SORACOM Discovery 2025で描いた「データとネットワークの交差点のその先」
コカコーラも、ペプシも、ハイネケンも導入するIoTサービス SORACOMで世界中の40万台を見える化
SOC2 TypeⅡ受領でセキュリティも強固に 通信コアもリフレッシュ
続いて登壇したソラコム 片山氏は、SORACOMプラットフォームを支えるエンジニアリングチームの取り組みについて説明した。
現在、SORACOMの利用回線数は800万を突破しており、グローバルの売上も41.8%まで拡大している。1つのサービスで多くの回線を利用するユーザーも多いため、エンジニアリングチームでは、毎年目標を決めてシステムを更新している。具体的にはセキュリティや統制の強化、稼働率の維持と向上、数年先を見越した2000万回線を運用できるプラットフォームの構築を目指している。
こうした取り組みの1つが、セキュリティや機密保持への取り組みを第三者が監査したSOC2 TypeⅡ報告書の受領だ。昨年受領済みのTypeⅠは、監査した日の有効性を評価したものだが、今回受領したType Ⅱは一定期間の監査で継続して有効だったことを評価されたものだという。「セキュリティと機密保持に加え、可用性についても認めていただいている」と片山氏は語る。
通信コアの技術リフレッシュも実施した。10年前に構築したC言語ベースの通信コアをRustベースに変更し、すでに一部で利用しているという。実測値ではCPUの利用効率は3倍に上がり、メモリの利用量も25%削減。ARM化によりコスト効率も高まり、Rustを採用することで、動作の安定性にも寄与しているという。
さらに午前中に発表されたリアルワールドAIプラットフォームについても説明された。もともとソラコムは、アナログな物理世界のデータ化を進めてきたが、最近では生成AIの登場で集めたデータの分析がやりやすくなった。さらに今までつながっていなかった社内外のデータやナレッジも生成AIで取得しやすくなり、つなぐことから得られる価値も増大するという。
これを実現すべく、ソラコムでは顧客との連携に加え、自社でのノウハウのサービス化も進めていくという。この一環として発表されたのが、生成AIボットサービスの「Wisora(ウィソラ)」。生成AIを使ってきたソラコムのノウハウを元に、ユーザー企業のサポートや問い合わせの業務支援を実現するという。
クラウドでも通信でもないWisoraは、今までのソラコムのサービスと比べると、かなり毛色の違ったサービスだ。これについて片山氏は、「ソラコムのIoTサービスと関係ないのでは?と思われた方はいるかもしれませんが、われわれのねらいは社内・外にあるデータやノウハウをAIにつなぐプラットフォームとして、このサービスを推し進めていきたい」と語る。Wisora自身もすべて生成AIで実装されており、将来的にはWisoraを経由して、自然言語でモノへの制御を実現できるようにするとのこと。AIに重点をかけるようになったソラコムの次の方向性を示す象徴的なサービスと言えるかもしれない。
10年見てくれた人も、最近見てくれた人も、同じスタートライン
再度登壇した安川氏は、「IoTの部分でAIを利活用していくのはもちろん、さまざまなデータをAIにつなげていく。その取り組みの1つとしてWisoraを紹介した」と説明する。
10年目にして大きな戦略のシフトを遂げているソラコム。しかし、変わらないのは、お客さまの声から逆算して考える(Working backwards from the customer)」というサービスの設計思想だ。「お客さまの課題や実現したいことを聞き、プラットフォームとしてどのように役立つか考え、最小限の機能を実装して、お客さまにプライベートに提供し、サービスを向上させる」というサイクル。「これを10年絶え間なくやってきたし、これからも変わらない」と安川氏は語る。
このサイクルを速めるために利用するのが生成AIだ。安川氏は、Claude Codeを使って、複数のAIエージェントで開発を進めている様子を披露。生成AIにコードを書かせる縛りで、社内のハッカソンを行なったこともアピールした。
また、MCPサーバーの提供により、SORACOM APIをAIエージェントから呼び出し、自然言語で処理や可視化を扱えるようになる。安川氏は、ソラコムの課金トップ5をグラフを表示させるだけではなく、コスト削減案まで考えてもらえるというやや自虐的なデモまで披露した。
最後、安川氏は、「この10年、ソラコムをずっと見てきた方も、最近見てくれるようになった方も、同じスタートラインに立って、変わっていく世の中をいっしょによりよい未来にしていきたい。リアルワールドとAIが融合する未来にみなさんと進んでいけることを楽しみにしています」と聴衆にアピールして基調講演を終えた。



