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Backlog 20周年企画 チームワークとマネジメントを語り合う

Backlog20周年記念対談 チームワークとマネジメントの関係とは?

成長の限界を超える組織作りとは? ヌーラボとベイジで「最良の方法」を考えてみた

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ヌーラボ

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 Backlog 20周年企画として多くの経営者が悩む「組織作り」について、Web制作会社ベイジ代表の枌谷(そぎたに)力氏とヌーラボ 代表取締役CEOの橋本正徳氏が語り合った。「会社らしさ」に反発し、自由なチームづくりを目指してきた二人が、なぜマネジメントに向き合うようになったのかを掘り下げる。シンパシーを感じあう二人の経営者に、ヌーラボ ビジネスグロース部 部長 原田 泰裕氏もまざり、組織作りの楽しさや苦労について語る。

フリーランスって意外と保守的 ベイジを立ち上げた理由

大谷:Backlog 20周年対談ということで、今回はWeb制作会社ベイジの枌谷さんに来てもらいました。枌谷さんはコロナ禍に東京から福岡に移住していて、ヌーラボの橋本さんと福岡仲間ですね。

橋本:3年くらい前からのお付き合いですね。枌谷さんのことはずっとウォッチさせてもらっています。いきなり気持ち悪くてすいません(笑)。

大谷:B2Bマーケティング界隈ではベイジさんのコンテンツの影響力は大きく、読者の関心も高いと思います。まず枌谷さんがベイジを起業した経緯を教えてください。フリーランスではなく、あえて会社を立ち上げ、チームで仕事しているのかもぜひ聞きたいです。

枌谷:僕は新卒で入社したのがNTTデータでした。同期が500人くらいで、全社員だと当時は1万人くらいいる会社。ただその時は、大企業的な働き方、大きなビジネス、大きな組織で働くのが自分には合わないと思ったんですよね。何かにつけて不満を感じてしまって、「もっとこうすりゃいいのに」と思うことばかり。若さゆえの勘違い、という部分もかなりありましたが…。

ベイジ代表 枌谷力氏

それで会社は辞めたいとなるわけですが、きっと自分に合う会社なんてないんじゃないか、探すよりも自分で作った方が早いんじゃないか、という発想で起業を考えました。ただ、いきなり大企業からの起業は難しいと思ったので、制作会社2社で経験した後、まずはフリーランスとして独立しました。2年半くらいはフリーランスで働き、年商で言うと2000万円くらいまでは行きましたね。

大谷:全然フリーランスで食べていけるじゃないですか。

枌谷:そうなんですけど、やっぱりフリーランスの厳しさってあるな、と。自分が働けなくなったら収入は入らないし、スケジュールが変わっても、自分の代わりはいないし。それに、フリーランスって意外と保守的になるんです。自分でできること、確実に稼げることしかやらなくなって、新しいチャレンジを避けるようになる。

「これはよくないな」と思っていた時期に、当時お仕事をよくいただいていたFICCの社長の荻野さんから「枌谷さんは、会社を作るつもりで、フリーランスになったんですよね? でも今みたいにそれなりに収入があって、人を採用することにビビってたら、ずっと起業できないですよね?」みたいにハッパかけられて、その1週間後には会社の登記をしに行きました(笑)。それがベイジの始まりです。尻たたきしてくれた荻野さんには今でも感謝しています。

偏愛を持つ人たちと集まるのが好き ヌーラボを立ち上げた理由

大谷:橋本さんも、起業当初は枌谷さんのように「会社らしさ」に違和感があったんですか?

橋本:そうですね。創業当時の僕もいわゆる“サラリーマン”に漠然とした反発を持っていました。たぶん当時聞いたり読んでいたりした音楽とか、本とかの影響もあると思うんですけど。

ヌーラボ 代表取締役 CEO 橋本正徳氏

大谷:橋本さんも「わりと腕のいいプログラマー」だったはずなので、1人でも十分やっていけたのでは?

橋本:実際、プログラマーとしてはちゃんと稼げました。さすがに2000万円は無理でしたけど(笑)。でも、なんか面白くない。満たされないんですよね。

一方で“徒党を組む”のは好きでした。きちんとした人たちというより、何か不器用なんだけど、特定のものに強いこだわりや愛を持っている人と一緒にいたいんです。

大谷:偏愛のある人たちと集まりたいんですね。

橋本:昔、菊池桃子が出演していた「テラ戦士ΨBOY」という映画で、超能力を持った少年少女たちが大人と戦うんですが、ああいう世界観がいいなと(笑)。

里見八犬伝とかもそうですよね。同じ球を持った人同士で集まって、すごい敵に立ち向かう。そういう関係性が理想なんです。

大谷:橋本さんのいう「球」ってなんなんでしょう。

橋本:ビジョンとか、共通の目的とか、そういうものですね。徒党というのも、たとえばコミュニティだったり、ファンクラブだったりで、僕の体験では劇団もそうですね。

大谷:なるほど。ここで「球」にあたるのは、チームワークマネジメントで重要な「目的の共有」という部分かもしれません。

マネジメントも、上下関係も好きじゃない

大谷:ヌーラボはグループ全体で180人超、ベイジも約50人と、それなりの規模になっています。マネジメントや組織作りはどう考えているんでしょうか?

枌谷:正直、会社員のときは、マネジメントとか、部下の面倒とか、本当にいやでした。自分がスキルアップするための時間が失われるじゃないですか。それも独立した理由の一つですね。

大谷:ごめんなさい。全然わからないです。だって今やっている経営って、マネジメントがメインの仕事じゃないですか。

枌谷:確かにそうですね(笑)。ただ、当時思い描いていたのは、自立したメンバー10人くらいが集まって、それぞれの役割を担うような組織でした。僕はデザイン、誰かがディレクション、誰かがエンジニアみたいな。当時、そんな言葉はなかったけど、いわゆる「ギルド型」の組織ですね。実際はまったく違う形になっていますが。

大谷:なぜ違う形になったのでしょうか? 

枌谷:基本的な会社の仕組みとして、社員の給与を上げていくには、ビジネスモデルを根本的に変えない限り、売上や利益を伸ばすしかありません。私たちのような労働集約の仕事は基本的に売上=人数なので、ビジネスモデルを変えずに売上を上げたかったら人数を増やすしかない。10人のまま人数を固定し、ビジネスモデルも変えないという条件で給料を上げ続けるのは至難の技です。「給与上がらないけど、この先10年・20年働いてね」とは社員には言えないです。

となると、やはり人を増やして、売上を上げて、利益率を維持向上し、利益額を上げていくことになります。そのうえ、10人未満の零細企業に完成された人が入ってくるわけもないので、「人を育てる体制」も必要になる。そうやって考えていくと自然とマネジメントのしくみやツリー状の組織が求められるようになるんです。

こうした経済合理面の理由もあるんですが、もう一つ大きいのが「変化」です。組織の景色を変えていかないと、みんな絶対飽きるだろうなあと思って。

橋本:わかります。3年で飽きますね(笑)。

枌谷:新しい人が入ってくると、みんな刺激を受けるし、それまで退屈に感じていた仕事が面白くなってくる。組織に変化があると、見える景色が変わってくるんですよね。

実際、10人の時と、50人近くになった今では、当時から在籍していたメンバーからすると全然違う会社に見えているはず。数年ごとに「会社の景色」が変わっていくことは、社員にとっても価値になるし、僕自身も飽きずにいられる。そういう意味でも、人を増やして組織を成長させていったところがありますね。

大谷:ヌーラボについても聞いてみたいのですが、人が増えてくると、組織体制等の整備が必要なのではないかと思うのですが。これくらいの規模がちょうどいいみたいなイメージはあったんですか?

橋本:僕は逆に「大きくなればなるほど楽しい」と思っていました。同じ志を持つ人が多いってワクワクしませんか?スタートは10人かもしれないけど、その10人のエッジの効いた思考が、時間が経って世界の半分くらいになったら面白いなと。経済的にも大きなインパクトを出せるし。

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