丸の内LOVE Walker総編集長・玉置泰紀の丸の内MEMO 第2回
丸の内LOVE Walker総編集長・玉置泰紀の丸の内MEMO 第2回
4年ぶりに丸の内に復活する世界最大級のクラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」の楽しさをおさらいするぞ
4年ぶりの開催となる世界最大規模の音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2023」(2023年5月4日、5日、6日開催)が近づいてきた! 東京に「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」として上陸したのは2005年。クラシックのイベントとしては驚異的な盛り上がりを見せており、2007年には来場者数が100万人を超え、2019年までに延べ866万人の来場者数を記録し、世界最大級の音楽祭に成長している。2018年には、音楽祭のネーミングを「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」から「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」とし、ロゴマーク制作もクリエイティブ・ディレクターの佐藤可士和を起用して新しくした。
しかし、ここまで日本に定着し愛されてきた音楽祭も、フランス本国同様、コロナ禍のため、2020年〜2022年は中止を余儀なくされ、今年は4年ぶりの開催となる。
筆者は2005年の初上陸からメディアで関わり、一度、公式パンフレットを制作した事もあって、思い入れが深い。創設者でアーティスティック・ディレクターのルネ・マルタン氏の大胆でオープンな運営方針に共感するところが大きく、地域全体を巻き込むエリア・マネジメントとも言える祝祭空間は大丸有(大手町・丸の内・有楽町)の地域文化と相性がよく、漸くの復活に丸の内LOVEWalkerとしても喜びがひとしおだ。
「一流の演奏を気軽に楽しんでいただき、明日のクラシック音楽を支える新しい聴衆を開拓したい」という気楽で低価格のクラシック・フェス
ラ・フォル・ジュルネ(LFJ)は、1995年、フランス西部の港町ナントで誕生したクラシック音楽祭。「ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)」のネーミングそのまま、ヨーロッパの数ある音楽祭の中で最もエキサイティングな展開を見せている。創設者のルネ・マルタン氏は、「一流の演奏を気軽に楽しんでいただき、明日のクラシック音楽を支える新しい聴衆を開拓したい」という考えのもと、毎年テーマとなる作曲家やジャンルを設定し、6〜30EURO(700円〜3000円)という驚きの低価格の入場料で、45分余りの気楽なプログラムを5日間で300公演展開するというかつてない音楽イベントを実施してきた。コロナ禍のため、2020年1月のフル開催以降は、2021年、2022年と縮小開催してきたが、2023年1月は以前同様に開催された。
ラ・フォル・ジュルネの名称は、ボーマルシェの戯曲「ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)、あるいはフィガロの結婚」に由来する。1784年に発表され、モーツァルトがオペラの元にしたこの戯曲は、当時の価値観を覆す革命的なもので、フランス革命の導火線になったともいわれる。
ルネ・マルタン氏は、世界各地で年間約1500もの公演を手掛ける音楽プロデューサー。
青少年期にジャズとロックに没頭していたが、10代でクラシックの素晴らしさに目覚めた、という。クラシック音楽祭の企画を手掛け始めた頃、ロックバンドU2のコンサートで数万人もの若者が熱狂している姿を見て、クラシック音楽でも若者たちを熱狂させられるはずと確信し、誰もが上質な音楽を気軽に楽しめる音楽祭を作りたいという思いから1995年にナントで「ラ・フォル・ジュルネ」を開始したのが始まりだった。
4年ぶりの開催となる2023年のテーマは、やっぱり『Beethoven - ベートーヴェン』で復活
ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2023のテーマは「Beethoven - ベートーヴェン」。2023年5月4日(木・祝)・5日(金・祝)・6日(土)の3日間開催で、東京国際フォーラムをメイン会場に、大手町・丸の内・有楽町、東京駅、京橋、銀座、日本橋、日比谷で展開する。今回の公演数は50公演(無料公演も含む)で、演奏時間は45分程度でチケットの料金も低価格で用意されており、エリア内の各施設や屋外も含めて、多彩な無料コンサートも開催される(詳細は4月上旬に発表予定)。中止になった2020年のラ・フォル・ジュルネのテーマは生誕250周年のベートーヴェンだったが、4年ぶりに満を持して復活する。
ラ・フォル・ジュルネ TOKYOの6つの魅力
・毎年異なる新鮮なテーマ展開
・1公演約45分〜。朝から晩までいくつものプログラムを気軽にハシゴできる。
・国内外の一流の演奏を低料金で楽しめる。
・多彩な無料イベントを開催
・赤ちゃんからクラシック通までピクニック気分で楽しめる
・街全体が音楽であふれ「お祭り」ムード一色に
今回のテーマについて、ルネ・マルタン氏は以下のように説明している。
「4年ぶりの開催となる2023年のテーマは、やっぱり『Beethoven - ベートーヴェン』!
ベートーヴェンという大作曲家の魅力をぎゅっと詰め込んだ、特別な3日間をご用意します。交響曲やピアノ協奏曲、ピアノ三重奏曲、ピアノソナタなど傑作の数々をはじめ、ベートーヴェンへのオマージュ作品など、ラ・フォル・ジュルネならではの独創的なプログラムの数々もお届けする予定です。凝縮された”ベートーヴェン三昧”の3日間をお楽しみください。
ベートーヴェンの作品はヒューマニズムにあふれ、人類愛と思いやりを今もなお人々の心に届けるという意味においても、音楽史上唯一無二の存在です。ベートーヴェン自身、彼の音楽の目指すところを、このように記していたのではないでしょうか。
『心より出で、願わくば再び心に至らんことを』 -『ミサ・ソレムニス』楽譜に添えられた言葉。」
ベートーヴェンづくしのプログラムは驚きの工夫がいっぱいで、公式アンバサダーは、ふかわ りょう氏
今回のプログラムでのベートーヴェンは、ピアノ協奏曲やピアノ連弾曲、弦楽三重奏曲全曲など以下の曲。
・交響曲(3番「英雄」、5番「運命」、6番「田園」、7番、9番「合唱付き」)
・協奏曲(ピアノ協奏曲第1〜5番、 ヴァイオリン協奏曲、三重協奏曲)
・ピアノ・ソナタ(8番「悲愴」、10番、13番、14番 「月光」、15番 「田園」、17番 「テンペスト」、 21番「ワルトシュタイン」、23番「熱情」 、29番「ハンマークラヴィーア」、30番、31番、32番)
・ピアノ連弾作品(全曲)
・ヴァイオリン・ソナタ(5番「春」、6番、7番、8番、9番「クロイツェル」)
・チェロ・ソナタ、ピアノ三重奏曲、弦楽四重奏曲、七重奏曲など数々の室内楽曲
・弦楽三重奏曲(全曲)
・数々の歌曲
また、同時代から、ベートーヴェンも経済的な理由で認めていた数多くの編曲を取り上げているのも新しい試み。今回は以下のプログラムで、編曲に加えてユニークなオマージュ曲まで集めて楽しめる。
・ピアノ協奏曲 第4番ト長調 op.58(ベートーヴェン自身によるピアノと弦楽五重奏版)
・ベートーヴェン(ツェルニー編):交響曲第6番 へ長調 op.68「田園」(4手ピアノ版)
・ベートーヴェン(シュルホフ編):ロンド・ア・カプリッチョ「なくした小銭への怒り」op.129(管弦楽版)
・ベートーヴェン(福間洸太朗編):3台ピアノ 12手のための 「トルコ行進曲」
・ベートーヴェン(カーナウ編):トルコ行進曲
・デ・メイ:エクストリーム・ベートーヴェン 〜ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの主題による変容〜
・三浦秀秋:ベートーヴェン・エクスプレス[新編曲・初演]
・宮川彬良:シンフォニック・マンボNo.5
・クライスラー:ベートーヴェンの主題によるロンディーノ
・ビショフ:ベートーヴェンとシューベルトへのオマージュ〜ピアノのためのディアベリ変奏曲
・キルヒナー=エッセール:2台ピアノ・8手のための《ベートーヴェン交響曲ダイジェスト》
・アダムズ/アントンセン:2台ピアノのための《ロール・オーヴァー・ベートーヴェン》
さらには、LFJスペシャル・プロジェクトとして、以下の特別なプログラムも楽しめる。
・6人ピアニストの豪華共演《現代に生きるベートーヴェン・ア・ラ・カルト》
・井上道義のトーク付き「運命」公演《ミチヨシはかくベートーヴェンの運命の扉を叩く》
・渋さ知らズオーケストラ(脱ジャンルパフォーマンス集団)や、オルケスタ・ナッジ!ナッジ!(打楽器アンサンブル)によるベートーヴェンへのオマージュ公演
・ヨアキム・ホースレイ・クインテット(クラシック&ラテン音楽のフュージョン・ピアノ)による《ハバナのベートーヴェン》
・パスカル・アモワイエル(ピアノ)・加藤昌則(ピアノ)による《ベートーヴェン風即興サロン》
・パスカル・アモワイエル(脚本・ピアノ・芝居)による《Looking for Beethoven(ベートーヴェンを探して)》
・エリプソス四重奏団(サクソフォーン四重奏)によるサックスアンサンブル版ベートーヴェン名曲選
東京国際フォーラムの会場名には、ベートーヴェンの母親や初恋の人、“不滅の恋人”論争の人物など、彼の人生に欠かせない女性の名前が使われる。また、今回の公式アンバサダーは、ふかわ りょう氏が務める。
ラ・フォル・ジュルネの基本方針
・クラシック音楽の裾野を広げ、その素晴らしさを老若男女あらゆる人々で分かち合い民主化する。
・世界各地で活躍する音楽家たちとの交流を通じ、国、地域を越えて、諸外国と日本の文化交流を促進する。
・コミュニティ、東京、日本の魅力を高め、その魅力を世界に向けて発信するとともにアジアを始めとして各国からの観光客を東京に誘致する。
・子どもたちに、クラシック音楽の素晴らしさと感動を伝え、未来を担う彼らの健全な育成を図る。
・東京国際フォーラムと大手町・丸の内・有楽町地区の企業、人びとが連携し、音楽祭としての祝祭感を高め、エリアとして魅力あるまちづくりに貢献する。
・ラ・フォル・ジュルネのコンセプトを認識し、常に質の高い音楽を提供する。
■開催概要
テーマタイトル
「Beethoven - ベートーヴェン」
日程
2023年5月4日(木・祝)・5日(金・祝)・6日(土)
会場
東京国際フォーラム(東京都千代田区丸の内3丁目5−1)、大手町・丸の内・有楽町、東京駅、京橋、銀座、日本橋、日比谷
■公式サイト
この連載の記事
- 第10回
地方活性
夏の皇居三の丸尚蔵館は、美しい「いきもの」から可愛い「いきもの」まで、若冲の国宝《動植綵絵》はもちろん、書、絵、金属、陶磁、ガラス、刺繍などあらゆる表現の「いきもの」で埋め尽くされるぞ - 第9回
地方活性
丸の内仲通りに面した現代アートのショーケース「CADAN有楽町」が誕生。若手から老舗まで50軒のギャラリーが入れ替わりで、旬のアートを無料で気楽に楽しめる - 第8回
地方活性
東京国際フォーラム・ガラス棟の会議室で帝国ホテルの最高の料理が楽しめる「秋冬パーティープラン」が10月1日からスタートするぞ - 第7回
地方活性
注目の画家、甲斐荘楠音の26年ぶりの回顧展が、東京駅構内の東京ステーションギャラリーで、映画界での活動など全貌を集めて開催 - 第6回
地方活性
4年ぶりのクラシックの祭典「ラ・フォル・ジュルネ」(東京・丸の内など)がついに歓喜の千秋楽を迎えたぞ - 第5回
地方活性
本日5月6日は最終日! クラシックの祭典「ラ・フォル・ジュルネ」2日目は、街を巡って無料コンサート会場チェックに行ってきたぞ! - 第4回
地方活性
まさしく熱狂の日! クラシックの祭典「ラ・フォル・ジュルネ」初日を楽しんできたぞ! - 第3回
地方活性
ついについにやってきた! 4年ぶりのクラシックの祭典「ラ・フォル・ジュルネ」 - 第1回
地方活性
東京駅の中にある美術館で近代大阪の日本画を愛でる時間空間旅行へ行こう