第507回 SORACOM公式ブログ

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暗号化とプライベート接続、IoT通信を守るSORACOMの活用法【後編】

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 本記事はソラコムが提供する「SORACOM公式ブログ」に掲載された「暗号化とプライベート接続、IoT通信を守るSORACOMの活用法【後編】」を再編集したものです。

こんにちは、ソリューションアーキテクト豊福 (ニックネーム : toyo) です。

本ブログでは、デバイス〜クラウド間通信を保護するアプローチの特徴と比較、SORACOM の活用方法について前後編に分けて解説します。

前編はこちらをご覧ください

SORACOM Beam・Funnel・Funk と SORACOM Canal・Door・Direct の使い分け

暗号化とプライベート接続はいずれも通信内容を保護する手段ですが、業界や企業のセキュリティポリシーによっては、暗号化されていたとしても、インターネット上の通信そのものが許容されないこともあるでしょう。そのようなケースでは、SORACOM Canal・Door・Direct によるプライベート接続が有効な選択肢になります。

暗号化とプライベート接続のいずれを選ぶべきか判断する際は、具体的な要件や利用シナリオを考慮することが重要です。選択肢を絞り込むためには、デバイスとクラウド間の連携形式や、サービス利用に伴うコストの観点から比較検討を行うと効果的です。以下では、それぞれの観点について解説します。

デバイス〜クラウド間連携の形式

求められるデバイス〜クラウド間連携の形式に対して、SORACOM Beam・Funnel・Funk と SORACOM Canal・Door・Direct の使い分けを考えてみましょう。

【1】 デバイスからクラウド方向の片方向通信のみ必要

「デバイスのデータをクラウドや顧客システムにアップロードしたい」といったシンプルな要件の場合、SORACOM Beam・Funnel・Funk を利用することで、デバイス側や運用管理の負担を軽減しつつ、暗号化によるセキュリティ確保が可能です。

【2】クラウドからデバイス方向を含む双方向通信が必要

デバイス〜クラウド間で双方向通信(例:遠隔制御、遠隔監視、デバイス連携など)を実現する場合、考慮すべき点が増え、実装も複雑になりがちです。まずは双方向通信が本当に必要かどうか、また要件を簡素化できないか検討することが重要です。

双方向通信が不可欠である場合は、こちらの資料をご覧ください。通信保護の手法 (暗号化 or プライベート接続) と併せて、実現したい IoT システムに最適なデザインパターン(「アプリケーションパターン」、「デバイスリードパターン」、「IPアクセスパターン」)を検討する必要があります。

IPアクセスパターンの双方向通信については、VPG Type-F2 によって、シンプルな構成で実現可能です。VPG Type-F2 については以下ブログもご覧ください。

【3】SORACOM Beam・Funnel・Funk がサポートしないクラウド連携が必要

SORACOM Beam は任意のサーバへのデータ転送を、SORACOM Funnel・Funk は特定のクラウドサービスへの連携をサポートしますが、すべてのデバイス〜クラウド間連携をカバーできるわけではありません。

実現したいデバイス〜クラウド間連携が SORACOM Beam・Funnel・Funk でサポートされない場合は、SORACOM Canal・Door・Direct の利用を検討する必要があります。

利用コスト

IoT システムの設計においてコスト管理も重要です。SORACOM Beam・Funk・Funnel と SORACOM Canal・Door・Direct の利用料を比較してみましょう。

SORACOM Beam・Funnel・Funk と SORACOM Canal・Door・Direct の料金体系概要は以下の通りです。料金詳細については、各サービスの料金プランを参照頂くか、ソラコムのセールスチームにご相談ください。

SORACOM Beam・Funnel・Funk SORACOM Canal・Door・Direct (VPG 有効時オプション機能)
通信内容の 保護手法 SORACOM〜クラウド間通信の暗号化 SORACOM〜クラウド間プライベート接続
基本料金 無し 有り (VPG 基本料金 + SORACOM Canal・Door・Direct 利用料金)
従量課金料金 (データ転送量) 有り (無料利用枠有り) 無し
従量課金料金 (使用時間) 無し 有り (無料利用枠有り)
コスト比較 (SORACOM IoT SIMのデータ通信利用料は含みません) 月額基本料金不要なため、デバイス数・通信量が少ないケースで SORACOM Canal・Door・Directより低コストとなり得る データ転送量に依存しないため、デバイス数・通信量が多いケースでSORACOM Beam・Funnel・Funk より低コストとなり得る

料金体系の違いから、データ通信量が少ないケースでは SORACOM Beam・Funnel・Funk が低コストになりやすく、多い場合は SORACOM Canal・Door・Direct が有利になる場合があります。

暗号化とプライベート接続のどちらが低コストとなるかイメージを掴むために、SORACOM Beamを例として、以下条件で月間利用料を計算してみましょう。(各サービスの詳細については、こちらを参照ください)

  • デバイス数 : 50
  • データ送信頻度 : 1回/分/デバイス
    • SORACOM Beam では1回のデータ送信を「2リクエスト」とカウントします

この条件では、SORACOM Beam の月間リクエスト数は以下の通りです。

50 [台] × 2 [リクエスト/分/台] × 60 [分] × 24 [時間] × 31 [日] = 4,464,000 [リクエスト]

SORACOM Beam・Funnel・Funk の月間無料枠 100,000 [リクエスト] を考慮すると、SORACOM Beamの月間利用料 (31日想定) としては以下のようになります。

(4,464,000 – 100,000) [リクエスト] × 0.00099 [円/リクエスト] = 4,320 [円/月]

プライベート接続の場合、 VPG Type-F と SORACOM Direct (専用線接続サービス) を利用する場合、SORACOM のプライベート接続に対する月額利用料 (31日想定) は以下の通りです:

40,920 [円/月] (VPG Type-F 基本料金) + 8,184 [円/月] = (SORACOM Direct 利用料金) = 49,104 [円/月]

プライベート接続の場合、上記 SORACOM の利用料に加えて、お客様クラウド側でプライベート接続を終端するための追加料金が発生します。

この条件 (50台で1回/分/デバイスのデータ送信頻度) では、SORACOM Beam (暗号化) の方が VPG + SORACOM Direct (プライベート接続) よりも低コストでの運用が可能です。

一方、データ通信量がさらに多い場合 (例: 5,000台で1回/分/デバイスのデータ送信頻度)、SORACOM Canal・Door・Direct を利用したプライベート接続が低コストとなる可能性があります。

「アプリケーションサービス等利用料割引」について

SORACOM Beam・Funnel・Funk は、お客様専用ゲートウェイ VPG (Virtual Private Gateway) (全てのType) と併用可能です。VPG を利用する場合、「アプリケーションサービス等利用料割引」によってSORACOM Beam・Funnel・Funk の従量課金は発生せず、VPGの月額利用料 (VPG Type-E 8,184 円/月〜) に組み込まれます。

SORACOM Beam・Funnel・Funk のコストを抑えたい場合、または VPGの機能も必要な場合、SORACOM Beam・Funnel・Funk と VPG の併用構成もご検討ください。 

SORACOM Beam・Funnel・Funk と SORACOM Canal・Door・Direct の併用構成

SORACOM Beam・Funnel・Funk と SORACOM Canal・Door・Direct の使い分けについてご紹介してきましたが、IoT システムの要件によっては両方が必要なケースも考えられます。

1つの SIMグループに対して SORACOM Beam・Funnel・Funk と VPG (SORACOM Canal・Door・Direct も有効) を有効化することで、暗号化された通信で効率的にクラウドと連携しつつ、機密性の高いデータはプライベート接続先に転送する、といった併用構成も可能です。

なお併用構成上の注意点として以下をご留意ください。

  • SORACOM Beam・Funnel・Funk のデータ転送先 FQDN(Fully Qualified Domain Name)の名前解決のため、VPG (Type-F・G・F2) の設定で「インターネットゲートウェイ」を有効化してください。
  • デバイスの VPG 経由のインターネットアクセスを禁止したい場合、VPGのアウトバウンドルーティングフィルターで制御可能です。
  • デバイス側で SORACOM Beam・Funnel・Funk と SORACOM Canal・Door・Direct の通信先を分けてデータ送信する。
  • 暗号化向け通信は、デバイスから SORACOM Beam・Funnel・Funk または Unified Endpoint のエンドポイント宛にデータを送信
  • プライベート接続向け通信は、デバイスからの通信先が SORACOM Canal・Door・Direct の接続先設定 (例: SORACOM Canal での Amazon VPC アドレスレンジ) に含まれるよう設定する。必要に応じて SORACOM Junction Redirection や、VPG Type-F2 のルーティングテーブルを利用して経路制御を行う。

前編のまとめと後編へ

IoTシステムを設計する際は、デバイスの処理負荷やクラウド連携の形式、利用コストなどをバランスよく考慮しながら、SORACOMの暗号化やプライベート接続を適切に組み合わせることが大切です。それぞれのサービスの特徴を踏まえて検討し、ご自身の環境に合った方法を選んでみてください。

SORACOM は IoTシステムを実現するための多彩なサービスを提供していますが、どのサービスを選ぶのが最適か迷われることもあるかもしれません。このブログの内容が少しでも検討のお役に立てば幸いです。何かご不明な点があれば、ソラコムのセールスチームまでお問い合わせください。

また、IoT の基礎知識から実践的な活用方法までを学べる書籍として、ソラコムのメンバーが執筆した「IoTの知識地図」が発売されています。本ブログでは触れきれなかった内容も含め、IoT に関するさまざまな視点を網羅的に解説していますので、ぜひお手に取ってご覧ください。

― ソラコム 豊福 (toyo)

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