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「SORACOM Discovery 2025」で語られたIoT・AIの現在地

大手企業3社デジタルトップの本音 “デジタル変革の総括”と“生成AI活用の勘所”

福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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生成AI定着化のポイント、変わる現場力と生成AIとの協働

ソラコム 松下氏:うまく、皆さんからAIの話を引き出すことができました。日本の生成AI活用の実態は、調査の切り口によっても全然異なる状況にあります。皆さんは、どんなアプローチで生成AIに取り組まれていますでしょうか。

ソラコム テクノロジー・エバンジェリスト 松下享平氏

H2Oリテイ 小山氏:モノを売ったり、サービスを提供したりするのは、実はAIとは遠い位置にあります。ただ、営業トークやマーケティングは、生成AIと対話しながら考えたほうが良いです。われわれは、データを外に出さないようにしつつ、全従業員のプラットフォームに生成AIを組み入れています。

私の所属するデジタルイノベーション室では、若い百貨店のメンバーと現場のユースケースを80個ほど挙げ、それぞれに最適化したプロンプトを通して「クマ吉」が答えてくれるといった仕組みを開発しました。生成AIを使っていると意識させず、“ググる”ような体験で、生産性を向上できます。ただ、使う・使わないは二極化してきており、いかに必要だと思ってもらうかは課題ですね。

フジテック 友岡氏:製造業においても、たくさんの本を読んで得てきた知識に簡単に到達できる、魔法の杖のような技術なはずですが、やはり使わない人は使わないです。スマホの登場時には、最終的に皆がガラケーから乗り換えましたが、AIはほっておけば皆が使うかというとそうはならない。

われわれは、AWSやSORACOMのコミュニティに入っていますが、大企業ではコミュニティを通じて学ぶといったアプローチが比較的うまくいくと思っています。ハンズオン形式などで最初の一歩を踏み出してもらえるかが重要です。

H2Oリテイ 小山氏:われわれも最初に、全役員にハンズオン形式でAIを体験してもらいました。上の人がやると、下の人もやらざるを得ないです。60代の役員でも、AIを体験することで会議で意見を出せるようになることが大きいです。

ソラコム 松下氏:生成AI活用を推進するには、意識させない仕組みを用意する方法やコミュニティを通じて学ぶ方法があるということですね。奥山さんはどうでしょうか。

ヤンマーホールディングス 奥山氏:生成AIは仮説策定や意思決定などに役立つ、ぐるぐるモデルをスピードアップさせる重要な手段だと位置付けています。例えば、機械が壊れた原因を突き止める際に、マニュアルなどをRAGでつなぐと効果が得られるのは間違いないです。ただその中で、上手くいかない事業部が出てくるのは、“期待値の調整”の差だと思っています。魔法みたいなことができると期待していると、データの不備で精度が上がらず、そこで止めてしまいます。

ソラコム 松下氏:その瞬間だけで評価を終えてしまうか、将来伸びしろがあるかを見極められるかは、テクノロジー全般でいえそうです。そう考えると、AIを活用するモチベーションがどこにあるかを、いろいろな角度から訴求していくのが「AIを使う側の責務」だと感じました。

H2Oリテイ 小山氏:一方で、勘や経験、自身で見極めたデータを基に成果を出してきた人達は、難しい立場に置かれつつあります。今後は、AIエージェントが全部をしてくれる。ただ、知見のある人を軽視するつもりはなく、彼らがAIを使うことで、AIの結果にひとひねり加えられるかもしれない。人ができることはまだまだあるので、これまで頑張ってきた人とも新しいものを生み出していきたいです。

フジテック 友岡氏:これまでは、「事実をつかむ力(ファクトファインディング)」が重要であり、その力こそが現場力でした。それをIoTに任せられるようになり、より細かい事実も得られるようになりました。

今や現場は、その事実にどんな意味があるのかを考えて、新しいものを生み出す、“思考能力”を試されるようになっています。試されている中、どうすれば良いか。生成AIに聞けば良いのです。こうして、「生成AIと協働して、より良い未来を見つけていく」のが今後の在り方ではないでしょうか。

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