Backlog 20周年企画 チームワークとマネジメントを語り合う

現代企業が知るべき“クリエイティブなチーム作り”の秘訣

「管理」と「マネジメント」は違う──脱・Excel管理でチームを強くする倉貫さんのチーム論に納得しかない

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●永山亘

提供: ヌーラボ

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仲良いだけだと70点のチーム 100点のチームに近づけるには?

倉貫:ザッソウにはもう1つの意味があります。「雑に相談する」ということです。先ほどお話した通り、雑談と相談を繰り返せば、コミュニケーションの質も上がり、仲良くなります。チームもよくなりますが、ここまでだと70点のチームです。本来の目的に達するためには70点では不合格。本当にやりたいことをやるための壁は越えられないんです。

大谷:仲良しだけのチームだと、70点までしかいかないんですね。

倉貫:仲良しだからこそ、言いたいことを抑えてしまう。言い切った人がいても、上司は「君の言うこともわかるけど、まあまあここは抑えて」と懐柔してしまう。なんなら、それがいいマネージャーだと評価されてしまう。これでは意味がありません。

だから、「言いたいことを言い切る」場を作るんです。メンバーだけでなく上司も言い切ってしまいましょう。そうすることで、100点のチームに近づき、次のフェーズの「雑に相談する」までいけます。

大谷:雑に相談するってどんな感じですか?

倉貫:「なんか思いついちゃったんですよね」とか、「作っちゃったんですよね」みたいなやつです。

大谷:確かに雑ですね(笑)。

倉貫:でも、この方がいいんですよ。粗々の状態で持ってきてもらえば、意見も言えるし、軌道修正もできる。でも、1週間かかった企画書を持ってこられたら、「うーん、ダメだけど、がんばったからな」ってなるじゃないですか(笑)。雑な状態って、実にクリエイティブな状態なんです。雑でもいいけど、意見を言い合えるようになったら、本当にいいアイデアに結びつくと思います。

大谷:なるほど。言いたいことを「言う」のではなくて、「言い切る」ことが重要ということですね。

倉貫:でも、プロジェクトの最初にそれをやってしまうと、うまくいきません。ある程度段階を踏む必要があります。日々挨拶をするとか、メンバーの名前を知る、いっしょに仕事するといったフェーズを経るから、「言い切る」までいけるんです。

原田:受け取る側もスキルが必要だと思います。その場を逃れるために、受け流したり、聞かないメンバーもいるんですよね。そういう場合はどうすればいいんでしょう。

倉貫:そういうときこそ、1つ目の「このチームの目的ってなんだっけ?」が効くと思います。目的にコミットしない状態で言いたいことだけ言っても、単に声が大きい人が強くなってしまう。でも、「問題 vs 私たち」の関係が構築され、目的に向かうための合理性があれば、メンバーは納得するはずです。

大谷:このあたりのお話は、先日実施したサイボウズ青野さんとヌーラボ橋本さんの対談で出てきた話に近いですね(関連記事:チーム作りの苦労を語ったサイボウズ青野氏とヌーラボ橋本氏の対談が本音過ぎた)。橋本さんはメンバーが争っている状態がイヤだけど、青野さんはプロレス好きということもあり、ケンカの先にクリエイティブな状態があると感じている。ここでの基準として、青野さんがこだわっているのは合理性ですね。

倉貫:目的に対して、合理的かどうか、筋が通っているかどうかが重要なわけです。経済合理性だけではなく、目的合理性も考えなければならないと思います。

原田:言い切る状態って、小さいチームならわりとできるんですよ。でも、人数が増えたり部門をまたいだりすると、一気に難しくなります。関係性を作らないままで、その「言い切れる状態」を作るのはなかなか大変ですね。

倉貫:プロジェクトでも、トラブルが起きたらみんなが仲良くなるということもあるじゃないですか。僕も経験がありますが、納期がギリギリなときに限ってバグが見つかる。こうなると遠慮とか言っていられる状況ではなくなるんです。お互いに言いたいこと言い切って、トラブルを乗り越えられたら、また同じチームで仕事したいと思えるはずなんです。

原田:トラブルや炎上は確かにそうですね。チームを強くしますよね。

ポイント3 「弱みを活かす」で、強みが活きる

倉貫:3つ目は、「弱みを活かす」です。「強みを活かす」という言葉はよく聞きますが、強みを活かすためには弱みが必要なんです。誰かが弱みを出してくれないと、自分の強みは活かせません。

原田:確かにそうですね。

倉貫:たとえば、会議での発言やプレゼンは得意だけど、レポート作成は苦手な場合。そんなときは、聞いた内容をまとめるのが得意な人にレポートを任せればいいんです。話すのが得意な人は、自分の強みをぞんぶんに発揮できますからね。

大切なのは、相手に「僕の弱いところはここです」と頼ることです。そうしないと、相手は強みを発揮してくれません。ストレングスファインダーを受けて僕も気づきましたが、人の強みは1種類じゃない。みんな、いろいろな強みを持っているんです。

大谷:アニメやマンガでも、登場人物のそれぞれが異なる強みを発揮して、チームで強敵を倒すみたいな展開が多いですよね。組織は多様性が大事という話に通じるのかもしれません。

原田:ストレングスファインダーはうちも全員受けています。本人が強みと認識していないパターンはもちろん、行動と強みが一致しないパターンもありますね。手を挙げてくれたので登壇してもらったら、実は登壇が好きというわけではなく、やる人がいなかったから立候補してくれたのだと知りました。

倉貫:登壇が好きではないけれど、会社やチームの目的のために行動してくれたんですね。ただ個人的には、好きか、嫌いかはあまり関係ないと思っています。目的のためにやっているわけで、好きのためにやっているわけではない。だから、強みと好きはいっしょにしない方がいいと思います。

好きじゃないけど、強みを活かしたら、パフォーマンスが出ます。人間ってパフォーマンスが発揮できたら、満足するんです。「好きだけど、パフォーマンスが出ないこと」と「好きじゃないけど、パフォーマンスが出ること」、どちらが続くかというと、やっぱり「パフォーマンスが出ること」なんです。

マネージャーも、好きか嫌いかを聞くんじゃなくて、メンバーのパフォーマンスが出ることをやってもらう。その方が本人も気持ちいいはずですよ。

むしろマネージャーから弱みを披露してみる

倉貫:僕は自分が苦手なことを、他の人にやってもらうのはよくないことだと思っていました。「いやなことをやらせてごめんな」という気持ちになってしまうので、人に頼めなかったんです。結果的に苦手なことを自分でやってしまい、余計な時間がかかっていました。

でも、自分が苦手なことが、大得意な人っているんですよね。「僕は苦手なのに、あなたはこれ得意なの?」みたいな(笑)。

原田:むしろ「得意だから私にやらせてほしい」という人もいますよね。

倉貫:グループだったら、自分だけセンターに行くことを考えればいいので、いらないんです。でも、チームで強みを活かすためには、強みだけじゃなくて、弱みも知る必要がある。

大谷:強みを知る機会は多いと思いますが、弱みはどのタイミングで知るのがいいんでしょう。マネージャーがメンバーのやり取りや仕事をきちんと見てねってことなんですかね。

倉貫:マネージャーがなんとかしてメンバーの強み、弱みを知ろうとしなければいけないのではなく、お互いに弱みを見せて頼れる関係性を築けるといいですね。むしろ、マネージャーから率先して弱みをアピールしたり、頼ったりしたらいいと思います。

それに、マネージャー自身にも強み、弱みがあることをつい忘れがちですよね。マネージャーはあくまでもロール(役割)です。メンバーは弱みを出していいけど、マネージャーが「オレは大丈夫だから」は違うんです。

大谷:マネージャー、かっこつけすぎだと(笑)。

倉貫:会社が成長してくると、自分よりも優れた人が増えてきます。会社全体のことは僕が一番わかるけど、プログラミングならこの人、デザインならこの人って、適したメンバーが出てくる。だったら頼った方がいい。

大谷:確かに「オラに力を貸してくれ」の方が部下はがんばってくれそうです。

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