「リアルワールド AIプラットフォーム」を掲げる10年目のソラコム

IoTのその先へ AIネイティブに進化するSORACOMプラットフォーム

大谷イビサ 編集●ASCII

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 「世界中のヒトとモノをつなげ、 共鳴する社会へ」を掲げ、通信、クラウド、デバイスを融合したIoTプラットフォームを提供してきたソラコム。10年目という節目の年に「リアルワールド AIプラットフォーム」の戦略を打ち出し、本来目指していたIoTの世界観をAIで実現するという。2025年7月9日に開催されたメディア発表会の模様をお伝えする。

ソラコムの代表取締役社長CEO 玉川 憲氏

生成AI×IoTのホワイトスペースでリーディングポジション

 登壇したソラコムの代表取締役社長CEO 玉川 憲氏は、まずソラコムの最新動向を披露した。2025年3月期の売上高は89億円で、6期連続の黒字を達成。契約回線数は700万を超え、グローバルの売上は41.8%に達した。また、主要顧客の解約率も0.4%におさえ、継続率は117%と高い数字を維持している。さらに2025年5月の丸紅との協業も含め、戦略的な提携も活用した成長戦略を推進。2024年3月の上場後も高い成長を実現していることが伺える。

2025年3月期のソラコムの現状

 グローバルでのカバレッジは、ついに213の国と地域、509の通信キャリアとなり、「あと20カ国くらいでコンプリート」(玉川氏)というレベルにまで来た。グローバル企業としてのプレゼンスも高まっており、調査会社Kaleido Intelligence社の「Connectivity Management Platform」においては3年連続でチャンピオンに選出され、評価も39位中2位となった。

 こうした高い評価の背後には、クラウドネイティブなコアネットワークの高い耐障害性に加え、貪欲なまでに生成AIを取り込んだ革新的なサービスの開発がある。2年前には、東京大学の松尾研究所との共同プロジェクトで生成AI×IoTの取り組みをスタートさせ、データ分析や自動化の分野でサービス化も進めてきた。

 こうした生成AI×IoTの取り組みに関しては、調査会社のForest&Sullivan社からも「グローバル生成AI・オブ・シングス 技術イノベーションリーダーシップ賞」を受賞しており、「競合他社がまだ手を付けていないホワイトスペース領域でのイノベーションを実現している」という評価を得ているという。

ホワイトスペース領域でのイノベーションを実現している

10年目の節目に新たなミッション MCPサーバーも用意

 こうした生成AI時代に10年目という節目を迎えたソラコムは、新たなミッション「Making Things Happen for a world that work together」を掲げた。また、AIやIoTのその先を意識した新しいビジョンを作り、新戦略として現実世界のすべてをAIにつなぐという「リアルワールド AIプラットフォーム」をうち出した。

新たなミッションステートメントとビジョン

 リアルワールド AIプラットフォームを実現すべく、SORACOMプラットフォームもAI Enableに進化させ、生成AIからの利用に対応する。具体的には、新たにMCPサーバーの提供を開始し、SORACOM APIをMCPクライアントから利用できるようにする。デモでは、ClaudeのMCPクライアントからSORACOMのAPIに接続し、課金トップ5サービスをグラフ化。分析結果からコスト削減の提案までもらうことが可能になった。

MCPサーバーの提供を開始

 また、新たにOpenAIの法人向けメニューである「OpenAI APIプラットフォーム」のエンタープライズ契約も締結。強固なセキュリティ対策と高度な管理機能を備えたプラットフォームの利用により、生成AIを組み込んだサービスとプロダクト開発を加速していくという。

 その他、製造や在庫期間のSIMの保持コストをゼロにする「テストモード」やセキュリティと信頼性を証明する「SOC2 type2報告書」の受領、IoT通信の大容量化に対応する新SIMの開発なども発表。ユーザーの声を着実に取り込みつつ、リアルワールド AIプラットフォームに向けて、さまざまな強化が行なわれていることが伺えた。

SORACOM QueryがGAへ 他キャリアのプロファイルも取り込み可能に

 後半に登壇したソラコムCTOの安川健太氏は、AIによってIoTが加速度的に進化するという未来像を提示。「われわれの目指す真のIoTの世界、リアルワールドとAIが融合した未来が実現できるんじゃないかと考えている」と語る。AIの活用を身近にするサービスとして「SORACOM Query」の一般提供開始(GA)を発表した。

ソラコム CTOの安川健太氏

 SORACOM Queryでは生成AIによる自然言語のクエリとBIツールとの連携で回線管理やIoTデータの分析を容易に行なえる。SORACOMプラットフォーム内に蓄積された通信管理情報から利用状況、通信量などの回線マネジメント情報を分析したり、SORACOM Harvest Dataに蓄積されたユーザーの時系列IoTデータを組み合わせて、特定の傾向や異常値の検出、予兆分析などが可能になる。

 GAに際しては、新たに「QueryアシスタントAI」機能を搭載し、SQLの利用なしにクエリが可能に。また、サードパーティ製品や自社サービスと連携できるQuery APIも提供される。MCPサーバーとの接続や、ダッシュボードサービスのSORACOM Lagoon、IoTの自動化処理を設計できるSORACOM Fluxなどとの連携も可能。2ヶ月無料で利用できるトライアルプランのほか、月額制のビジネスプラン、カスタム料金のエンタープライズプランが用意される。

 さらに、通信に関しては、SORACOMのSIM上で他社回線を扱うための「SORACOM Connectivity Hypervisor」が発表された。これは複数キャリアの利用を余儀なくされているユーザーの声に応えたもの。GSMAが公開したIoT向け次世代eUICC規格SGP.32に対応し、複数のSIMプロファイルの追加・切り替えをリモートから行なえる。安川氏は、「2025年、SORACOMはキャリアの垣根を超える通信管理プラットフォームになる」とアピール。すでに動作検証は行なっており、提供は2025年度内になるという。

キャリアの垣根を越える「Connectivity Hypervisor」

 なお、ソラコムは7月16日に年次カンファレンス「SORACOM Discovery 2025」を開催。「Crossroad」をテーマにIoTとAIの世界観をアピールしつつ、30にもおよぶセッションでテクノロジーを活用したビジネス変革の実践事例を紹介する。

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