2023年7月7日、音声解析AI電話「MiiTel」を提供するRevComm(レブコム)は「生成AI時代、企業の競争力を高める音声の可能性〜音声×AIで企業のデータ活用が変わる〜」をテーマでオンライン記者発表会を開催した。
世界から注目されるディープテックAIスタートアップになれた
RevCommは2017年7月7日(スリーセブンの願掛け)に創業したスタートアップ企業。社名はレボリューション×コミュニケーションの造語で、AI×Voice×Cloudでコミュニケーション革命をもたらすことを目指している。現在は、300名弱のメンバーが働いており、インドネシアやアメリカにも展開している。
ユーザー数は2020年は1万ユーザー、2021年は2万ユーザー、2022年は3万ユーザー、2023年は5万ユーザーと右肩上がりに成長している。2021年には東京都の保健所が実施する新型コロナウィルス感染症陽性患者に対する電話業務に導入された。
今年、ベンチャーキャピタルのセコイアが公開した「Forbes AI 50」というカオスマップに、アジア企業で唯一エントリーされており、「世界から注目されている、ディープテックAIスタートアップになれたと思います」とRevComm 代表取締役 會田武史氏は語る。
RevCommは音声解析エンジン「MiiTel」を提供しており、現在は電話を解析する「MiiTel」、ウェブ会議を分析する「MiiTel Meeting」、アルファ版として提供を開始した、対面での会話を解析する「MiiTel RecPod」という3種類の商品を提供している。
「口頭での会話はブラックボックス化しています。たとえば、この発表会に関しても、私の話はここで閉じてしまい、私の温度感はなかなか伝えることができません。営業でも顧客対応でも会議でも、何をどのように話してるかわからないというブラックボックス問題が生じていて、結果として労働集約型の属人的な状況に陥ってしまっています。MiiTelはその会話を解析、可視化して、短期的には売り上げの向上やコスト削減、中長期的に会話データをビッグデータとしてアセット化するお手伝いをしています」(會田氏)
メールやチャット、文書などのテキスト化はすでにビッグデータ化されているが、口頭での会話はデータ化されていなかった。ニュアンスやパーソナリティも含んだ豊富で正確なデータなのに、今までは流されてしまっていたのだ。ここをMiiTelによりAIで活用できる環境を構築できるようにするという。
昨今、大ブレイク中の生成AIだが、マッキンゼーの調査によると、年間最大4.4兆ドル(約616兆円)の経済効果をもたらすという資産を発表した。日本の名目GDPよりも大きいインパクトが生まれたことになり、これからは生成AIを活用しないと、時代から取り残されてしまうという。
AIを作るため、活かすためには、データが必要となる。しかし、現在どの企業もデータの音声部分がアセット化されていないそう。ここをRevCommの商品群が集約し、音声書きAIを利用して、企業に適したインサイトを提供する。
「MiiTelもAzure OpenAI Serviceを利用し、ChatGPTと連携していますが、自然言語理解エンジンはGoogleのBardなどいろいろ出てきています。正直、エンジンはなんでもいいのです。しかし、企業が持っている固有のデータは重要です。データがあれば、どんなエンジンでも活かすことができます」(會田氏)
今後の成長戦略としては3つの観点で考えているそう。機能としては、自動スクリプトやAIコーチング、さらには自動アポを考えているという。事業領域としては、現在、営業や顧客対応に活用されているが、今後は会議を可視化し、その先には経営判断もAIによるレコメンドをしていこうと考えている。さらに、SaaSではなく、プラットフォーム化してPaaSとなり、製品群を拡張することで、2027年にはユーザー数10倍を目指すという。
MiiTel Analyticsであらゆるコミュニケーションを分析する
続けて、直近でのプロダクト進化と将来像についてチーフプロダクトオフィサー(CPO)重城聡美氏が紹介してくれた。
「RevCommの商品群は、ボイスコミュニケーションをMiiTel Analyticsに集約させています。俯瞰的に顧客の関心やマーケット動向を抽出したり、データの特性変化を定量的に可視化したり、ネクストアクションを示唆出しすることで、音声の一次情報を単なる録音だけに終わらせず、ナレッジ化し、気づき創出してアセット化します。データを通じて、企業における戦略的な意思決定、管理者の指導工数の削減、ユーザーの成長支援が行えます」(重城氏)
直近の1年間だけでも、MiiTelは大きく進化している。MiiTelは分析に強いというウリから伴走にシフトし、コールセンターの稼働状況を可視化したり、リアルタイム音声認識など、機能を拡充した。対応履歴UIをリニューアル予定で、ChatGPTによる通話の自動要約機能を実装する予定だという。
MiiTel Meetingsはリリース当初はZoomのみの対応だったが、今ではMeetやTeamsなどのビデオ会議ツールに対応し、ダッシュボードで全体の傾向把握が可能になった。管理者は個別の会議を一つ一つ再生して見る時間はない。そこで、MiiTelにでは全体を俯瞰し、ユーザー別の特性やトピックの出現割合、離されたワードの傾向などを数値化し、一目で確認できるようにした。
また、ChatGPTで自動的に議事録を作成でき、ログ残し作業からユーザーを解放した。作成した議事録はSFAやCRM、チャットツールなどに連携でき、業務効率化やトークの質を向上するというメリットもあるという。アルファ版ではあるが、対面での会議のデータを取り込む「MiiTel RecPod」も提供し始めた。プラットフォーム化という切り口では、Webhookによる他社システムとの連携を強化している。
コミュニケーションの分析・研究を行う専門部隊RevComm Researchを設置
最後に登壇したのは、RevComm執行役員 リサーチディレクターの橋本泰一氏。「現在、話題になっている生成AIブームは、昨年、公開された2つのAI技術がきっかけになっています。一つ目が、2022年初頭に発表されたOpenAIの『DALL·E』にはじまり『Midjourney』や『Stable Diffusion』などの画像生成AIです。指示したテキストに即した画像をAIが生成するというものです。もう一つが、話題になっているChatGPTを始めとするテキスト生成AI。入力されたテキストに対して、それに続く文章をAIが作文をしてくれる技術です」と語るのは
とは言え、生成AIの技術革新は昨年突然起きたわけではない、という。ここ4、5年の試行錯誤と研究成果の積み上げによって実現したのだ。2019年にはChatGPTと同レベルの大規模言語モデルはあったが、当時は十分な性能を持っていなかったため、ブームにならなかった。しかし、今後の可能性には多くの企業が気づき、様々な投資が行なわれたという。
「そんな中、我々RevCommは、生成AIを活用した新たなコミュニケーションを発明するために、2023年1月、専門の研究開発組織『RevComm Research』を発足をしました。RevCommの基本理念である人が人を想う社会を創るために、音声認識や音声合成、自然言語、社会理解、そして生成AIを活用した新しいコミュニケーションについて研究開発しています」(橋本氏)
RevComm Researchでは自社での研究開発だけでなく、筑波大学や京都大学、九州工業大学と産学連携し、共同研究を行っている。2022年は、国内外で計8件の研究発表や学術論文を公開しているという。
RevCommでは、4つの観点で生成AIを活用している。1つ目が、通話や会議などの対人コミュニケーションを簡潔にまとめて文書化する、議事録を作成する業務。2つ目は、効果的に情報を伝達する資料や原稿の作成。3つ目は、統計情報などの定量的な情報、もしくはコメントやレビューなどの定性的な情報を分析し、評価する業務。4つ目は、発言の内容や話し方を分析し、改善するためのコーチングをする業務となる。
「コミュニケーションを支援し、改善するAIの開発を続け、さらに経営判断を支援するようなAIに発展させようと考えています。現在の生成AIはテキストや画像、音声など、単独の入力による出力が前提となっていますが、我々人間は聞く、読む、見るの3種類の情報を同時並行で活用し、判断をしています。AIも同じように判断できるような存在へと拡張していくように、我々は研究を進めていこうと思っています」(橋本氏)
ChatGPTは突然、去年登場したと考えられがちだが、RevCommが創業した2017年には、「Attention Is All You Need」という論文が発表されていた。この時点で、會田氏は向こう数年で生成AIが大きな波になるというのがわかったため、起業してMiiTelを提供しているのだという。
「AIによって人間がいらなくなるディストピアを実現したいわけではありません。生産性が高いだけ、ただ合理的なだけの世の中ではなく、最新テクノロジーで生産性を向上し、精神的・ 経済的・時間的な余裕が生まれ、人が人を想う社会を作る、それがRevCommという社名に込めた想いです。そこに向けて、今、300名弱の仲間が頑張っています」と會田氏は締めた。