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CMC_Centralで聞いたコミュニティマネージャー側の視点

KPI、熱量、自走化の課題 コミュニティ運営のベテランたちが語り尽くす

2024年09月06日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 コミュニティマーケティングの知見を集めた6月の「CMC_Central」。コミュニティマネージャー3人によるパネルディスカッションは、運営企業側から求められるKPIを中心に、継続するための熱量や自走化をテーマに据えた。コミュニティマネージャー必見のトピック満載だったセッションの模様をレポートする。

登壇した長橋明子さん、岡本秀高さん、松下MAX享平さん

好きすぎて中の人へ 参加者の気持ちもわかる3人の登壇者

 コミュニティマーケティングの知見を集約したCMC_Central 2024の中でも特に注目度の高いコミュニティマネージャー向けセッション。冒頭、モデレーターの長橋さんは、会場の参加者について挙手にて調査。コミュニティの運営に関わる参加者は7割、そのうちSaaS・サブスクビジネスに関わるユーザーはそのうち半分。「ほぼほぼテーマ設定通りの方に来てもらった」と満足そうな長橋さんは、さっそくパネルをスタートさせる。

 パネラーの一人目はIoTプラットフォームを手がけるソラコムのテクノロジーエバンジェリストである松下享平さん。自己紹介のスライドで強調したいのは、MAXというニックネームだという。コミュニティの関わりとしては、AWSのユーザーグループであるJAWS-UGの参加者・運営者としての立場、そして自身が所属するソラコムのユーザーグループであるSORACOM UGのコミュニティとの窓口という立場という2つがある。「もともと外の人の時にSORACOM UGを立ち上げ、好きすぎて、ソラコムに入社したという経緯があります」と説明した。

 パネラーの二人目はオンライン決済を手がけるStripeのデベロッパーアドボケイトである岡本秀高さん。JAWS-UGやWordPressのコミュニティの参加者・運営者を経験しており、2回の転職もコミュニティ経由だ。前職でStripeのコミュニティを立ち上げた結果、「好きすぎて、Stripeに入ってしまった(笑)」という経緯まで松下さんと同じだ。「オンライン決済のプラットフォームなので、コミュニティでも開発やマネタイズの話をしている」とのこと。

 そしてモデレーターの長橋明子さんは、LINE WORKS、Automation Anywhereなどでユーザーコミュニティの立ち上げに関わり、今はAsana Japanでマーケティングをリードする。個人としてはB2Bマーケティングの博士課程を目指す研究者としての側面も持ち、コミュニティマーケティング推進協会のフェローにもなっている。

コミュニティマーケティング運営で一番知りたいKPIの課題

 コミュニティの裏も表も知り尽くした3人が語る最初のテーマは、まさに参加者が知りたいテーマと言える「コミュニティを運営するにあたってのKPI(評価指標)」だ。「コミュニティを立ち上げたい人からしたら、最初に聞かれるど真ん中のテーマじゃないですか?」と長橋さんはコメントする。

 これに対して、岡本さんは「社内にレポートする数字としては、開催頻度、参加者数、事例の数。それらの定数的な指標とは別の定性的なトピックとして、Stripeについてどんな話していたか。いいところ、改善点、そしてユースケースなどを社内に共有している」とのこと。営業や製品開発に情報を共有することで、ユーザーに対する「インサイト(洞察)」を得られるという。

 「インサイトってどういうことですか?」と長橋さんは、参加者を代弁する形で質問すると、岡本さんが「プロダクトチームやデベロッパーリレーションチームが想定したのと異なっていたこと」と説明。要はベンダー側とユーザー側のギャップだ。たとえば、Webhookにハードルを感じているという話」と語ると、松下さんは「『そういう使い方があったのか系』の話と 『簡単だと思っていたのに、みんな苦労しているんだな系』の話ですかね」と応じる。追加で岡本さんは「もっと説明すべき前提知識」「社内の人が気づかない強み」などを挙げる。

 こうしたインサイトをどのように社内にフィードバックしているのか? StripeではYouTubeにアップしているので、それを共有したり、キーとなるユーザーは社員に引き合わせたりしている。「それはKPIになるの?」という長橋さんの質問に対して岡本さんは、「数字としては残らないが、ほかの社員からの評価で、岡本が持ってきたインサイトがこんな役に立ったというフィードバックとして戻ってくる」とコメント。定数的な評価ではないが、定性的なコメントがインサイトとしてコミュニティの価値を向上させているわけだ。

 参加者数は目標というより、むしろ現状を把握するためのヘルスチェック。数字よりも、「どれだけ事例やインサイトが集まったか?」といった定性的なフィードバックの方が社内からは期待されているという。

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