketing Cloud NextとAgentforceによって、AIと人間が会話形式で協働する新しい働き方に変わるという。

 部門横断でビジネスデータを取得して、コンテキストを理解したAIエージェントが、マーケティング業務と融合することで、エージェントに定型業務を任せて、人は創造的な業務に集中することができる。加えて、Marketing Cloud Nextでは、専門性を有したエージェントがワークフローに実装され、マーケティング業務の負担を軽減する。

専門性を有したAIエージェントがマーケティング業務を支援

 説明会では、実際のユースケースを想定したデモとして、新製品発売後のマーケティング活動をエージェントが支援する様子が披露された。

 ある日、マネージャーのSlackに、新製品の売上が思わしくないという情報がAIエージェントから通知される。マネージャーは、Slackのメッセージを起点にBIツールであるTableau Nextにアクセスし、エージェントに売上分析を依頼。そこで判明した、ある支店の成功施策の情報をエージェントから取得しつつ、全社に横展開する。

 それを受けたマーケターは、エージェントにキャンペーンの作成を依頼。過去の実績や企業ブランドなどを踏まえたキャンペーンが提案され、メールの文面まで生成してもらう。キャンペーンのスケジュール設定やターゲットとなるセグメントの抽出まで任せることができ、効果的なキャンペーンの展開を支援してくれる。

 店舗のスタッフも、マーケティング施策を把握でき、エージェントが顧客の悩みに応じて推奨アクションを提示。最終的には、施策実施後の売上をエージェントに分析してもらう。島田氏は、「業務の中に完全に組み込まれたエージェントによって、業務をとめることなく、フリクションレス(顧客体験上の摩擦のない状態)で、マーケティング業務を遂行可能」と強調する。

AIエージェントがキャンペーン案を複数提示

指示をした属性のセグメントも抽出してくれる

 一方、顧客視点での変化はどうか。

 まずは、一方向だったコミュニケーションが、“双方向”に変わる。例えば、ECサイトのユーザーがカートに商品を入れたまま、購入せず離脱した時に、企業側はこれまでSMS通知などでしか対応ができなかった。それが、AIエージェントであれば、顧客の反応を受けて、閲覧履歴などからリアルタイムに商品をレコメンドできる。

AIエージェントによる双方向のコミュニケーション

 その他にも、情報へのアクセスは、AIエージェントとの対話に応じてWebサイトの情報が動的に変わるなど、「欲しいと思った瞬間に向こうから情報がやってくる」よう変わっていく。オムニチャネル化が進む中で、エージェントであれば、どのチャネルでも一貫した顧客体験が得られるようになる。

 「こうした対話形式での顧客体験を経由した情報を基に、よりリアルタイムで顧客ニーズに即したコミュニケーションも図ることができる」(島田氏)

 Marketing Cloud Nextは、2025年6月より提供されており、旧Marketeing Cloudからの統合ツールも今後展開予定だという。組織単位で月額18万円から提供され、中小企業から大企業まで活用できる基盤として、パートナー企業と共に訴求していくという。

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