NB-IoTで衛星通信を実現するSkylo CEOがサブライズ登壇
真のIoTはこれだったのか? もう1つの基調講演で安川CTOが問いかける
国内最大のIoTイベント「SORACOM Discovery 2023」の2日目は対面開催。午後の基調講演は安川健太CTOが登壇し、データ活用、生成AI、衛星通信、ソラカメなど、午前中の基調講演で説明したトピックとサービスをより深く掘り下げる。その上で、今のIoTは果たして真のIoTなのかという自問とともに、AIを活用すべき理由について持論を披露した。
8年前から「つなぎ続けてきた」ソラコム
現地開催で行なわれたSORACOM Discovry 2023の2日目、午前中の基調講演を深掘りする形で行なわれたのがソラコムCTO 安川健太氏の「つながる未来のその先に AIと“真のIoT”」と題されたもう1つの基調講演だ。
タイトルにある“真のIoT”とはなにか? 安川氏は「IoTとはなにか? これをきちんと説明できる人は世の中にはいなくて、それぞれにいろいろなバックグラウンドを持ちながら使っている言葉だと思います」と語る。そんな安川氏にとってのIoTとは、人とモノが有機的につながり、お互い連携しあって、よりよい世界を実現していくというものだという。「世界中の人とモノをつなぎ、共鳴する世界へ」。これを実現するため、2015年に立ち上げたのがソラコムだ。
SORACOMのプラットフォームはデバイスとクラウドの間で、デバイスの制約や管理、通信回線、セキュリティ、クラウドの構築と連携など、さまざまなIoTの課題を解決する。最初にリリースしたSORACOM Airはクラウドコネクティビティを提供し、APIやWebコンソールで回線を自在に管理できる。
そして、同時にリリースされたSORACOM Beamでは、メタデータ付与やプロトコル変換などを提供するデータ転送支援サービス。「まずデータ通信量を大きく削減できるし、SORACOM側でいったん受け取ってから送るので、テスト用から本番用にサーバーを切り替えることもできる」と安川氏。玉川氏の基調講演で取り上げられた通り、Google IoT Coreのようなサービス終了でも、デバイスをいじることなく、別のサービスに切り替えることができる。通信サービスであるSOARACOM Airとは明らかに異なるベクトルでソラコムの次の方向性を示した記念すべきサービスだと改めて思う。
こうして通信も、デバイスも、カバーするサービスを最初に出したおかげで、ユーザーからの支持を得たソラコムは、「Working Backwards From The Customer」を掲げ、顧客の声から逆算してサービスを作り続ける。クラウドへの接続を容易にするSORACOM Funnel、クラウド上のFaaSを呼び出せるSORACOM Funk、データ保存や可視化を実現するSORACOM Harvest、SORACOM Lagoon、データ形式をクラウドで使いやすいように変換するSORACOM Orbitなどのサービスだ。
その他、クラウドとデバイスを安全につなぐためのVPG(Virtual Pribvate Gateway)、VPCとつなげるSORACOM Cannal、インターネット上からSORACOMにつなげるSORACOM Arcなどもリリース。2週間に1回のペースで新機能や機能改善を続け、サービス開始から8年で、昨年末には500万回線を突破した。
大規模なデータ分析のニーズに応える「SORACOM Query」
こうして顧客の声を元にサービスを作ってきたソラコムが、次のニーズとして考えているのがIoTデータの収集と分析だ。安川氏に紹介を受けたソラコム シニアソフトウェアエンジニアの川上大喜氏が登壇し、大規模なIoTデータの収集と分析について説明した。
川上氏は、大量のFleet(IoTデバイス)を持つユーザーから、「データを集めて、可視化しても、表面的な分析しか得られない」「本格的なデータ解析には専用のDWH(データウェアハウス)が必要になり、その運用に課題がある」という声が上がっていることを紹介した。
これまでソラコムはデータを収集するSORACOM Harvestや可視化を可能にするSORACOM Lagoonなどのサービスを提供し、リアルタイムなデータの可視化やアラートのニーズに応えてきたが、大量のデータ、複雑な解析には向いていないという弱点があった。もちろん、専用のDWHやBIを利用する方法もあるが、構築や運用にスキルが必要になるほか、データ発生から利用までタイムラグが生じるという課題があった。DWHは大量のデータを整理整頓することではじめて性能を発揮できるため、逐次保存するだけでは複雑・大規模な分析には向かない。「ここらへんの課題を解消するには、工夫と努力が必要だった」と川上氏は語る。
今回テクノロジープレビューとしてリリースされた「SORACOM Query」は、こうしたデータ分析基盤をソラコムがサービスとして用意する。IoTデバイスはいつものようにSORACOMプラットフォームにデータを送信すれば、ソラコム側がユーザーの定義したスキーマでAWSのAmazon Redshiftにデータを格納してくれる。DWHへのデータ書き込みはソラコム側が適宜バッファリングさせながら同期を行なってくれるため、面倒な設定や運用は必要ない。ユーザーはソラコムのDHWに対して直接SQLクエリを送信してもいいし、TableauやPowerBI、Amazon QuickSightなどのBIツールで分析を行なってもよい。
川上氏は、大気汚染の把握やデバイスの位置トラッキングなど大規模なデータ分析を例にしたデモ動画を披露。見たい情報に対して直接クエリを投げたり、バッチ処理的に定点で状態を把握したり、BIツールを用いたリッチな分析を行なうことも可能。テクノロジープレビュー期間は無料で利用できるという。
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