丸の内の歴史的な街並みに佇む静嘉堂文庫美術館(明治生命館1階)で、知的な驚きと親しみやすさを両立した展覧会「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」が開催中です。本展には、古美術に馴染みがない方や親子連れでも夢中になれる“3つの魅力”がぎゅっと詰まっています。丸の内散歩の新定番に、ぜひ訪れてみませんか?
【魅力①】 国宝・重文もずらり!名品でめぐる神仏と人物の“物語絵巻”
本展の第一の魅力は、何といっても展示される作品の豪華さ。やまと絵に描かれる天皇や貴族の姿、仏画や垂迹画で表される神仏、禅宗や道教の人物画――いずれも国宝や重要文化財クラスの逸品が勢揃いしています。
たとえば、南北朝時代の「春日宮曼荼羅」や、極楽浄土の情景を細密に描いた「当麻曼荼羅」、国宝「禅機図断簡 智常禅師図」、中国・南宋の画僧・牧谿が描いた「羅漢図」、江戸時代の狩野常信「琴棋書画図屏風」など、日本と中国の美術の精華がずらり。前期・後期でほぼ全点が入れ替わるため、何度訪れても新たな発見があるのもポイントです。
教科書でしか見たことのない国宝や重文を間近に鑑賞しながら、絵画の細部に隠された物語や、当時の人々の価値観・美意識に自然と触れられる貴重な機会です。
【魅力②】 「謎解きワークシート」で、遊びながら学べる美術館体験
今回特に注目したいのが、美術館で配布されている「神仏と人物の謎にせまる! 謎解きワークシート」です。このワークシートは、子供から大人まで“参加者全員”が探偵気分で楽しめる内容になっています。
たとえば、「この絵の中に隠れている人物は誰?」「この人は何をしているところ?」といった設問が用意されており、ヒントを手がかりに作品をじっくり観察しながら、謎解き感覚で鑑賞を進めます。
子供にとっては、夏休みの自由研究や親子のコミュニケーションにもぴったり。答え合わせの瞬間には、美術の知識だけでなく、絵を見る視点や想像力もぐっと広がるはずです。もちろん大人だけの参加でも、「知る喜び」「解き明かす楽しさ」を再発見できる体験型プログラムとなっています。
【魅力③】 重厚な名建築・明治生命館で、美術と歴史を無料で“体感”する
丸の内エリアのランドマークでもある明治生命館は、昭和9年(1934年)竣工、古代ギリシャ・ローマ建築を思わせるコリント式列柱を備えた日本有数のクラシック様式ビル。岡田信一郎・捷五郎の兄弟設計によるこの建物は、昭和のオフィス建築の傑作として評価され、1997年には国の重要文化財にも指定されています。
この美術館自体が展示空間である一方、さらにおすすめしたいのが2階の無料見学コースです。ここでは、マッカーサー率いるGHQが使用した会議室や、重厚な応接室・食堂などを自由に巡ることができ、昭和の歴史の一幕を間近に感じられます。
吹き抜けの回廊、大理石柱、花飾りのレリーフやレトロなエレベーター――建物内部はまさに“時が止まったような趣”。音声ガイド(無料)もあり、その場にいた偉人たちの息づかいや歴史の余韻を、五感で味わえる体験は他にはありません。
建築好きの街歩きファンにとっては、丸の内散策の立ち寄り先としても格好のスポットです。館内をゆったり見学した後は、1階のミュージアムやショップで東洋古美術の名品を鑑賞。そして丸の内の街へ戻ってカフェ巡りやランチへ――そんな“日帰り文化散歩”はいかがでしょうか。
丸の内の歴史ある街並みと、重厚な名建築の中で出会う美術と謎解き――静嘉堂文庫美術館「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」展は、知的な遊び心を満たしながら、日常から少しだけ背伸びした“丸の内時間”を約束してくれます。
親子でも、大人同士でも、きっと思い出に残る発見が待っています。美術館の扉をくぐったその瞬間、あなたの日常にも、新しい「物語」と「歴史」が静かに始まるはずです。この夏は、丸の内で“美”と“謎”をめぐる特別な一日を過ごしてみませんか。
絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ
会期:2025年7月5日(土)~ 9月23日(火・祝)
前期 7月5日(土)~ 8月11日(月・祝)
後期 8月13日(水)~ 9月23日(火・祝)
※前後期でほぼ全ての作品入れ替え
時間:10:00~17:00
第4水曜日(7月23日、8月27日)は20:00まで、9月19日(金)、20 日(土)は19:00まで開館
(最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日、7月22日(火)、8月12日(火)、9月16日(火)
※ただし7月21日、8月11日、9月15日、22日は開館
会場:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
(東京都千代田区丸の内 2-1-1 明治生命館1階)
主催:静嘉堂文庫美術館(公益財団法人 静嘉堂)
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