来店は7割減、内覧対応に集中して、契約も“鍵をわたすだけ”に
問い合わせの7割は“自動で即レス” AIと電子契約で沖縄の不動産会社はどこまで変わった?
2025年03月10日 08時00分更新
入居申込から契約までの電子化で年間900時間の業務削減
一方の電子契約に関しては、2023年2月より全店舗において、入居申込から契約までの電子化を開始した。
「申込受付くん」と「電子契約くん」の連携によって、入居申込で入力された情報は、契約時にも署名者情報として反映され、電子契約だけを導入するよりも煩雑な作業が減っている。その後の契約においても、契約書の郵送が不要となり、IT重説もオンライン(Google Meetを利用)で実施するため入居希望者は来店不要に。賃貸借契約に付帯する、賃貸保証契約や駐車場契約まで電子契約で対応できる。
電子契約を始めるにあたっての、賃貸オーナーへの説明もスムーズに進み、稼働までの準備期間は1ヶ月ほどで済んでいる。一方、従業員への教育では、ベテランを中心とした社員の抵抗に苦労したという。とはいえ、「入れれば楽になる」(大湾氏)という確信はあったため、各店舗にリーダーを配置して不明点をすぐ聞ける体制を築いたり、支店を回って手とり足とり教えたりすることで、スタッフも電子契約の方が楽だと実感していった。
こうした取り組みの成果として、1年間で電子契約率は80%を突破。契約あたりにかかる業務時間は1時間から15分程度になり、本店だけでも年間900時間の業務削減につながった。大湾氏は、「電子契約のメリットはいろいろとあるが、一番は業務効率化。空いた時間を、内見の案内に費やせるようになったことが大きい」と強調する。
内見対応に集中、契約も鍵をわたすだけに ― 変わる不動産の顧客対応
社長の交代から1年にも満たない期間で、仲介業務から管理業務までの一気通貫な電子化を実現した琉信ハウジング。まだ沖縄の不動産会社では、電子化の機運が高まっていない中で、他県の成功事例をベンチマークにしながら、手探りでここまで漕ぎつけた。
業務は自動化が進んだことで、「内見の案内」や「契約の段取り」が中心になった。内見に手厚く対応できるようになったことで、内見の追加希望者も激減したという。顧客対応もメールより電話が多かったが、今では逆転している。「現在は、6名から4名体制に減っているが、売上は変わらずに、メールの問い合わせは30%ぐらい増えている状態」(大湾氏)。
店舗の様子も様変わりし、顧客の来店は7割近く減った。「飛び込みのお客さんには店舗で物件を提案していたが、今ではQRコードをスマホで読み取ってもらい、『近い条件が見つかったら知らせます』という対応に変わった」と大湾氏。繁忙期には、契約で来店した顧客で混雑していたが、今では鍵を渡すぐらいで静かなものだという。
今後は、紙の契約が残っている法人や社宅代行でも交渉を進め、“100%電子化”を目指していくという。加えて、沖縄の不動産業界における先駆者として、不動産間サイトであるイタンジBBを含むDXを普及させていく将来もにらんでいる。




