本記事はソラコムが提供する「SORACOM公式ブログ」に掲載された「スタートアップで始める新規ビジネス 〜ソラカメ1周年 ソラカメ誕生秘話〜 」を再編集したものです。
今月はSoracom Cloud Camera Services「ソラカメ」がリリースされてちょうど1年になります。ソラカメ1周年企画としてテクニカルディレクターの五十嵐(ニックネーム:ash)とセールス/事業開発リードの高見(ニックネーム:yuu)で誕生からこれまでを振り返ってみたいと思います。
yuu:ソラカメ発足の経緯について教えてください。
ash:きっかけは、弊社では当時から「S+ Camera」というエッジAIカメラを扱っていたのですが、S+Cameraをお使いのお客様からは「エッジでの処理済データだけではなくて、映像もクラウドにアップロードしたい」という要望を多数いただいていました。S+Cameraでも映像をアップロードすることはできますが、一方でクラウドに単純に映像をアップロードすることに特化したカメラがあっても良いのではないかということでチームでこちらの記事(日経クロステック「IoT監視カメラATOM Camの製造ハック、裏技ODMで格安高性能実現」)を記事を見つけて、ATOM Cam2を購入したのが最初だと記憶しています。
yuu:ATOM Cam2を初めて触った時の感想はどうでしたか?
ash:私もカメラを扱っていたので、ATOM Cam 2の価格性能比のすごさはすぐに理解しました。特にIP67の防塵・防水性能、夜間撮影能力を体感し、このまま監視カメラとして使えるのではと思えるくらいでした。
yuu:ATOM Tech社にはソラコムからコンタクトしたということでしょうか。
ash:はい。最初は今後セルラーモデルを出す予定がある場合はSORACOMに対応いただきたいという相談を持ち掛けたところ、実はATOM Tech社がBtoBからBtoCに領域を拡大するためにパートナーを探しているということが分かり、ソラコムとしてもう少し踏み込んだ関係性を構築できないかという会社の主要メンバーを巻き込んだ大きな議論へと発展していきました。
yuu:私は発足から半年後くらい立ってからプロジェクトに参加したのですが、ソラコムといえばIoTの回線が主力事業だったので、Wi-Fiを通信手段としているATOM Camを扱うことを初めて聞いた時には驚きがありました。本プロジェクトを進めるにあたってはどの様な議論があったのでしょうか。
ash:当時はIoTプラットフォームの契約回線数400万回線を突破する状況も見えてきて、順調にサービスが成長していることもあり、今提供しているサービスに集中するべきではないかという意見や、SORACOMのセルラー回線を想定して作られているサービスと、Wi-Fiで接続するATOM Camとがすぐにシナジーを生み出すのは相当の努力が必要ではないかという意見がありました。そのほかにも色々な議論がありましたが、私はプロジェクトを進める決め手となったのは次の2つのことだと思っています。
- そこに市場はあるのか?
- 例えば10%のシェアを獲得しただけでも、ビジネスとして成り立つほど大きな市場があるの?これはソラコムの成功体験に基づいています。
- 新規ビジネスを行う体力があるのか?
- 順調にビジネスが伸びている今だからこそ、一見するとSORACOMのサービスとすぐにシナジーを生むのが難しいATOM Camのような製品をサポートできるのではないか。
yuu:ATOM Techの第一印象はいかがでしたか。
ash:ATOM Techの青山社長は、ATOM Camの性能からも明らかですが、エンジニアリングのバックグランドが豊富な方なので技術の目利きが素晴らしいです。ただ一番強く感じたのは、エネルギッシュな人だなという印象です。エンジニア出身で、広く展開するためにクラウドファンディングを活用して結果を出したことや、初期ロットに不具合の可能性があったので、一律に改良後の2台目を送ったエピソードなどもソラコムの考え方に近しい部分があるなという印象でした。何をやるかも大事ですが、誰とやるかはもっと大切なので、私はATOM Techのエンジニア陣と密にコミュニケーションさせて頂きました。一方で、ソラコム 代表取締役社長の玉川(以下ken)は青山社長と2泊3日で白馬岳に登って、一緒に過酷な環境を過ごしながら、さらに深いコミュニケーションをして、信頼関係を構築しました。
(後に青山さんに聞いた話ですが)、登山中のkenの接し方をみて青山さんもkenをパートナーとして信頼してくださったとのことでした。
yuu:なるほど。それでこのプロジェクトは「hakuba」と呼ばれていたんですね。
白馬岳を目指している途中で撮った一枚
yuu:リリースまではどの様な感じだったのでしょうか。
ash:様々な議論を経て、2021年11月から正式にプロジェクトが開始されることになりました。一番苦労したのはMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)をどう設定するかでした。当然セールスは早く出したいといった意見がある一方で、エンジニアはアカウントの連携だけではなくAPIの公開も合わせてやりたいという気持ちがありました。最終的には弊社の年次カンファレンスであるSORACOM Discoveryが7月に開催されるということを考えて2022年5月18日にプレス発表を行うことに合意しました。それからはソラコムの行動規範となるLeadership Statementの1つ「Respectfully Disagree, and Commit once agreed」に則って、一丸となってリリースに向けたサービス作りを進めていきました。
yuu:私がプロジェクトに参加した2022年2月はまだATOM Techとの仕様を決めている状態でしたが、実際の開発の雰囲気はどんな感じだったのでしょうか。
ash:新型コロナが落ち着いてきて記者発表を会場で実施することになり、絶対に遅延できないという状況でした。かなり緊張しましたね。ただ、kenが創業当時に語っていた「W杯で優勝するチームはサッカーが上手いのは当たり前。チームプレーヤーか? チームのスタイルに合うか? 状況に応じてポジションを変えていく」という言葉通りの、社内の最高のメンバーを揃えてもらったことと、絶対的な期限があることで、開始時にリストアップした大小140個のチケットの取捨選択を思い切って行うことができました。最終的には選択した120個のチケットを完了させて、スケジュール通り無事にリリースすることができました。リリース当時のkenの熱い思いが詰まったサービス提供開始のメッセージはこちらのブログからご覧いただけます。
2022年5月18日ソラコム-ATOM Tech共同プレスリリース会場にて
サービス1st リリースからこれまでの歩み
2022年5月18日: Soracom Cloud Camera Services 「ソラカメ」サービス提供開始(過去記事)
最初のリリースでは、ソラカメ対応カメラはATOM Cam 2の1機種、対応デバイスはスマホ(iOS/Android)で提供を開始しました。
初期費用が2980円~(2022年5月時点)と非常に安価であり、工事不要で設置できる手軽さに加えて、高いセキュリティや、年払い、請求書払いなどの法人ユーザー様でも利用できるサービスであるという点から多くのお客様から引き合いを頂きました。
当時は「どんなお客様が喜んでくれるのだろう」とソラコムメンバーも手探りの状況だったと記憶していますが、この大きな反響を受けて、サービスを無事ローンチできてほっとしたことを覚えています。
注釈)上記スライド画像は2022年5月18日当時の内容です。その後、価格改定しております。
2022年8月1日:ATOM Cam Swingにも対応開始!!(過去記事)
上述のとおり、最初のリリース時点ではソラカメ対応カメラは「ATOM Cam 2」1機種のみでした。
その後お客様から「一度設置したら、画角が固定されてしまい再度画角を変えるために現場に行くのは大変」、「1つのカメラで居室内や倉庫内を見回して」というご意見を数多くいただくことがありました。
そこで、スマホからカメラレンズを水平方向に360度、垂直方向に180度回転に操作できるカメラ、「ATOM Cam Swing」へ対応し、2022年8月1日から出荷を開始しました。
現在も展示会で、ATOM Cam Swingの操作デモをすると、多くのお客様に「これ、いいね。お手頃価格なのにすごいね」と、一番喜んでいただけます。1台税込4980円(送料別途)ですので、ぜひみなさんも遠隔から操作して「現場を見える化」できることを体感してみてください!(ATOM Cam Swing+クラウド常時録画ライセンスはこちら)
「現場に行かなくても状況が分かるって、シンプルだけど便利」と思っていただけるはずです。
2022年8月8日:クラウド常時録画ライセンス単独販売開始!!(過去記事)
ソラカメ対応カメラであるATOM Camシリーズは、累計15万台以上販売実績があり、既に多くのユーザーさんがいらっしゃいます。
5月のリリース以降、ありがたいことに「既に持っているATOM Camにソラカメのクラウド常時録画ライセンスをつけて使えないの?」というお声を本当に多くの皆様からいただきました。
そこで、ATOM Camシリーズのソラカメ対応が完了したこのタイミングでクラウド常時録画ライセンスのみをソラコムから購入し、既にお持ちのATOM Camにライセンス割当をして「ソラカメ」を利用できるようにしました。多くのSNSで、「待ってました!」という投稿を目にし、ソラカメ担当メンバー一同で喜んでおりました。
なお「クラウド常時録画ライセンス」のご契約で下図のようなメリットがあります。
もし、「まだクラウド常時録画ライセンスは試してない」方がいらっしゃいましたら、1ヶ月単位でのご利用が可能ですので、ぜひ試してみてください!!
2022年10月6日:ソラカメAPI・WebコンソールPublic Release(過去記事)
これまでのリリースで一番反響が大きかったのは、このソラカメAPIとWebコンソールの一般公開でした。
初期費用、月額費用ともに安価でありながら、APIをクラウド常時録画ライセンスに標準装備して提供することで、さまざまなユーザーやパートナーの皆さまから「待ってました!」、「すぐ買って使ってみるよ!」とポジティブなフィードバックをたくさんいただきました。
APIについては、やはり画像解析をしたいけれど、カメラからクラウドに上げるところまでの「カメラや通信の準備」をもっと手軽に、安価に実現したいというニーズが非常に強くあり、そこにお応えすることができたのではないかと考えています。
また、Webコンソールについても初期のリリース当初から「Webブラウザ対応はしないのか?」というお声をいただいておりました。会社の情報セキュリティポリシーの問題でスマホ利用が厳しく制限されている方や、手袋をしていてスマホ端末は使わない現場の方、PCで確認する用途で利用したい管理者の方などから、強くご要望をいただいており、このタイミングでWebコンソールをリリースすることができました。
ソラカメが「AI活用にも使えるカメラ」へと変貌を遂げた瞬間でもありました。APIやWebコンソールの利用方法についてはこちらをご参照ください。
2022年11月15日:ソラカメ専用セルラーパック提供開始!!(過去記事)
ソラカメはクラウド常時録画を基本とするサービスであり、高画質(フルHD画質)での撮影が可能なため、クラウドへのアップロード通信の月間データ容量は大容量です。
そのため、「Wi-Fi環境下でのご利用」を前提としたサービスとしてご提供していました。
しかし、「現場にそもそもWi-Fiがない」、「Wi-Fiはあるけど、情報セキュリティポリシーの問題で、クラウド接続するカメラの通信を相乗りさせられない」といったお客さまの声を伺っていました。
そんなお客さまの課題を解決すべく考案したのが、「データ容量無制限のSIMとルーターのセットを提供する」というセルラーパックのアイデアでした。
さらに、「これさえ買えば、すぐクラウドカメラが使い始められる」という体験をしていただくべく、ソラカメ専用セルラーパック購入特典として、「ATOM Cam 2」 1台を無料でお付けすることにしました。これで、電源さえあれば、すぐにソラカメを使い始めていただくことが可能になりました。
工場などの製造現場、小規模店舗を多店舗運営されている方、点在する不動産物件を管理されている方などを中心に幅広いお客さまにご利用いただいております。セルラーパックの詳細についてはこちらを参照してください。
2022年12月9日:ソラカメAPIにイベント一覧APIが追加!(過去記事)
ソラカメでは常時録画をしているため、契約ライセンス種別に応じた保存期間を過ぎるまでは24時間常時録画データがクラウドに保存されています。
しかし、「人やモノの動きを検知した時の映像や静止画データをピンポイントで取り出して、自社システムと連携させたい、AIによる画像解析をしたい」といったお声が根強くありました。
そこで、新たに提供開始したのが、「カメラで検出されたイベント(音や動体検出など)」を取得できるイベント一覧APIです。(詳細はこちら)
これにより、人を検出した時のイベント一覧情報を取得し、その時間ごとの映像や静止画を切り出して、AI画像解析をしたり、欲しい瞬間の映像や静止画データだけをお客さまのシステムに取り込んで、現状業務でご利用のシステム画面に表示したりすることができるようになりました。
また、APIだけでなくエンジニアでないユーザーもお使いいただけるように、Webコンソールにイベントを検知した時点の静止画をサムネイル一覧表示し、各時点の映像を確認できる画面も併せてリリースしました。「見たい瞬間だけパッと見たい」そんなニーズにお答えする機能です。
2023年2月22日:動画のエクスポート可能時間の変更機能と、カメラ管理画面アップデートの提供開始!(過去記事)
ソラカメAPIをリリースして以降、ありがたいことに、AIによる画像解析をされる方や自社システムにソラカメで撮影した映像や静止画を取り込んで活用される方が増えていきました。
積極的にご活用いただいた結果、ソラカメAPIのカメラ1台につき月間72時間までのAPIエクスポート(静止画は1枚1秒換算)という利用上限に達してしまうケースが出てくるようになり、「上限をもっと上げられるようにしてほしい」というご意見を伺うことが増えるようになりました。
そこで、月間72時間を超えてご利用されたいユーザーに向けて、任意の時間にAPI利用の上限値を変更できる機能をリリースしました。72時間を超過した場合、1時間につき税込66円でご利用いただけます。上限値の変更はユーザーご自身で設定でき、「毎月の予算以上に不用意に使ってしまった」といったことが起きないように設計されていますので、ぜひ安心してソラカメAPIを存分に使っていただければと思います。
さらに、このタイミングでWebコンソールの画面もアップデートしました。
ソラカメをご利用のユーザーの皆さまにインタビューさせていただいたところ、「カメラの台数が増えてきたのでデバイスを検索できるようにしたい」「定期的に現場の状況の推移を確認したい」、「同時刻における複数現場の様子を比較しながら確認したい」といったニーズが多くございました。
そこで、Webコンソールに下記3つの機能を追加しました。(詳細はこちら)
- デバイス名称検索
- 一定間隔で画像を表示する
- 複数デバイスの画像を表示する
ソラカメを現場オペレーション改善のためにご活用いただいているユーザーからのご意見をもとに、リリースした機能です。現場の運用ニーズから生まれた機能ですので、同様にカメラによる現場のオペレーション改善を検討されている皆さまにもきっと喜んで頂けるはずです!
ぜひ、まずは1台、1ヶ月からソラカメをお試しください!!
ソラカメはまだまだ進化し続けます!!
ソラコムのプロダクト開発は、2週間ごとに何かしらのプロダクト改善や新しい機能やサービスをリリースするスタイルで、これを「Pace Of Innovation」とソラコムでは呼んでいます。
ソラコムの新事業であるSoracom Cloud Camera Services「ソラカメ」も同様の開発スタイルを継続しているので、今後も手を緩めることなくユーザーの皆さまに喜んでいただけたり、驚いていただける機能やサービスをどんどんリリースしていきます。「ソラカメ」の進化にこれからもご期待ください!
ソラコムでは、ソラカメをはじめとしてIoT導入に関することについては平日・毎日無料でご相談をお受けする「IoT導入相談会」を開催しています。
数多くのプロジェクトを支援しているプロフェッショナルと、どこからでも直接お話いただけますので、どうぞお気軽にご予約ください。(https://soracom.jp/iot-meeting/)
最後に告知です。
7月5日〜7月6日にIoTカンファレンス「SORACOM Discovery 2023」を開催します。今回登場したソラカメだけではなく、IoTの今を知ることのできる2日間のカンファレンスです。ソラカメも実機やデモの展示、ワークショップを予定しておりますので、ぜひご来場ください。
― ソラコム五十嵐(ash)、高見(yuu)
投稿 スタートアップで始める新規ビジネス 〜ソラカメ1周年 ソラカメ誕生秘話〜 は SORACOM公式ブログ に最初に表示されました。
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