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Core Ultra 200Sでの自作にさらなる選択肢

カジュアルゲーマー向けマザー“AYW”はなぜ生まれた?Z890 AYW GAMING WIFI Wに見えるこだわり

2024年12月08日 10時00分更新

文● ジサトラユージ/ASCII 編集● ASCII

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同価格帯のマザーボードとはどう違うのか?

 ASUSでは、Z890 AYW GAMING WIFI Wに近いスペックのエントリー向けマザーボードとして「PRIME Z890-P-CSM WIFI」や、販路限定ではあるが「Z890 MAX GAMING WIFI7」などのラインアップを展開している。

左がPRIME Z890-P-CSM WIFI、右がZ890 MAX GAMING WIFI7。かなり似ているが、SSDのヒートシンクの有無や一部スペックに違いがある

 それらの製品とどういった点で差別化されているのか。1つは先述したデザイン面だ。特にZ890 MAX GAMING WIFI7は、M.2スロットのヒートシンクやQ-Designなども省かれたかなりシンプルな設計になっているため、PC自作初心者が選ぶのには少々難易度が高いということもある。

 その他、スペック的な差異については、メモリー周りの仕様などがある。他のエントリーモデルはメモリースピードが8400MT/sまでのサポートなのに対して、Z890 AYW GAMING WIFI Wは上位モデルと同等の9066MT/sまでサポートしている。

ASUSのAEMP IIIやDIMM Fitといった機能により、メモリーのパフォーマンスを引き出しやすくしている

 次世代のメモリーモジュール規格であるCUDIMMが登場したことによって、従来よりメモリーの高クロック化が可能になっている。それに加えて、「ASUS Enhanced Memory Profile III(AEMP III)」や「DIMM Fit」といった独自の最適化技術により、メモリーオーバークロックの調整もしやすいため、高クロックメモリーのパフォーマンスも引き出しやすい。

 ゲームにおいて、メモリーによるボトルネックを防げるという点は、Z890 AYW GAMING WIFI Wの1つの利点だ。

 また、USB周りの仕様でも利点がある。本機はUSB 20Gbps(USB 3.2 Gen 2x2)用のヘッダーを搭載しており、対応したPCケースを選べば、高速なフロントインターフェースが使用できる。最大30WのUSB PD-PPSにも対応し、急速充電も可能なため、PCのUSBポートでよくデバイスを充電する人などには嬉しい機能だ。

同社の他のエントリー向けマザーボードでは搭載していない、USB 20Gbps用のヘッダーを搭載。フロントインターフェースでデバイスの充電などがしやすくなる

 背面のUSBポートについては、USB 20Gbps×1、USB 10Gbps Type-A×3、USB 2.0×4といった構成。PRIME Z890-P-CSM WIFIと比べると、PRIME側はThunderbolt 4を搭載している一方、AYW側はUSB 10Gbpsポートの数が多い。

 ビジネスをはじめ様々な用途が想定されるPRIME Z890-P-CSM WIFIには、外付けストレージによる拡張などで使いやすいThunderbolt 4を。ゲーム向けのZ890 AYW GAMING WIFI Wには、必要十分な速度でより多くのデバイスを接続できるように、といった方向性だろうか。

背面インターフェースは、DisplayPort、USB 20Gbps×1、USB 10Gbps(USB 3.2 Gen 2)Type-A×3、USB 2.0×4、2.5GbE、オーディオジャック×3など

 一方で、Z890 AYW GAMING WIFI WにはWi-Fi 6までしか対応しないという弱点もある。ただ、この辺りはカジュアルゲーマー層では実際それほど気にしなくてもいいかもしれない。

 というのは、Wi-Fi 7環境の普及がまだそれほど進んでいないという実情があるためだ。Wi-Fi 7に対応したルーターを導入したとして、実際にそのパフォーマンスを生かすとすれば高速なインターネット回線も必要になる。

 また、Wi-Fi 7では6GHz帯において最大320MHzの帯域幅を利用できるのが大きな利点だが、現状6GHz/320MHzでの接続に対応するデバイスはあまり多くはない。

 その他、デスクトップPCはスマートフォンやノートPCと違い持ち運ぶ機会が少ないので、有線LAN環境を構築しやすいというのもある。PCゲーマーでは接続の安定性の面から、有線LAN接続を好むユーザーも多い。

 こういった点から、無理にWi-Fi 7をサポートせず、コストカットを重視した……という理屈は通るのだが、将来的な可能性を狭めるという点では「思い切った選択だな」という印象は受けた。

Z890 AYW GAMING WIFI Wの主なスペック
対応ソケット LGA 1851
チップセット インテル Z890
フォームファクター ATX
メモリースロット DDR5×4(最大192GB)
対応メモリークロック 最大9066+MT/s
拡張スロット PCIe 5.0 x16×1、PCIe 4.0 x16(x4動作)×2、PCIe 4.0 x16(x1動作)×1
ストレージ
インターフェース
M.2(PCIe 5.0 x4)×1、M.2(PCIe 4.0 x4)×3、SATA3(6Gbps)×4
ネットワーク 2.5GbE、Wi-Fi 6
サウンド Realtek Audio Codec
リアインターフェース DisplayPort、USB 20Gbps×1、USB 10Gbps Type-A×3、USB 2.0×4、2.5GbE、オーディオジャック×3など
M/B上インターフェース Thunderbolt(USB4)ヘッダー×1、USB 20Gbpsヘッダー×1、USB 5Gbpsヘッダー×2、USB 2.0ヘッダー×2など
実売価格 4万8000円前後

また1つ広がったASUSのラインアップ
自分に最適なマザーがきっと見つかる

 コンシューマーゲーム機の価格高騰、ゲームメーカーのPC市場への進出などもあり、今までコンシューマーゲーム機で遊んでいたゲーマーがPCに移行するという場面も増えているように感じる。これまで以上にPCに触れるユーザーが増えたことで、求められるスペックも多様化した。ゲーマー向けの新たなラインを構築したのはそうした状況に対応するためだろう。

 とはいえ、Z890 AYW GAMING WIFI Wはエントリー向けのスペックであるため、ハイエンドのPCを組むとなると必ずしも最適な選択肢にならない場合はある。

 パワーステージは12+1+2+1基と必要十分といった設計だが、ハイエンドのCPUを高パフォーマンスで使おうとするとより上位のマザーボードのほうが安定した運用ができるだろう。

 また、上位のマザーボードほどツールレスで組み立てなどがしやすい設計になっているので、PC自作初心者ほど実は上位のマザーボードのほうが組みやすかったりする。そのほか、LEDによる装飾や背面インターフェースの拡張性など最適なスペックは人それぞれだ。

 前述したように、ASUSでは用途によって様々なラインアップを展開しており、自分に合ったモデルを選定しやすいのが強み。Z890チップセット搭載モデルのクラス別オススメ機種については、以下の記事でも紹介しているのでぜひ参考にしていただければ幸いだ。

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「ROG MAXIMUS」、「ROG STRIX」、「TUF Gaming」、「ProArt」、「PRIME」など、ASUSのラインアップは用途や価格に合わせて選べるのが強み

 新たなシリーズが加わったことで、より広くスペックを選べるようになったASUS製マザーボード。これからPC自作を始める人から、ゴリゴリのハイスペックPCを組んでみたいという人まで、同社のラインアップならきっと“あなたのお望みのままに”組めることだろう。

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