Backlog 20周年企画 チームワークとマネジメントを語り合う

現代企業が知るべき“クリエイティブなチーム作り”の秘訣

「管理」と「マネジメント」は違う──脱・Excel管理でチームを強くする倉貫さんのチーム論に納得しかない

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●永山亘

提供: ヌーラボ

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ポイント1 「問題 vs 私たち」で、解決したい問題を明確に

大谷:では次に、チームを「いい感じ」にするってどういうことなんでしょうか? チームワークが機能しているとはどういう状態なのか?という質問なのかもしれません。

倉貫:いいチームって、メンバーがのびのび能力を発揮できている状態ですよね。それを実現するためのポイントは3つあります。

1つ目は僕らの言葉で言うと「問題 vs 私たち」です。これってチームワークマネジメントにも通じる話なんですが、チームで目的があるとしても、どうしてもチーム内でいさかいが起こってしまう。部下の「自分はこう思っています」が「なんとか自分の意見を通したい」になると、「上司 vs 部下」になってしまいます。

原田:対立構造になってしまうんですね。

倉貫:あるいはパートナーと仕事をする際に、パートナーに言うことを聞かせようという話になると、「パートナー vs 自社」になってしまう。どんなところでも「あなた vs 私」の対立構造になってしまいます。これだとチームはチームになれない。でも、これってあらゆる場面で起きていることですよね。 

これに対して僕が考えているのが「問題 vs 私たち」です。問題に対して、向き合う私たちでいましょうという姿勢です。そもそも「僕たちが解決したい問題は何なのか?」を議論するのが大事です。

大谷:問題を仮想敵と設定すれば、その敵を倒すチームになれるということですね。

倉貫:たとえば、新商品を出したいという部下、コストや人員がかかりそうだからやめさせたい上司という対立構造の前に、そもそも「なんで新商品を出すんだっけ?」を考えるんです。「会社の新しい基軸を見せたい」という目的があれば、別に新商品を出すということにこだわらなくてもいい。部下と上司は、その手段やアプローチをいっしょに考える仲間になれるはずなんです。

問題を見つけると、グループはチームになれる。これって地球の平和につながるくらいの大事なコンセプトじゃないかなと思っています。

目の前の問題を洗い出す「振り返り」 まずは習慣化させること

大谷:その問題は、どう洗い出せばいいんですかね。

倉貫:僕らの会社ではアジャイルの文脈で「振り返り」という取り組みをやっています。ホワイトボードにみんなの問題を書き出す。こうすると、各人の問題が、みんなの問題に変わるんです。「チームの問題って、これだよね」のコンセンサスがとれれば、自分の意見を通すとか、自分の問題を解決するのではなく、みんなの問題を解決するところにベクトルが向きます。

原田:僕は問題ではなく、チームのゴールで話すことが多いです。チームのゴールに向かっての合理性なのか、対話なのかをみんなで話します。

チームワークマネジメントでも、おそらく一番初めに手を付けるのは「目的の共有」。これが決まると、チーム内で対話ができるようになるんです。その目的に向かって、役割の割り当てという次のステップに進むことが可能になります。

倉貫:なんらかの意思決定をするときに、ゴールのためなのか、個人の利の話なのかを確認することは重要ですよね。とはいえ、日々の中では小さな対立が起きがちです。これらを解消するための議論が「ゴールに向けての合理性」だと、結論に達するまでが遠くなってしまうんです。

原田:なるほど。確かに時間かかるかもしれませんね。

倉貫:現場寄りのアプローチとしては、目の前の問題にしちゃえばいいんです。目の前の課題を解決するために、自分で抱え込んでいる問題をみんなの問題にするわけです。

大谷:倉貫さんの「管理ゼロ」の本にも、「うちの会社は『そもそも』をとても重視します」と書かれています。「そもそも、なぜこれやっているのか」を考えているという話でしたが、確かに「そもそも」の話って議論として重いんですよね。だからとにかくホワイトボードに現時点での問題を書き出す。そこをイシュー化して、対処するのがよいとありますね。

倉貫:大がかりな話ではなく、日常的にやることが大事です。まずは、小さく始めていく。4~5人のチームでやれば、30分で終わります。1回で終わらなかったら、定期的に少しずつやればいいんです。問題が起こったときに、さっと振り返って、イシュー化して対応するくせが付くと、チームとしてうまくいきます。

チームは最初からチームなわけではないですし、なにかをやればいきなりチームになるわけでもない。そこで、毎日少しずつやっていくのが「振り返り」です。この過程で「問題 vs 私たち」の構造を作っていくことが大切です。

ポイント2 「言いたいこと言い切る」環境はなぜ必要か?

倉貫:2つ目は、「言いたいことを言い切る」。これは、チームワークマネジメントの心理的安全性に近いテーマです。

そもそも心理的安全性を高めるって、難しいんですよね。「心理的安全性を高めていこう!」と宣言するのもなんだか違うし、何に対しても優しく「いいよ、いいよ」と言っているだけでは、ただの優しい人になってしまう。大事なのは、優しかろうが、厳しかろうが、とにかく相手が「言いたいことを言い切れる」という環境をつくることです。

言いたいことを言えたら、本人もやる気が出てくるでしょう。逆に言えなかったら、チームリーダーは部下からのいいアイデアを失うことになるかもしれない。チームで仕事をするなら、「言いたいことを言い切れる方がいい」ことは明白です。では、それをどうやってやるのか?

大谷:「言い切る」までの関係作りは確かに気になりますね。

倉貫:まずはコミュニケーションの量です。僕の「ザッソウ 結果を出すチームの習慣 ホウレンソウに代わる『雑談+相談』」という本では、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」ではなく、「ザッソウ」をおすすめしています。

「ホウレンソウ」のうち、報告と連絡は今の時代さまざまなツールがあるので、一瞬で済みます。しかし相談だけは、相手がいなければ成り立ちません。本来、相談だけはインタラクティブでもっとも難しいやりとりなのに、ホウレンソウでまとめられてしまっています。報告と連絡はすでに容易になった一方で、相談だけが大変なんです。

大谷:確かに相談はハードルが高いですよね。私もメンバーから「相談が……」と話しかけられたら、ドキッとします。

倉貫:そこで、雑談と相談をくっつけて、「ザッソウ」が大事だと話しています。雑談と相談の区別が付かないくらいがちょうどいいんです。

原田:僕もコミュニケーションの量が関係の質を上げると思っています。フルリモートということもあり、雑談も含めたコミュニケーションの機会を意識的に増やしていますね。

対話を繰り返していると、話すのが好きな人、聞くのが好きな人、参加していること自体を楽しんでいる人など、それぞれだなと感じますね。沈黙から生まれるものもあるので、あえて考えさせる時間というのも大切にしています。

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