Backlog 20周年企画 チームワークとマネジメントを語り合う
現代企業が知るべき“クリエイティブなチーム作り”の秘訣
「管理」と「マネジメント」は違う──脱・Excel管理でチームを強くする倉貫さんのチーム論に納得しかない
提供: ヌーラボ
チームにとっての「いい感じ」はマネジメントから生まれる
大谷:チーム作りに取り入れられるお話がたくさん出ましたね。倉貫さんはたくさん著書を出されていますが、読者や取引先からのフィードバックはどうですか?
倉貫:ありがたいことに、読者から「影響を受けました」「取り入れてみました」といった感想を多くいただいています。でも、自分の本も、他の人も本も、そのままやってうまくいくと限らないです。
成功事例を真似しても、同じ効果なんて絶対に出ません。「グーグルが社食を無料にしたので、うちも無料にしてみた」とか、「アップルが出社に戻したので、うちも戻します」とか聞くと、それは違うのではないかなと(笑)。
大谷:「●●に成功する本」って、あくまで「自分はこれで成功したよ」という話ですからね。読者が同じことをそのままコピーしてやっても、成功するとは限らない。
倉貫:仕事の中身も、会社も、時期も、時代も、国も、状況も全部違いますからね。事例や書籍はインスピレーションの元にはなりますが、そのときどきで自ら考えなければならない。これが一番難しいんです。
今回のチームワークマネジメントの話であれば、じゃあ自分の会社における「いい感じ」とはどういうことなのかを考える。目的はもちろん、現場や状況を見た上で、そのチームのいい感じとはなんなのか、チームのマネジメントはなんなのかをメンバーと考える。教科書に書かれていないことをするのが、マネージャーの仕事だと思いますね。
大谷:「いい感じ」って便利だけど、誤解を生む言葉でもあります。そこをチームで定義づけして、どうすると快適なのか、どうするとうまく回るのかみたいなところを考えるのが重要ですよね。
チームワークマネジメントの最大の壁は「リーダーシップ」?
大谷:原田さんは、チームワークマネジメントの観点で、今回の話を聞いてどうでしたか?
原田:いずれもチームワークマネジメントの要素には当てはまっていると思います。「問題 vs 私たち」は「目的の共有」だし、「言いたいことを言い切る」や「弱みを活かす」も心理的安全性やコミュニケーション設計に関わりますね。
大谷:前回対談したサイボウズさんは、同じような概念を重視しているけど、表現が違うと言っていました。会社によってしっくりくる表現が違うはずなので、社内の共通言語でチームワークマネジメントの要素を作っていく作業が重要なのかもしれません。よそから借りてきている感がない。
原田:チームワークマネジメントも、その条件も、対外的なメッセージとして作っているので、カチッとした言い方になっています。社内向けだったらもう少しくだけた言い方になっているかもしれません。
大谷:倉貫さんは、チームワークマネジメントのコンセプトについてどうお考えですか?
倉貫:チームワークマネジメントに対して、異議を唱える人はおそらくいないと思います。目的の共有も、リーダーシップも、心理的安全性もどれも大事。これに事例があれば、取り入れやすいと思います。
ただ、現在のチームワークマネジメントは賛否両論を生まないかもしれない。みんながいいと思うところは抑えているので、賛成しかないんです。否が出るくらいの尖り方があった方が面白いものになるのでは?という感想はあります。
サイボウズの青野さんや僕の書籍のメッセージは割と尖っているので、味として苦手という人と、熱烈なファンに分かれる気がします。一方で、チームワークマネジメントはみんなが美味しいねと言うはず。
原田:「真新しいことがない」と言われたことはあります(笑)。
倉貫:基本だから大事。だから、いいんですよ。
大谷:あとは実践のメソッドですよね。チームワークマネジメントって答えがない。パターンを作っていって、そのノウハウを吸収してもらうべきかなと思います。
原田:お客さまのところに話を聞きに行くと、できているところもあれば、難しいところもありますね。特に、「リーダーシップ」は難しいと言われます。
倉貫:リーダーシップを主体性と定義づけるとして、上司が部下に「主体性を出せ」と言って、部下から出てきたものは主体性なのかという気はします(笑)。だから「主体性を出させる」というのは、なかなか厳しい。
ただ、先ほど話した「問題 vs 私たち」「言いたいことを言い切る」「弱みを活かす」といった環境を整え、「振り返り」や「ザッソウ」「タスクばらし」のようなアプローチで仕事を進めれば、結果的に主体性は発揮されやすい気がします。主体性はコントロールできないですが、仕事のやり方はコントロールできますからね。
僕たちも仕事のやり方は徹底的にコントロールしています。エコロジカルアプローチで主体性を育てるようにしているし、「言いたいことを言い切る」を実践したら、やりたい野望は言うでしょう。その野望についてみんなが意見を言い切って、チームの目的と照らし合わせた結果、自分のアイデアが採用されたり、相手のアイデアを受け入れたりできたら、納得感がありますよね。そうなれば、主体的に取り組んでくれると思うんです。
原田:確かに言いたいことを言い切ったメンバーは、リーダーシップを発揮していますね。サッカーとかでも、自分が最高のパフォーマンスを出すためだったら、年齢や立場関係なく「球よこせよ!」って強い口調で言うでしょうし、それは試合に「勝つ」という目的があるからなんですよね。
大谷:言ったからには自分でやらなきゃという主体性もありますよね。いずれにせよ、主体性はあくまで結果として生まれるものということですね。
「見えていること」はチームの最低限の条件 その当たり前のためにBacklog
大谷:最後に、倉貫さんにBacklogのようなツールはチームに必要なのか、あらためてお聞きしたいです。
倉貫:僕にとって、プロジェクト管理やタスク管理は当たり前の存在です。ところが実際はBacklogに限らず、そういうツールを導入していない会社はまだまだ多いです。そうなると、仕事がどこまで進んでいるか、誰が何を担当しているのかもわからない。つまり仕事が見えていないんです。
でも、どんな企業にもタスクマネジメントをしなければいけない場面は増えています。多くの会社は「タスク管理ならできている」と言うかもしれませんが、個人のノートにToDoを書き込んでもタスクマネジメントにはなりません。タスクマネジメントで大切なのは、クラウド上でどこからでも誰でも進捗が見えるようにすることです。
チームになるための最低限の条件は「見えていること」。見えているものが同じでないと、チームにはなれないんです。
当たり前すぎて、ツールで仕事を見える化しましょうなんて言いませんでしたが、この当たり前をできてない会社が多いんです。今日の話は見える化ができている前提なので、まずは土台としてBacklogのようなツールを導入してほしいなと。みんなが入れたら、日本企業の生産性は変わると思います。
大谷:楽しかったです。ありがとうございました!


