SORACOM Discoveryに登壇した3社のIoT事例
ジムでも、工場でも、発電所でも設備運用はソラコム “IoT×AI”で小さく始めて楽になる
北海道ガス:発電所や温水機の運用・管理を“楽にする”IoT化の数々
北海道ガスは、ガスはもちろん電気、熱、省エネサービスまで提供する総合エネルギーサービス会社だ。ガスにおいては約60万件、電力においては約24万件の顧客を抱える。
同社が披露したのは、自社だけではなく、顧客の設備運用も楽にする取り組みだ。
まず自社設備の運用においては、発電所の設備画面を遠隔チェックする仕組みを低コストで構築。同社の発電所には、発電機や各種機器を動かすためのネットワーク的に孤立したOT設備がまだまだ存在する。北海道ガスのエネルギーシステム部 係長である國奥広伸氏は、「OT設備に問題が生じると、専用PCの画面に警報が表示される。ネットにつながっていないので現場で目視しなければという、アナログな問題で苦労していた」と説明する。
この問題を、画面を撮影して送るという「非常に単純な方法」(國奥氏)で解決した。Raspberry Piで写真を撮り、AWSのAmazon S3にアップして、自社用のポータルサイトから確認できる仕組みを構築。加えて、Raspberry Pi側で画像解析を行い、問題が発生時には自動通知される。常時接続せず、1分で1回定期実行するなどコスト面での工夫もなされ、「外部では数百万かかる費用を最小限に抑えた」と國奥氏。
高度な取り組みとして発電所の予知保全にも取り組む。発電所は、ガスエンジン式の発電機であるため、ポンプが停止すると発電が止まってしまう。大きな損害を生むとはいえ、なるべく低コストでかつコードを書かずに予知保全がしたいということで、「Amazon Monitron」を導入した。
これはAWSの提供する産業用の機械学習サービスであり、センサーとゲートウェイ、アプリケーションで構成される。Amazon Monitronでポンプの振動を常時計測、ゲートウェイとLTEルーターを有線LANなどでつなぎ、SORACOM Airを介してデータを取得する仕組みだ。この仕組みで、振動計測のために現場を訪問することなく、常時検測で安心感も高めている。
続いては、顧客の設備運用を楽にする取り組みだ。北海道の業務用建物では、温度調整はセントラル空調方式で冷温水を這わすことが一般的で、これには「吸収式冷温水機」が用いられる。同機器は、冬と夏で負荷が増減するためチューニングをすると省エネにつながるが、顧客側の負担が大きかった。顧客を支援するために開発したのが、遠隔省エネのIoTサービス「i-Ch」だ。
同サービスでは、吸収式冷温水機用の制御盤を提供し、冷温水の温度に合わせて機器を最適化して、遠隔制御も可能にする。制御盤は、ゲートウェイとマイコン、各種モジュールで構成され、アナログ信号のやり取りや温度計測などを担う。クラウドとはデータ転送サービス「Soracom Beam」を介してつなげている。LTEモジュールを搭載しているため、LAN工事などの初期費用も不要。すぐに省エネを実感できるサービスだ。國奥氏は、「実際に10%前後省エネできていると好評、お客様自身がコントロールせずにすむため、省人化にも寄与している」と強調した。