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10年目のソラコムが次を見せた「SORACOM Discovery 2025」基調講演レポート

「ソラコムがすべてをAIにつなぐ」 OpenAI Japanの長﨑氏もエール

大谷イビサ 編集●ASCII

提供: ソラコム

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 10年目を迎えるソラコムは、2025年7月16日に年次イベント「SORACOM Discovery 2025」を開催。今年のテーマはIoTとAIの交差点「Crossroad」。代表取締役社長の玉川憲氏などが登壇した基調講演には、OpenAIの長﨑忠雄氏もゲストで駆けつけた。アイリスオーヤマやスズキなどのユーザー登壇もあり、IoTとAIのソリューションの拡がりを感じさせる内容となった。

ソラコム 代表取締役社長CEO 玉川 憲氏とOpenAI Japan 代表執行役員社長 長﨑忠雄氏

ついに800万回線突破 森羅万象のあらゆるモノにSORACOMを

 ソラコム 代表取締役社長CEO 玉川 憲氏からスタートした基調講演は、最新のアップデートからスタートした。「世界中のヒトとモノをつなげ、共鳴する社会へ」を目指して、10年前に創業したソラコムは通信、クラウド、デバイスなどIoTに必要な要素をプラットフォームとしてユーザーに提供してきた。

ソラコム 代表取締役社長CEO 玉川 憲氏

 創業当初からスタートさせているグローバル展開も、今では213の国と地域、509キャリアにまで拡大した。グローバル売上比率も41.8%を達成し、ユーザー企業としてイギリスのSafety Shield、Sollatek、米国のBinSentry、Riddellなどが挙げられた。回線数もいよいよ800万回線を突破。玉川氏は、「八百万は『やおよろず』ということで、縁起が良い。森羅万象あらゆるものにソラコムが宿るところまでいきたい」と語る。

 最近、加速しているのが生成AIへの取り組みだ。2年半前からは東大松尾研究所との共同プロジェクトでIoTの社会実装をスタートさせ、サービスへの実装も進めてきた。データ分析ではSORACOM Harvest Data Intelligence、サポートの省力化ではSORACOM Support Bot、自動化の設定を可能にするSORACOM Fluxなどだ。ソラカメで静止画を定期的に取得し、不正侵入者を検知している大塚倉庫や、売り場の在庫状況を測定するコープさっぽろなど、具体的な導入事例も登場しているという。

 生成AIの劇的な進化により、現実世界のデータが価値に変わるようになった現在、10年目のソラコムは新たなミッションとビジョンを再定義。「Making Things Happen for a world that works together」を掲げ、現実世界のすべてをAIにつなぎ、よりよい未来を創造する「リアルワールドAIプラットフォーム」をプラットフォーム戦略としてうち出した。「ソラコムがすべてをAIにつなぐ」というシンプルかつ大胆な構想だ。

次の10年を見据えたリアルワールドAIプラットフォームの構想

 この構想を実現する第一歩として発表されたのが、MCPサーバーの提供開始だ。AIからSORACOM APIを実行できる。さらにリアルワールドAIプラットフォームを実現するサービス開発を加速すべく、OpenAI APIプラットフォームのChatGPT Enterprise契約を結んだことも発表された。

 ChatGPT Enterprise契約は、大規模なシステムへの組み込みを想定した強固なセキュリティと高度な管理機能を備えた法人向けのメニュー。生成AIを業務システムや顧客向けサービスに安全に組み込む際に求められる要件に、幅広く対応するという。「OpenAIは生成AIの先駆者。その素晴らしいテクノロジーをわれわれのサービスに取り込み、進化させていきたいと思います」と語った玉川氏は、OpenAI Japan 代表執行役員社長である長﨑忠雄氏を紹介した。

OpenAIの長崎氏が登壇 まだ見ぬ世界にソラコムと伴走したい

 ソラコム10年目を祝った長﨑氏は、OpenAIの成り立ちと最新動向を説明した。「全人類に利益をもたらす汎用AI(AGI)」を企業のミッションとするOpneAIは、ソラコム創業の翌年にあたる2015年に創業。「AIはディープラーニングによる予測や画像認識が主流で、まだ言語やチャットに及んでいないときに、AGIを作ることで、先進国、発展途上国問わず、すべての人を豊かにしていくというミッションを掲げた」と長﨑氏は語る。

OpenAI Japan 代表執行役員社長 長﨑忠雄氏

 そんなOpenAIはもともと研究機関として発足し、基幹モデルの研究からスタートしている。2022年にリリースされたChatGPTも、もともとは研究者向けのサービスだったが、わずか5日間で100万人、2ヶ月で1億人のユーザーが利用する規模に急成長してしまった。現在のユーザーは5億人を超えているという。「ある意味、研究者、開発者向けだったAIを一般の人が使えるように敷居を下げた1つのマイルストーンだったと捉えている」と長﨑氏は語る。

 個人向けのサービスを先行させたOpenAIだが、2023年には法人向けサービス「ChatGPT Enterprise」の提供を開始。当初はチャットインターフェイスのサービスだったが、今では業務改善や自動化を実現するAIエージェントに成長しているという。そして昨年2024年にはいよいよ日本法人を設立し、長﨑氏もジョインした。

 そんな長﨑氏は、「1年前と今を比べると、まったく景色が違う」と聴衆に語る。1年前はChatGPTもテキストベースのチャットがメインだったが、昨年は画像や動画、音声に対応したマルチモーダルに対応。その上で、人間のように会話と思考の連鎖を続けることで、回答に近づけていくリーズニングモデルを発表した。「これはAIにおけるパラダイムシフトの瞬間。数年後、AIの転換点はどこか?考えたら、OpenAIのリーズニングモデルが大きな影響を与えると思う」と長﨑氏は語る。

 こうしたマルチモーダルとリーズニングの基盤の上に、2025年はAIエージェントの時代になっている。OpenAIとしては、調査の自動化を実現する「Deep Research」、特定操作を自動化する「Operator」、そしてコーディングを自動化する「Codex」のほか、ユーザー側でAIエージェントを組み込むためのSDK、ユーザー企業への支援を提供しているという。

 OpenAIで特徴的なのは、ChatGPTのようなアプリケションと基幹モデルの間に位置するオーケストレーションレイヤーでのポストトレーニングに多くのコストと人材を費やしていることだという。機能だけではなく、安全性や倫理面も検証。製品を提供しつつ、ユーザーの利用用途やフィードバックを、研究開発に取り込み、よりよい製品に進化させるというのが、OpenAIの開発サイクルだという。「ソラコムが掲げた、まだ見ぬ世界への旅に伴走できることを非常に楽しみにしている」と長﨑氏は語った。

 前職のAWSで上司だった長﨑氏に玉川氏は、日本企業のOpenAIの利用動向を質問すると、「多くの日本企業はPoCを膨大にやっていた。一方、欧米の企業はChatGPT Enterpriseを導入し、社員の働き方をよくしたり、AIに慣れてもらっていた。今までほとんど認知度がなかったChatGPT Enterpriseだが、今年からは日本でもいよいよ導入され始めている」とコメント。最後、長﨑氏は、「まだ見ぬ世界を作るというのは、われわれがやっていることと同じ。ソラコムには40%を超すグローバル比率をもっと高めて、世界のソラコムとして羽ばたいてほしい」と玉川氏にエールを送った。

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