第563回 SORACOM公式ブログ

ソラコム公式ブログ

コストを抑えて既存インフラをIoT化!クレハ環境が実現したデータ活用と業務変革

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 本記事はソラコムが提供する「SORACOM公式ブログ」に掲載された「コストを抑えて既存インフラをIoT化!クレハ環境が実現したデータ活用と業務変革」を再編集したものです。

先月開催された株式会社ソラコムの年次カンファレンス、SORACOM Discovery 2025で、セッション「後付けで実現!コストを抑えた遠隔監視システムの構築」を実施しました。株式会社クレハ環境におけるIoT導入事例を通じて、その成功の鍵と具体的な成果がウェステック事業部 設備管理部 設備企画課 主任 河口 進氏から紹介されました。本サマリーでは、セッションで語られた3つの主要なポイントに焦点を当ててご紹介します。

IoT導入前の課題とDXへの挑戦

福島県に本社を構える廃棄物処理や環境エンジニアリングを事業とする株式会社クレハ環境がIoT導入前に抱えていた課題は、工場内の工業用水圧力低下により、焼却炉の安定稼働に支障が生じるケースがあったこと、また排水処理設備の能力増強に伴い、焼却炉での工業用水使用量を増加させたいというものでした。しかしこれらの課題に対し、水バランスの現状を把握するための有効な手段がないという問題がありました。

従来、計測データは分散制御システム(以下DCS)に取り込まれていましたが、DCSに取り込める容量が逼迫しており、追加の設備投資が必要であること 、また工場内各所から運転制御室までのケーブル敷設は、多額の工事費が掛かるという問題がありました。

これらを解決するため、クレハ環境はDCSを使わず、ケーブル敷設を最小限にするため、セルラー通信を利用してデータ収集する方法を検討しました。これはクレハ環境にとって初のDX化の試みとなりました。

コストを抑えたIoT導入の秘訣とSORACOMの活用

プロジェクトは2023年4月の展示会での情報収集から始まりました 。その後、仕様検討とメーカーとの打ち合わせを重ね、同年6〜8月には各社の比較テストを実施しました。比較検討の結果、コスト、通信安定性、収集データ数増加時の拡張性という観点から、IoTプラットフォームSORACOMを選択しました。

翌年1月から運用を開始しましたが、クレハ環境にはIoTに強い人材が不在でした。ただソラコムからの手厚いサポートもあり、システムの内製化に成功。検討開始から1年以内に運用開始できたことも特筆すべき点です。

また、DCSの増設やケーブル敷設に通常数百万円以上の費用がかかるところを、初期費用は機材などに約40万円、電気工事は約180万円、月額も約2000円と半額以下のコストで実現できました。これは、高額なDCSの増設や大規模なケーブル敷設が不要になったためです。

クレハ環境では、流量計や圧力計といったIoTデバイスで取得したデータを、データ通信サービス「SORACOM Air for セルラー」で送信し、データ収集・蓄積サービス「SORACOM Harvest」に保管しています。その後、ダッシュボード作成/共有機能を有する「SORACOM Lagoon」にて、データの可視化・グラフ化を行っています。4-20mAアナログ信号を出力できる機器であれば、このシステムでデータ収集が可能であり、高い拡張性・柔軟性も備えています。

データ「見える化」がもたらした具体的な成果

今回のIoT導入により、以下の具体的な3つの成果が達成されました。

リアルタイム監視の実現

水バランスをリアルタイム監視でき、工業用水のエリア別圧力の推移を可視化できるようになりました。特に、長年にわたり供給圧力が低く、炉の安定稼働に影響があったエリアについて、リアルタイム監視を通じて課題が明確になりました。

圧力低下問題の解消

使用量が極めて少なく圧力が高いエリアEと、圧力が低く安定稼働に影響のあったエリアBを配管接続工事によりバイパス化しました。その後の効果検証では、流量の大小にかかわらず圧力の底上げが確認されました 。

また冷却水量低下の警報は、工事前は月約100回発報していましたが、工事後は発報がなくなり、圧力低下が解消されました。さらに流量増加時の圧力低下が抑制され、供給能力がアップしたことで、焼却炉での使用量増加が可能となったことがわかりました。工事前後で各エリアの圧力差が小さく平準化されたことも確認されています。

検針作業の省力化

工業用水の取水制限時、従来は計器室から運転員が3台の水道メーターを1時間おきに現場確認していましたが 、クラウドで取得したデータ監視により取水制限値の超過がなく 、運転員による現場確認作業が不要となりました。

クレハ環境は、今回の成功を足がかりに、電力使用量(電流)、圧縮空気(流量・圧力)、空調管理(温湿度)、災害(水位)、騒音など、他用途への横展開も検討しています 。また、道路横断配管ラックの現状監視カメラでは検知しづらかった初期の漏水に対し、漏水検知システムを導入することでわずかな異変にも直ちに検知可能になると考えています。

本事例は、非IT人材でもソラコムのサポートを活用することで、コストを抑えながらDXを推進し、具体的な業務改善と新たな価値創造を実現できることを示しています。

IoTの活用にご興味をお持ちの方に向けて、株式会社ソラコムでは無料の相談会やお問い合わせを受け付けております。ぜひお気軽にご利用ください。

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