第7回 連載:「おしゃべりな機械」たちの世界へようこそ!

スマートリモコン本体、スマホアプリ、クラウドサービスの間で行われる“おしゃべり”

スマートリモコンの“頭脳”はどこ? 仕組みを知って使いこなそう

kinneko イラスト● ella why 編集● ASCII

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冬の寒さが本格化し、室内を快適にするためのスマートリモコンの便利さをあらためて感じる時期です。外出先から自宅のリモコンをコントロールできれば、帰宅する前にエアコンで部屋を暖めておくことができます。帰宅してから寒い部屋でエアコンが効いてくるのを待つ必要はありません。

 前回記事では、市販のスマートリモコン「SwitchBotハブミニ」(以下、ハブミニ)を使い始めるための設定を行いました。今回は、リモコン操作したい機器をスマートフォンアプリケーション(以下、スマホアプリ)に登録して、実際に操作することで、その仕組みを見てみたいと思います。

 第4回記事で作った“自家製スマートリモコン”では、操作したい機器の情報(機器と“おしゃべり”する言葉=機器に送信する信号)を、マイコンのプログラムに直接書き込んでいました。そのため、新しい機器を追加したい場合はプログラムの書き換えが必要で、簡単には追加できませんでした。さらに、操作対象の機器が増えればプログラムも複雑になり、マイコンの処理能力が不足するという問題もありました。

 一方、ハブミニのようなクラウド型スマートリモコンでは、操作したい機器の情報をクラウド上で管理します。手元にあるスマートリモコン本体やスマホアプリは、クラウドのAPIサーバーと通信をして、クラウドからの指示に従って動作する仕組みです。処理の中心となる“頭脳”はインターネットの向こう側、クラウド上にあるのです。

 そのため、操作対象に新しい機器を追加する場合も、スマートリモコン本体やスマホアプリに手を加える必要はなく、クラウド上の情報を更新するだけで済む柔軟さがあります。さらに、“頭脳”をクラウド上のサービスとして実現することで、クラウドサーバーの十分な処理能力を使って、多数のユーザーや機器との通信を行うことができます。

 大まかな仕組みはこのとおりですが、スマートリモコンを操作する際にスマホアプリとクラウドサービス、スマートリモコン本体の間でどんなおしゃべり(通信)が交わされているのか、順を追って見てみましょう。

 スマホアプリは、クラウドサービスに登録されている操作対象の機器やスマートリモコンの情報を取得して、リモコン画面を生成しています。画面上のリモコンボタンを押すと、その情報はクラウドサービスに送信されます。

 「ボタンが押された」という情報を受け取ったクラウドサービスは、スマートリモコン本体に「赤外線信号を送信して」という指示を、送信する内容(操作対象機器とボタンに対応した信号)と共に送ります。スマートリモコン本体は、その指示に従って赤外線信号を送信するだけです。

 このようにクラウドを間にはさむことで、おしゃべりを行う相手や話す内容を限定することができ、スマートリモコン本体やスマホアプリのプログラムを単純なものに保つことができます。単純化することで間違ったおしゃべりによる誤動作を防ぐだけでなく、本体やアプリの開発、保守が簡単になるというメリットもあります。

SwitchBotアプリケーションを使ったスマートリモコンの設定

 操作対象とする機器の情報をクラウドサービスに登録するには、スマホアプリを使用します。ハブミニを使って、具体的な登録の流れを見ていきましょう。ここでは第4回記事で使った、100円ショップ(ダイソー)で購入したLEDライトを登録してみます。

(1)アプリを起動して操作対象のハブミニを選択 (2)「リモコンを追加」ボタンをタップ (3)「ライト」を選択 (4)「リモコンの手動学習」を選択

(5)一覧から「ダイソー」を選択 (6)「リモコンライト(イルミネーション)」を選択 (7)「ON」ボタンを押して動作確認 (8)「保存」ボタンをタップ

(9)デバイスに名前を付けて保存 (10)リモコンが登録された (11)これでスマホの画面をリモコンとして利用できます

 SwitchBotアプリには、SwitchBotシリーズの機器やいくつかの主要な機器に対応した「事前設定」が用意されています。これらの機器であれば、あらためて登録することなく、すぐに操作ができるはずです。

 実は、手元にある100円ショップのLEDライトも事前設定が用意されていました。しかし、実際に操作してみると、正常に動作したのは電源のオン/オフボタンだけで、ほかの操作(ライトの色を変える、明るさを変えるなど)はうまく動作しませんでした。同じ外見、同じ型番のLEDライトなのですが、おそらくは製造時期やロットの違いで内部の仕様が変わり、おしゃべりする言葉(受信する信号)も変わってしまったのでしょう。

 このLEDライトを正しく操作できるようにするためには、付属のIRリモコンが発信する信号をあらためて登録し直す必要があります。アプリのリモコン画面を「編集モード」にし、リモコンのボタンを1つずつ押しながら赤外線信号をハブミニの本体に送って、その信号を学習するかたちで新しい設定を登録します。

* * *

 前回と今回の記事では、SwitchBotのハブミニを例に、市販スマートリモコンの仕組みや設定方法を見てみました。

 実際に使ってみると、初期設定には結構な手間がかかることが分かります。また、他社製の機器を操作する場合は、事前登録された設定ではうまく動作しない場合があることも分かりました。もちろん手作業で登録することはできますが、リモコンのボタンを1つずつ押して信号を学習させる作業には手間がかかり、やはり少し面倒です。

 市販製品として販売されているものの、スマートリモコンをスムーズに利用するためには、スマートリモコン本体/スマホアプリ/クラウドサービスのそれぞれがどんな役割を持ち、互いにどんな通信しているのかを理解しておくことが大切です。今回の記事がその理解に少しでも役立つと幸いです。

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